甲状腺の自己免疫疾患として、国試で非常に狙われやすい
バセドウ病と橋本病
名前は知っていても、違いをしっかり説明できなければ
国家試験問題に対応できませんので、
今回の記事で詳しく解説していきたいと思います!
はじめに
本記事は医療系国家試験で問われる、バセドウ病および橋本病の知識を解説する記事であり実際の検査・治療において責任を負うものではありませんのでご了承ください
国家試験の内容としては、「臨床検査技師国家試験」向けの記事となります
甲状腺ホルモンについて
バセドウ病は甲状腺機能亢進症
橋本病は慢性甲状腺炎(進行すると甲状腺機能低下)
ここでいう甲状腺の機能とは
甲状腺ホルモンの役割をいいます
甲状腺ホルモンの役割は代謝の亢進です
すなわち、
・血糖値を上げ、エネルギー消費を活発にする
・血圧や心拍数はあがり、汗をかきやすい
このような作用があります
T3とT4
甲状腺ホルモンには2種類があり
T3:トリヨードサイロニン
T4:サイロキシン(チロキシン)
この2つがあり、構造中にヨウ素を含むという特徴があります
T3はヨウ素3分子、T4は4分子です、わかりやすいですね
存在割合としては、T4が多いですが、活性はT3が強いです
また血液中ではT3, T4はサイログロブリン
というタンパク質と結合して運搬されています
必要に応じてサイログロブリンから分離され、
(分離されたT3, T4は遊離型といいます)
遊離型となって甲状腺ホルモンの作用を発揮します
甲状腺のフィードバック機構
ホルモンで重要なのはフィードバック機構です
・出過ぎた時に抑える(ネガティブフィードバック)
・足りない時に出す(ポジティブフィードバック)
ホルモンは基本的にこの2つのフィードバック機構で調節されています
甲状腺ホルモンは
視床下部:甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
↓
下垂体前葉:甲状腺刺激ホルモン(TSH)
↓
甲状腺:T3, T4
このような3段階構造になっています
T3 , T4が出すぎている場合
上の組織に、もういらないです
という報告をします
このしくみがネガティブフィードバックです
その結果、
ネガティブフィードバックによって
甲状腺刺激ホルモン(TSH)低下
TSH放出ホルモンも低下します
バセドウ病と橋本病の病態
バセドウ病と橋本病は自己免疫性疾患ですあり
自己抗体をもっていることが多いです
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
バセドウ病では抗TSHレセプター抗体が出現します
TSHとは、下垂体前葉から分泌される甲状腺ホルモン刺激ホルモンのことです
このTSHが甲状腺のTSHレセプターに結合して、
甲状腺ホルモン分泌のスイッチを入れることができます
ところが抗TSHレセプター抗体が結合すると
スイッチが常にONの状態になり、甲状腺ホルモンが出っぱなしになる
これがバセドウ病の病態となります
そのため、血中の甲状腺ホルモンは増加します
そうなると、ネガティブフィードバックによって
TSH(とその上流)は減少します
しかし甲状腺ホルモンは出続けるので症状として
- 血圧・心拍数増加・動悸
- 血糖値上昇・発汗
- 眼球突出
などがあります
橋本病(甲状腺機能低下症)
一方で橋本病はというと、自己の炎症細胞
特にリンパ球などが、甲状腺を攻撃して炎症を起こします
ダメージを受けた甲状腺はホルモンを出せなくなってしまい
結果的に甲状腺機能低下症を引き起こします
甲状腺ホルモンが足りないので、ポジティブフィードバックによって
TSH:甲状腺刺激ホルモンの分泌は増加します
(しかし、甲状腺はうまくホルモンを出せなくなっています)
橋本病で検査される自己抗体のひとつに
・抗サイログロブリン抗体があります
サイログロブリンはT3,T4を運搬するタンパク質です
しかし、これは橋本病に特異的ではなく、
バセドウ病でも出現する可能性があることは覚えておきましょう
他には、抗TPO抗体があります
TPOとは甲状腺のペルオキシダーゼのことです。抗甲状腺マイクロゾーム抗体と過去に言われていましたが、現在はその正体がTPOであるとされました。
こちらもバセドウ病でも陽性の可能性があります
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
ちなみに先天性の甲状腺機能低下症をクレチン症といい
新生児マススクリーニングの対象となっています
新生児マススクリーニングとは赤ちゃんから血液を数滴採取し、質量分析によって各種の代謝異常症を検査するものです。
クレチン症でも、甲状腺機能が低下しているため
T3,T4低下、TSH増加 というホルモンの動きになります
以上を踏まえて、過去問をチェックしておきましょう!
