【第64回臨床検査技師国家試験】AM59, 60, 61, 62, 63, 64の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

平成30年2月21日(水)

に実施された

第64回臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT64-AM59 肝細胞が産生するのはどれか。

1.エリスロポエチン
2.トロンボポエチン
3.顆粒球コロニー刺激因子
4.インターロイキン-2 (IL-2)
5.マクロファージコロニー刺激因子

 

1.エリスロポエチン赤血球の産生を促すホルモン(造血因子)で、腎臓から分泌されます

エリスロポエチンの不足による貧血を、腎性貧血といいます

 

2.トロンボポエチンは血小板の増殖を促す造血因子で、肝臓の細胞から分泌されます

 

3.顆粒球コロニー刺激因子はG-CSFともいい、造血幹細胞の分化を促進します

造血幹細胞が存在する骨髄内で分泌されます

 

4.IL-2はT細胞の分泌するサイトカインで

T細胞、B細胞、マクロファージなど各種白血球に作用します

 

5.マクロファージコロニー刺激因子はM-CSFともいい、G-CSFと似たような造血因子と思ってOKです

 

以上より、答えは2になります

肝臓の細胞は、ほかにもアルブミン・フィブリノゲン・血液凝固因子など多くの重要な生理物質をつくっています

 

MT64-AM60 濃染顆粒に含まれるのはどれか。2つ選べ。

1.ADP
2.セロトニン
3.グリコーゲン
4.フィブリノゲン
5.von Willebrand 因子

 

濃染顆粒に含まれる物質とその役割

・セロトニン血管の平滑筋収縮作用、血小板凝集惹起

ATP, ADPー血小板凝集の惹起

・Caイオンー凝固因子

 

 

α顆粒に含まれる物質とその役割

フィブリノゲン、第Ⅴ因子ー凝固因子

β-TG、PF4ー血小板の固有タンパク質

(凝固亢進→血小板の崩壊に伴って見られると考えれば良い)

VWF(フォンヴィルブランド因子)、P-セレクチン、トロンボスポンジン(TSP)

ー血小板の粘着性糖タンパク質=血小板凝集に必要な因子

・PDGFー血小板由来成長因子

・アルブミンー全身に存在するタンパク質

 

特に重要なものにはラインを引いていますが、

まずは濃染顆粒に含まれるものを覚えましょう

 

濃染顆粒に含まれるセロトニンやADPが血小板凝集を惹起します

 

血小板の顆粒に含まれる成分は出題頻度が高いです!

MT64-AM61 血小板から放出されるのはどれか。

1.コラーゲン
2.エピネフリン
3.リストセチン
4.トロンボキサンA2
5.トロンボモジュリン

 

答えから言うと、4.トロンボキサンA2になります

トロンボキサンA2(TXA2)はアラキドン酸カスケードで作られる物質で

活性化血小板内で産生され、その役割は血小板凝集の誘導です

アラキドン酸カスケードとは

脂肪酸であるアラキドン酸の代謝経路のことです。シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素によってアラキドン酸が代謝されると、プロスタグランジンE2,トロンボキサンE2ができます。また、リポキシゲナーゼという酵素によってアラキドン酸が代謝されるとロイコトリエン(血管拡張作用と気管支収縮作用をもつ)ができます。

 

1.コラーゲン
2.エピネフリン(=アドレナリン)
3.リストセチン

これらはいずれも血小板惹起物質ですが、血小板内には存在しません

ちなみにリストセチンは体内物質ではなく、薬剤であり、凝固検査で用いられます

 

5.トロンボモジュリンは血管内皮細胞などに存在する、トロンビンの受容体といえるタンパク質です

 

MT64-AM62 播種性血管内凝固(DIC)の診断に用いられないのはどれか。

1.可溶性フィブリンモノマー複合体
2.プロトロンビンフラグメント 1+2
3.トロンビン・アンチトロンビン複合体
4.抗ヘパリン・血小板第4因子複合体抗体
5.プラスミン・プラスミンインヒビター複合体

 

まずはDICについての知識を整理します

・DIC(播種性血管内凝固症候群)とは

出血がないのに全身の血管で凝固反応が起きる病気。結果的に、血小板や凝固因子が勝手に消費されて無くなってしまい出血が起こりやすくなる。さらに、凝固反応を終わらせるために、線溶も亢進する

