医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成30年2月21日(水)
に実施された
第64回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT64-AM85 血液型が A 型遺伝子型 AOと B 型遺伝子型 BOの両親から生まれた子が O型である確率はどれか。
1. 5%
2.12.5%
3.25%
4.33.3%
5.50%
これは得意な人が多い問題かもしれませんね
まずは言葉の整理から
ABO式血液型の遺伝子は第9染色体にあります
染色体上の遺伝子のある場所を遺伝子座といいます
同じ遺伝子座にのっているA・B・Oは対立遺伝子(アリル)といいます
染色体は2組ありますから、両親からA/B/Oの遺伝子を1つずつ引き継ぎます
引き継いだ遺伝子2つの組み合わせ(例えば、AA, AO, ABなど)を遺伝子型といいます
AA, BB, OOのように同じ対立遺伝子の組み合わせをホモ接合
AB, AO, BOのように違う組み合わせをヘテロ接合といいます
対立遺伝子には皆さんご存知の通り
- 優性遺伝子(現在は顕性)
- 劣性遺伝子(現在は潜性)
があり、血液型の場合はA/Bが優性、Oが劣性になります
劣性遺伝子はホモ接合の時に発現(見た目や性質に現れる)します
そのため通常は優性遺伝子が発現します
この、見た目や性質のことを表現型といいます
以上難しい言葉を並べているように見えますが
わざわざこんな言葉を使わなくても、なんとなくわかりますよね
しかし、実際の問題ではこのように専門用語を並べて
簡単なことを難しい言い回しで聞いてくる
ということは覚えておきましょう
さて、本題に入りますが
表現型がA型とB型で
AOとBOの遺伝子型をもつ親から生まれる子どもですね
AO × BO を掛け合わせると
A O
B AB BO
O AO OO
となり、各血液型が25%ずつとなります
MT64-AM86 交差適合試験の主試験において、生理食塩液法陰性、間接抗グロブリン試験陽性となる原因として最も考えられるのはどれか。
1.抗 Jka
2.Rh 不適合
3.ABO 不適合
4.冷式自己抗体
5.汎血球凝集反応
輸血の分野はとにかく原理をしっかり押さえることが必要です
生理食塩液法(生食法)の意義
ABOやRhの不適合、不規則抗体の検出、寒冷凝集素の検出、冷式抗体の検出など簡便なスクリーニングができる。検出する抗体はほぼIgMである。(IgGでは抗体価が低く凝集が起こりにくいため)具体的には、抗Lea、抗Leb、抗M、抗N、抗P1、など。これら抗体の臨床的意義は低いです(あまり問題にはなりにくいということ)
※ ただし、抗Leaは溶血性副作用あり
※ 簡便な覚え方、アルファベット順にL, M, N, Oは飛ばしてP1
間接抗グロブリン(間接クームス)試験の意義
間接抗グロブリン試験の主目的は臨床的意義のあるIgG型の不規則抗体の検出である
生食法で陰性、間接クームス陽性ですから
IgG型の不規則抗体の存在であるということを意識します
1.抗 Jka
2.Rh 不適合
3.ABO 不適合
4.冷式自己抗体
5.汎血球凝集反応
不規則抗体とはABO以外を指しますので、まず3は否定
2.Rhの不規則抗体は生食法で検出できます
4.冷式自己抗体は体温より低いほど凝集が強くなりますが、室温でも生食法での検出ができます
5.汎血球凝集反応は普段は赤血球の膜内に隠れている抗原がなんらかのきっかけで表に出てくることです
こちらも生食法での検出は可能となります
以上のことから、IgG型の不規則抗体である1.が正解です
MT64-AM87 不規則抗体について正しいのはどれか。
1.輸血歴がない場合は検査不要である。
2.IgG クラスの抗体が臨床的に重要である。
3.酵素法は MNSs 血液型に対する抗体を検出する。
4.生理食塩液法は主に IgG クラスの抗体を検出する。
