臨床検査技師の臨床血液学の国試対策
血液の凝固と線溶のマーカーについて解説していきます!
凝固と線溶の基礎知識
出血して血が止まるまでには
- 一次止血 – 血小板血栓ができるまで
- 二次止血 – 血小板血栓ができ、血液が凝固し、線溶するまで
の2つの段階があります
別の言い方をすれば
- 一次止血 – 凝固カスケード開始直前まで
- 二次止血 – 凝固カスケード開始後~フィブリンができるまで
と言い換えることもできます
一次止血のキーワードは
- VWF (フォン・ヴィレブランド因子)
- 血小板 α顆粒
- 血小板 濃染顆粒
などがあります(が、今回は省略します)
↓復習したいな~という人は以下の問題がおすすめです
今回は二次止血に絞って解説します
凝固マーカー・線溶マーカー
凝固とは
・血小板血栓・フィブリン塊を形成した状態
すなわち
・凝固カスケードの完了=凝固因子が消費される
と認識しておきましょう
凝固が続いた状態では、血液の流れも悪くなり、血栓などによる血管の詰まり(塞栓)の恐れがあります
そこで血栓を溶かす作業が線溶です
線溶とは
・フィブリンを分解すること
すなわち
・フィブリンの分解産物が増える
ということもできます
凝固・線溶が亢進する疾患
覚えておくべきなのは
DICです
DICを引き起こしやすい病気は、
- 重症感染症(敗血症など)
- 急性白血病 などがあります
・DIC(播種性血管内凝固症候群)とは
出血がないのに全身の血管で凝固反応が起きる病気。結果的に、血小板や凝固因子が勝手に消費されて無くなってしまい出血が起こりやすくなる。さらに、凝固反応を終わらせるために、線溶も亢進する
※ただし、敗血症を原因とする場合、線溶系は抑制される(凝固は促進し、線溶が起こらないので非常に危険な状態である)
以下にDICで見られる凝固・線溶マーカーをまとめます
・凝固亢進の指標(マーカー)
・PT, APTT延長→凝固因子が消費されて足りなくなるため
・フィブリノゲン減少→凝固でフィブリンになり消費されるため
・トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT増加)→凝固が進んでトロンビンが消費されるとアンチトロンビンと結合していくため
・アンチトロンビン減少→凝固しすぎないようにトロンビンを阻害する。上記によりアンチトロンビンが消費される。ちなみにヘパリンの抗凝固作用はアンチトロンビンの活性化である
・可溶性フィブリンモノマー複合体増加→フィブリンのようなものと解釈して良い
・フィブリノペプチド増加→フィブリンができるということなので凝固亢進
・プロトロンビンフラグメント 1+2の増加→プロトロンビンの分解物、すなわちトロンビン産生亢進を表しているため凝固マーカー
・線溶亢進の指標(マーカー)
・FDPおよびDダイマー高値→凝固でできたフィブリンが線溶で分解されるため
FDPとは、フィブリン・フィブリノゲンの分解産物
Dダイマーとは、FDPの一種でフィブリンから(二次線溶)のみできる
・プラスミン-プラスミンインヒビター複合体の増加→線溶が進んでプラスミンが消費されるとプラスミンインヒビターと結合していくから
・プラスミンインヒビター減少→線溶が終わったプラスミンを阻害する。上記により消費されるため
血液の凝固に使われる物質と線溶に使われる物質をしっかり区別できるかどうかがポイントです。
以下に上記で出てきた項目をまとめた概要図を示します。
血液凝固・線溶の流れは、専門用語も多く一見複雑に見えますが
基本的には、リレーでバトンを繋いでいるようなもので
ひとつひとつの反応が順番に起こるというのが基本です
登場人物をしっかり把握し、凝固と線溶の動きを覚えられるようにしましょう!
↓実際の国試問題ではこのようなものもあります
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