MT59-AM42 Basedow 病による甲状腺機能亢進症において低下するのはどれか。
1.T3
2.FT4
3.TSH
4.ALP
5.サイログロブリン
バセドウ病による甲状腺機能亢進の病態は、
抗TSH抗体が甲状腺のTSHレセプターに結合し、T3,T4の過剰な分泌が起こる
でした。
このあと起きることは、
T3,T4の分泌を止めようと、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の分泌を抑制するネガティブフィードバックが起こる
過剰分泌が起こる→上流にネガティブフィードバックが起こる
このことから、答えは3になります
ちなみに、2.FT4とはFree=遊離のT4という意味です
通常のT3,T4はサイログロブリンと結合して運ばれています
MT61-AM14 疾患と血中濃度が上昇するホルモンの組合せで正しいのはどれか。
1.Addison 病 ー 副腎皮質刺激ホルモン
2.Basedow 病 ー 甲状腺刺激ホルモン
3.尿崩症 ー バソプレッシン
4.橋本病 ー 副甲状腺ホルモン
5.副腎性 Cushing 症候群 ー アルドステロン
この問題の選択肢は全て非常に重要な
ホルモン関連の疾患です
各選択肢をきちんと説明できればホルモンの理解はだいぶ進んでいるといえます
1.Addison 病 ー 副腎皮質刺激ホルモン
アジソン病は副腎皮質機能低下症ともいいます
副腎皮質ホルモンが低下しているため、ポジティブフィードバックによって
副腎皮質刺激ホルモンが上昇します
フィードバックの仕組みはどのホルモンも基本的な考え方は同じです
この問題の正解は1になります
2.Basedow 病 ー 甲状腺刺激ホルモン
バセドウ病は甲状腺機能亢進症、T3,T4が高値になる
ネガティブフィードバックによって、甲状腺刺激ホルモンは低下
3.尿崩症 ー バソプレッシン
尿崩症はバゾプレシン(=抗利尿ホルモン)分泌が低下するため多尿を引き起こす
4.橋本病 ー 副甲状腺ホルモン
橋本病は副甲状腺には直接の影響を及ぼしません
5.副腎性 Cushing 症候群 ー アルドステロン
Cushing症候群は、コルチゾールの過剰増加が起こります
アルドステロンの過剰分泌は原発性アルドステロン症などがあります
まとめ
・バセドウ病は甲状腺機能亢進症
・橋本病は慢性甲状腺炎(進行すると甲状腺機能低下)
・甲状腺ホルモンの役割は代謝の亢進
・代謝の過剰亢進によって、動悸・血圧・心拍数・血糖値など増加
・甲状腺ホルモンT3, T4はヨウ素分子を含み、サイログロブリンに運搬される
・バセドウ病では抗TSHレセプター抗体が高頻度
・橋本病では抗サイログロブリン抗体や抗TPO抗体が見られるが、バセドウ病でも見られることには注意
・クレチン症は先天性甲状腺機能低下症をいう
・バセドウ病ではT3,T4上昇、ネガティブフィードバックでTSH低下
・橋本病ではT3,T4低下、ポジティブフィードバックでTSH上昇
甲状腺ホルモンは国試にも出やすいのでしっかり病態を理解しておきましょう!
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