医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和6年2月14日(水)に実施された
第70回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説しています!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp240424-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
- MT70-AM 29 水、10mg/dL 標準液、血清の終点分析法における反応終了後の吸光度を測定したところそれぞれ0.02 0.30 0.16 であった。血清中に含まれる物質の濃度 [mg/dL] で正しいのはどれか。
- MT70-AM 30 マグネシウムで正しいのはどれか。
- MT70-AM 31 アガロースゲルを用いたリポ蛋白電気泳動で、 β位と preβ位に強い染色像が認められた。WHO 脂質異常症タイプ分類で考えられるのはどれか。
- MT70-AM 32 尿素で正しいのはどれか。
- MT70-AM 33 AST 活性測定用試薬 (日本臨床化学会 〈JSCC〉 勧告法) に含まれないのはどれか。
- MT70-AM 34 敗血症マーカーはどれか。
- MT70-AM 35 グルコースオキシダーゼ法による血糖測定で利用する酵素はどれか。
- MT70-AM 36 血中の半減期が最も長いのはどれか。
MT70-AM 29 水、10mg/dL 標準液、血清の終点分析法における反応終了後の吸光度を測定したところそれぞれ0.02 0.30 0.16 であった。血清中に含まれる物質の濃度 [mg/dL] で正しいのはどれか。
1. 5.0
2. 5.2
3. 5.4
4. 5.6
5. 5.8
この計算問題は非常にシンプルで解きやすい問題です。
情報をまとめると、吸光度は
- 水(盲検=Blank):0.02
- 標準液(10 mg/dL):0.30
- 血清:0.16
まず、盲検の吸光度を、標準液・血清から引きます
標準液-Blank=0.28
血清-Blank=0.14
次に、濃度と吸光度の比をとって計算します
10 mg/dL:0.28=x mg/dL :0.14
これを解くと、x=5.0 ということで1が正解です
MT70-AM 30 マグネシウムで正しいのはどれか。
1. EDTA 加血漿では低値となる。
2. 欠乏すると味覚障害を引き起こす。
3. 細胞内液より細胞外液に多く含まれる。
4. 血清中では90%がイオン型で存在する。
5. ホスホリパーゼDを用いた酵素法にて測定される。
マグネシウムのみの知識を問うのはややマニアックのように思えますが…チェックしていきましょう
1. EDTA 加血漿では低値となる。→正しい。これが正解。
EDTAは基本的に金属イオンをキレートするので、EDTA血漿では金属の関連するものは測れません
2. 欠乏すると味覚障害を引き起こす。→✕ 欠乏で味覚障害は亜鉛の定番知識です。他に、Ca欠乏でテタニーを覚えておくと良いでしょう。
3. 細胞内外液より細胞外内液に多く含まれる。→✕ 細胞内に多いのはK・P・Mg
4. 血清中では90%55%がイオン型で存在する。→Mgはイオン型55%、アルブミンと結合した蛋白結合型が30%程度と言われていますが、国試レベルではCaと同様にイオン型50%、蛋白結合型が40%程度と同じように覚えてしまってよいでしょう。
5. ホスホリパーゼDを用いた酵素法にて測定される。→ホスホリパーゼDはCaの測定法です。
今回の問題はマグネシウムについて問う問題でしたが、EDTAのことさえわかっていれば解ける非常に簡単な問題でした。
大切なのは解説に書いたように、マグネシウムだけでなく、他の電解質の周辺知識をしっかり掘り出すことです。
マグネシウムを覚えただけでは、ほかの電解質の応用問題ができないですから、電解質全般知識として覚えていくようにしましょう。
MT70-AM 31 アガロースゲルを用いたリポ蛋白電気泳動で、 β位と preβ位に強い染色像が認められた。WHO 脂質異常症タイプ分類で考えられるのはどれか。
1. Type I
2. Type II a
3. Type II b
4. Type IV
5. Type V
リポ蛋白と脂質異常症の知識を組み合わせた問題で、難しいです
まずは、リポ蛋白の電気泳動の泳動位置を覚える必要があります
α preβ β 原点
HDL VLDL LDL CM
そのうえで、脂質異常症のタイプによって増加するタンパクを覚えているかどうか
これに関しては素晴らしい語呂合わせがありますので絶対に覚えましょう!
Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ!カLIV(カリブ)海でV(ブイ)
Ⅰ:カイロミクロン
Ⅱ:LDL
Ⅲ:IDL
Ⅳ:VLDL
Ⅴ:カイロミクロン+VLDL
※Ⅱ型にはⅡaとⅡbがあり、ⅡbはLDL+VLDLです
問題で聞いているのはβとpreβに強い染色ということなので、LDLとVLDLが増加する脂質異常症ですから、3.TypeⅡbとなります。
MT70-AM 32 尿素で正しいのはどれか。
1. 血中濃度は小児が成人よりも高い。
2. ウリカーゼによって加水分解される。
3. 消化管出血により血中濃度が減少する。
4. 血中非蛋白性窒素の中で最も濃度が高い。
5. 生体内でアルドラーゼによって生成される。
尿素の基礎知識問題です、選択肢を正しく直していきましょう
1. 血中濃度は小児が成人よりも高い。→× 基本的には、男性>女性であると覚えておくとよいでしょう
2.ウリカーゼ ウレアーゼによって加水分解される。 ウリカーゼは尿酸の加水分解酵素
3. 消化管出血により血中濃度が減少増加する。× 消化管出血では血液由来のタンパク代謝が増え、結果的に尿素が増加します。またこれを判別するために、UN/Cre比というのがあります。
UN/Cre比が大きくなる(基準はUNがCreの10倍を大きく上回る)と、消化管出血が疑われます。
4. 血中非蛋白性窒素の中で最も濃度が高い。〇→血中非タンパク性窒素(NPN)とは、尿素・アンモニア・クレアチニン・クレアチン・尿酸のことで、尿素が一番濃度が高いです。
5. 生体内でアルドラーゼ アルギナーゼによって生成される。×→尿素は尿素回路で生成され、直前の前駆物質はアルギニンです。アルギニンがアルギナーゼの作用で分解され尿素とオルニチンになります。オルニチンはまた尿素回路で再利用されるため、別名をオルニチン回路とも言います。
MT70-AM 33 AST 活性測定用試薬 (日本臨床化学会 〈JSCC〉 勧告法) に含まれないのはどれか。
1. NADH
2. オキサロ酢酸
3. L-アスパラギン酸
4. リンゴ酸脱水素酵素
5. 2-オキソグルタル酸
(※2024 9/2 追記 これ以前に掲載していた解答に誤りがありました。大変申し訳ございませんでした。)
酵素の測定原理をしっかり理解していないと難しい問題…に見えますが、実は解き方にコツがあります。
まず、酵素の測定原理なんで全然わからないよ!という人は、測定波長だけでも覚えてしまうとよいでしょう。
詳しくはこちらの記事をご覧ください→NADH(340nm)の増加 or 減少を測定する酵素反応の覚え方
酵素の測定ではNADHの極大吸収340nmを利用して測定するものがありますが、
このNADHが
生成されれば340nmの増加を測定している
消費されれば340nmの減少を測定している
今回の問題に関しては、340nmの減少=NADHの消費量を測定しています。
また、ASTの測定における反応原理は2段階あり
2-オキソグルタル酸+アスパラギン酸 →(AST作用)→ オキサロ酢酸+グルタミン酸
オキサロ酢酸+NADH →(リンゴ酸脱水素酵素)→リンゴ酸+NAD
↑ASTの反応で生成されたオキサロ酢酸とNADHが反応し、消費されたNADHの量を測定に利用している!
