医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成30年2月21日(水)
に実施された
第64回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT64-PM5 髄液検査を行う前に測定すべき血液検査項目はどれか。
1.血 糖
2.赤血球数
3.アミラーゼ
4.ビリルビン
5.マグネシウム
髄液の主な測定項目は細胞数・蛋白・糖です
ここでいう細胞というのは白血球のことです
髄液の糖は、当然ながら血糖値を反映しますので
比較のため、血糖を予め測る必要があります
そのため答えは1です
ちなみに髄液の基準値は
細胞数:0~5個/μL
糖:40~80mg/dL (血糖の50~60%程度)
蛋白:15~40 mg/dL
髄液の糖が低値の場合、細菌や結核菌などに由来する髄膜炎の可能性があります
(菌が糖を消費するため)
ウイルス性の場合は、この傾向があまり見られないため鑑別の目安となります
MT64-PM11 肝硬変に伴う門脈圧の亢進と関連がないのはどれか。
1.痔 核
2.脾 腫
3.食道静脈瘤
4.下肢静脈瘤
5.腹壁静脈怒張
これは解剖学の問題です
肝硬変で門脈圧亢進症が起こりますが、この問題を言い換えると
「門脈に繋がる静脈でないものはどれか」
になります
門脈に繋がる(=臓器から栄養などを肝臓に運ぶ)のは以下の4つです
- 上腸間膜静脈ー小腸・大腸前半から(栄養を運ぶ)
- 下腸間膜静脈ー大腸後半~直腸から(水分を運ぶ)
- 脾静脈ー脾臓から(赤血球の代謝物を運ぶ)
- 胃静脈ー胃と食道から(栄養を運ぶ)
つまり、門脈→肝臓の流れが詰まってしまうと
上記の4つの静脈も詰まるということになります
これらに関係ないのは、4.下肢静脈瘤になります
MT64-PM12 脂質異常症の WHO 分類のうち、LDL-コレステロールとトリグリセライドがともに高いのはどれか。
1.Ⅰ
2.Ⅱb
3.Ⅲ
4.Ⅳ
5.Ⅴ
WHO分類による脂質異常症で増加するリポ蛋白は覚えるしかありません
語呂合わせで覚えてしまいましょう
Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ!カLIV(カリブ)海でV(ブイ)
Ⅰ:カイロミクロン
Ⅱ:LDL
Ⅲ:IDL
Ⅳ:VLDL
Ⅴ:カイロミクロン+VLDL
※ただし、ⅡbはLDL+VLDLである
問題文ではLDLとトリグリセリドが増加、とあり
LDLの増加はⅡ型になりますので、2が正解となります
↓リポ蛋白については以下の記事で詳しく解説しています
MT64-PM14 成人の腰椎穿刺による脳脊髄液検査所見で正常なのはどれか。
1.外観 淡黄色
2.細胞数 11/μL
3.蛋白質 65 mg/dL
4.クロール 123 mEq/L
5.グルコース 30 mg/dL
PM5の問題と似たような髄液の問題ですね
髄液基準値は
細胞数:0~5個/μL
糖:40~80mg/dL (血糖の50~60%程度)
蛋白:15~40 mg/dL
外観は無色透明です
クロール(Cl-)は血清よりやや高値で120 mEq/L 程度です
そのため答えは4になります
MT64-PM15 染色体検査で異常がみられるのはどれか。
1.血友病 A
2.囊胞性線維症
3.Turner 症候群
4.Huntington 病
5.フェニルケトン尿症
染色体検査の異常というのは基本的には
常染色体・性染色体の本数の異常が見られるものです
これらは実際に染色体の形や本数を見ることで異常を発見できます
(一部の白血病で見られるフィラデルフィア染色体、BCR/ABL融合遺伝子、なども検出できます)
一方で、いわゆる遺伝子の変異などの病気は
染色体を見てもわからないため
PCRなどの遺伝子検査が必要です
1.血友病 A
血友病は血液の凝固因子を欠損する遺伝病です
Aは第Ⅷ因子、Bは第Ⅸ因子を欠損します
2.囊胞性線維症
CFTRの変異で起こります、CFTRはCl-のイオンチャネルでこれによって肺炎などの症状を引き起こします(国家試験レベルではマイナーな部類です)
3.Turner 症候群 ○
ターナー症候群は性染色体モノソミー すなわち
性染色体がXだけの1本しかない性染色体異常です
他にはクラインフェルター症候群(XXY、XXXY)などがあります
常染色体異常であれば、最も有名なのは21番トリソミーのダウン症候群です
4.Huntington 病
ハンチントン舞踏病とも呼ばれます
その実態は遺伝性の神経変性疾患で、自分の意志によらない不随意運動が起こり、舞踏しているかのように勝手に身体が動いてしまうという病気です
5.フェニルケトン尿症
アミノ酸のフェニルアラニンを代謝できなくなる遺伝性疾患です
尿のにおいがネズミ尿臭という特徴があります
新生児マススクリーニングの対象疾患です
医学総論などの問題は一つの問題から知識を派生させていくと、より勉強になりますので余裕があるうちは教科書などで調べてしっかり病気について学ぶのも有効です!
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