以下にDICで見られる徴候をまとめます

・凝固亢進の指標(マーカー)

・PT, APTT延長→凝固因子が消費されて足りなくなるため
・フィブリノゲン減少→凝固でフィブリンになり消費されるため
・トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT増加)→凝固が進んでトロンビンが消費されるとアンチトロンビンと結合していくため
・アンチトロンビン減少→上記によりアンチトロンビンが消費されるため

また、今回の選択肢にあるものとして
・可溶性フィブリンモノマー複合体→フィブリンのようなものと解釈して良いので、凝固マーカー
・プロトロンビンフラグメント 1+2→プロトロンビンのようなものと解釈して良い、すなわちトロンビン産生亢進を表しているため凝固マーカー

 

線溶亢進の指標(マーカー)

・FDPおよびDダイマー高値→凝固でできたフィブリンが線溶で分解されるため
FDPとは、フィブリン・フィブリノゲンの分解産物
Dダイマーとは、FDPの一種
・プラスミン-プラスミンインヒビター複合体の増加→線溶が進んでプラスミンが消費されるとプラスミンインヒビターと結合していくから
・プラスミンインヒビター減少→上記により消費されるため

血液の凝固に使われる物質と線溶に使われる物質をしっかり区別できるかどうかがポイントです。


答えは 4.抗ヘパリン・血小板第4因子複合体抗体です

これは凝固・線溶マーカーというわけではなくヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断に用いられるものですね

この問題で重要なのは、凝固マーカーと線溶マーカーをしっかり理解することです

 

MT64-AM63 リンパ球と単球との鑑別に有用な染色法はどれか。

1.鉄染色
2.PAS 染色
3.特異的エステラーゼ染色
4.非特異的エステラーゼ染色
5.アルカリホスファターゼ染色

各選択肢をみていきます

1.鉄染色

名前の通り、鉄を染めるわけですからヘモグロビンを持つ赤芽球や赤血球の染色です

2.PAS 染色

PAS染色は多糖を染める染色でお馴染みです

血液では単球やリンパ球に用います

単球ではびまん性に染まる、というのがよく出てきます

リンパ球との区別には用いられません

 

3.特異的エステラーゼ染色

4.非特異的エステラーゼ染色

エステラーゼとはエステル結合を加水分解する酵素です

特異・非特異というのは基質となるエステルとの反応性を指す言葉で

染まる細胞が特異的という意味ではありません

血液学で特に重要なのは、非特異的エステラーゼの方で

非特異的エステラーゼは単球系の染色として有用です

また、非特異的エステラーゼ染色では

NaF(フッ化ナトリウム)を用いることで、単球のみ染色が阻害されます

リンパ球は元々弱陽性のため、区別可能ですが

NaFによって、単球とリンパ球の区別も容易です

問題の答えとしては4になります

 

5.アルカリホスファターゼ染色

アルカリホスファターゼといえば好中球の染色です

非常にメジャーな染色なので覚えておきましょう!

 

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MT64-AM64 赤血球の封入体はどれか。2つ選べ。

1.デーレ@Döhle小体
2.アウエル@Auer小体
3.ハインツ@Heinz小体
4.ラッセル@Russell小体
5.パッペンハイマー@Pappenheimer小体

 

 
1.Döhle 小体デーレ小体

好中球に見られる好塩基性斑点

骨髄異形成症候群;MDS などで出現

 
2.Auer小体(アウエル小体

急性前骨髄球性白血病(AML, M3)に見られる

 

3.Heinz小体ハインツ小体

変性したヘモグロビンの酸化物であり

赤血球に見られる

 
4.Russell 小体ラッセル小体

形質細胞に見られる

多発性骨髄腫などで出現

 

5.Pappenheimer小体パッペンハイマー小体

鉄染色で染まる、赤血球の封入体

鉄芽球性貧血などで見られることがある

 

答えは3,5になりますが

この問題で特に重要なのは、1.2.4のような白血球の封入体を知っているかどうかです

白血病の鑑別などに用いられ、非常に重要です

選択肢から、白血球系に出現するものを消していき

今回はの問題は消去法のような形で答えにたどり着くのがベストかと思います

 

今回は血液メインでした!

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