この際に、オキサロ酢酸が外部から加えられると、無限にこの反応が起きてしまいますので、オキサロ酢酸はAST由来の反応で出来た分のみを利用しています。
・そのため、2.オキサロ酢酸が試薬に含まれていない、という答えになります。
原理をしっかりと理解していなければならず、やはり酵素の問題は難しいと感じます。
・4.リンゴ酸脱水素酵素はAST測定の際に用いられる共役酵素です。
共役酵素ってなんだっけ…??という人はこちらの記事をどうぞ!→【臨床化学】共役酵素とは?臨床検査技師国試に出るポイントを解説!
ちなみにASTの測定試薬には”LD:乳酸脱水素酵素”も含まれています。理由はとりあえずは不要な反応を除去するため、と簡単に解釈しておくとよいと思います。
※ ALTにもLDは試薬として含まれており、こちらはLDがALT測定における共役酵素の役割を果たしています。
(とりあえず暗記で乗り切りたい!という人はこちらから御覧ください)
まとめると、ASTの試薬に含まれるのは
① リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MD):共役酵素
② 乳酸デヒドロゲナーゼ(LD):不要物質(内因性ピルビン酸)の除去
③ NADH:消費量測定のため試薬として加える
④ アスパラギン酸:基質として必要
⑤ 2-オキソグルタル酸:基質として必要
⑥ 緩衝液:反応安定のため
の以上になります!
MT70-AM 34 敗血症マーカーはどれか。
1. KL-6
2. シスタチン C
3. プレセプシン
4. アンジオテンシン変換酵素 〈ACE〉
5. N-アセチルグルコサミニダーゼ 〈NAG〉
マーカー問題は覚えているかどうか、になりますのでこういったものは優先的にしっかり覚えるようにしましょう。
1. KL-6―間質性肺炎 →他にSP-Dというのもあります
2. シスタチンC-糸球体障害
3. プレセプシン―敗血症 ほかに、プレカルシトニンがあります。
4. アンジオテンシン変換酵素 〈ACE〉-サルコイドーシス
5. N-アセチルグルコサミニダーゼ 〈NAG〉-尿細管障害
答えは3です
MT70-AM 35 グルコースオキシダーゼ法による血糖測定で利用する酵素はどれか。
1. α-アミラーゼ
2. α-グルコシダーゼ
3. グルコース6ホスファターゼ
4. マルターゼ
5. ムタロターゼ
グルコースオキシダーゼ法(GOD法)のチェックポイント
・GODはβ-Dグルコースのみに作用する
・α-Dグルコースをβ-Dグルコースに変換するため、ムタロターゼを使用する
というのを覚えておくとよいですね。ちなみに、α:β=4:6程度の割合で存在します。
答えは5.ムタロターゼです。
MT70-AM 36 血中の半減期が最も長いのはどれか。
1. ALT
2. AST
3. CK
4. LD5
5. α-アミラーゼ
酵素の半減期の長さ問題ですが、すべてを網羅するのはなかなか難しいです。
答えからいうと、1のALTになります。
ALTとASTの半減期はよく比較されますが、ALT:Long、AST:Short と覚えると覚えやすいでしょう。
CKは酵素の中では不安定で温度変化にも弱く、半減期は短い部類です
LDはアイソザイムによって、半減期が異なりLD1から長く、LD5が最も短いです
LD1と2の半減期は80~70時間程度と、酵素の中では最も長いです(ALTは40時間程度)
ちなみにこの中で最も半減期が短いのはアミラーゼになります。
細かい数字は覚えなくてもよいですが、以下のチェックポイントに絞って覚えることをおすすめします。
チェックポイント・酵素
・半減期 ALT>AST
・LDの中では1が長く5にいくにつれて短い、特にLD4,5 は冷凍でも失活する。
・CKは温度変化に不安定
・アミラーゼは分子量が小さく尿中にも出ていくため、血中半減期がとても短い(特に膵型のP-アミラーゼは膵炎マーカーであり、尿中のP-AMY測定が重要)
コメント
70回国試AM33の答えは2じゃないでしょうか?
ご指摘ありがとうございます。
また、誤った解答を載せてしまい大変申し訳ございませんでした。
修整いたしました、今後ともよろしくお願いします。