5.D 以外の Rh 血液型抗原に対する抗体は検出されない。
正解からいうと、1つ前の問題にも書いてありますが
IgM型の不規則抗体は臨床的意義が低いですが、
IgG型の不規則抗体は臨床的意義が大きいとなり、答えは2です
他の選択肢をしっかり正しく解釈しましょう
1.輸血歴がない場合は検査不要である。✕
輸血歴がなくても不規則抗体を持つ可能性は0ではないです
3.酵素法は MNSs 血液型に対する抗体を検出する。
酵素法では、MNS, Duffyなどの抗原を破壊するため
検出できない可能性があります
4.生理食塩液法は主に IgG IgMクラスの抗体を検出する。
抗Lea、抗Leb、抗M、抗N、抗P1 がIgMで、臨床的意義は低いです
(ただし、抗Leaは溶血性副作用あり)
5.D 以外の Rh 血液型抗原に対する抗体は検出されない。
不規則抗体ではRh抗原(C, c, E, e)ももちろん検出します
MT64-AM88 輸血副作用と原因の組合せで正しいのはどれか。
1.肝炎ー 輸血製剤のリンパ球
2.血管内溶血ー 輸血製剤の補体
3.輸血後 GVHDー 不規則抗体
4.循環過負荷(TACO)ー 抗内皮細胞抗体
5.輸血関連急性肺障害(TRALI)ー 抗白血球抗体
1.肝炎の原因は肝炎ウイルスです
2.血管内溶血は主にABO不適合輸血で起こります
3.輸血後 GVHDは、移植された組織が、宿主を攻撃する
つまり輸血においては、輸血製剤中のリンパ球が宿主を攻撃することで起こります
4.循環過負荷(TACO)
TACOとは輸血中~輸血後6時間以内に発症する
急性の呼吸困難を伴う合併症です
原因は、輸血による循環血液量の増加による過負荷
体液量が急激に増え、心肺に負担がかかり起こる症状です
単純な体液量の増加であり、免疫は関係ありません
5.輸血関連急性肺障害(TRALI)ー 抗白血球抗体 ○
輸血関連急性肺障害 (TRALI)とは
製剤中に含まれる抗白血球抗体(HLA抗体、好中球抗体)と、
患者の白血球や肺の毛細血管内皮細胞が反応して
好中球が活性化され、肺の毛細血管に損傷を与えることでTRALIが発症すると推測されています
(AABB Press,Bethesda, 2012, pp191-215.より)
ということで5が正解です
MT64-AM89 移植について正しいのはどれか。
1.造血幹細胞は末梢血から採取できない。
2.ヒトからヒトヘの移植を同系移植という。
3.急性拒絶反応は細胞傷害性 T 細胞が関与する。
4.移植後 GVHD はレシピエント由来のリンパ球が関与する。
5.肝臓移植では他の臓器移植より高い HLA 適合性が求められる。
1.造血幹細胞は末梢血から採取できない。
造血幹細胞といえば、骨髄や臍帯血のイメージがありますが
末梢血からも採取自体は可能です
2.ヒトからヒトヘの移植を同系移植という。
他人への移植は同種移植といいます
同系というのは、一卵性双生児等の場合でレアケースです
3.急性拒絶反応は細胞傷害性 T 細胞が関与する。○
移植後に起こる拒絶反応で、急性と言いますが
約3ヶ月以内での拒絶反応をいいます
この原因となるのは、非自己を異物として攻撃する細胞傷害性T細胞(キラーT)です
通常は、ウイルス感染細胞や癌細胞を攻撃する重要な役割を持っています
4.移植後 GVHD はレシピエント由来のリンパ球が関与する。
レシピエントとは移植される人です
GVHDは移植されたドナー(提供者)の組織が、レシピエントを攻撃することです
5.肝臓移植では他の臓器移植より高い HLA 適合性が求められる。
HLAの適合性が大きく影響するのは腎臓・膵臓です
参考文献:Major Histocompatibility Complex, 2014;21(2):105-118
以上、主に輸血分野の解説でした!
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