【臨床検査技師国試】意外と見落としがちな酵素!過去問解説【ALP・AMY】

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国試かけこみ寺です!

臨床化学は臨床検査技師国家試験で最も出題数の多い分野であり、苦手な人も多いかと思います

この記事は、特に酵素別の過去問をピックアップして解説しています!

 

今回の記事はALP(アルカリホスファターゼ)とAMY(アミラーゼ)です

ALPはLDに次いで出題数が多い酵素なのでぜひチェックしてみてください

AMYは実際にどのような知識が過去に出ているのか、見落としがちですのでこちらもチェックしていきましょう

 

基礎知識をおさらいしたあとに、実際の過去問を見ていくという流れになっています

何度か読み返してもらえると自然と勉強ができるかと思いますので、ぜひご活用ください!

 

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ALPの基礎知識

ALP:アルカリホスファターゼ

その名の通り、アルカリ性で活性を示すホスファターゼ

ホスファターゼとはリン酸化合物(リン酸モノエステル)を加水分解する酵素です

チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー

活性中心にZn2+を有する金属酵素(ゆえに、EDTA血漿では測定できない)

活性化には、Mg2+ か Mn2+ が必要

活性中心は、活性部位とも言います。活性中心の金属は酵素の中に組み込まれ、パーツの一部として機能します。活性化に必要な、Mg2+などは試薬として添加すればOK。

ALPもアイソザイムによって由来臓器が異なるため、アイソザイムの判別が重要です

アイソザイム 国家試験重要ポイント

ALPには6種類のアイソザイムがありますが6は特殊なため、実質5つです。それほど難しくはなく、由来臓器さえ覚えてしまえばOKです。

  1. 肝型
  2. 肝型
  3. 骨型
  4. 胎盤型
  5. 小腸型
  6. ALP結合性免疫グロブリン

かん・かん・こつ・たい・しょうちょう 声に出して繰り返し覚えてしまいましょう

6は特殊で潰瘍性大腸炎患者に見られることがあります(国試レベルでは覚えなくても可)

 

ALPアイソザイムの増加する病態は、それぞれの由来を考えればOK

ALP1とALP2→肝・胆道系疾患

ALP3骨代謝に関する病態=甲状腺機能亢進(カルシトニン増)や副甲状腺機能亢進(パラトルモン増)、骨腫瘍、慢性腎不全(によってCaとPのバランス崩れるため)。あとは、骨代謝が盛んな小児で高値。

ALP4妊娠(病気ではないが、国試に結構出る)

ALP5→血液型がB型、O型で分泌型(Se)の人は、食後に高値

ALPについての補足
ALPの測定法が2020年より、JSCC法からIFCC法へ移行しました。JSCCは日本基準、IFCCは世界基準と思えばOKです。JSCC法には、ALP5小腸型が高めに測定されるという問題点があり、食後の分泌型B,Oの人では特に影響を大きく受けていました。そのため、影響のより少ないIFCCへと移行されたというわけです。ちなみに、これによってALPの基準範囲は従来の約3分の1となったため、注意が必要です。

 

ALPの重要ポイントをまとめると

  • 肝疾患で上昇するが、他肝機能検査との併用が必要
  • 骨代謝の影響を大きく受ける→骨成長の盛んな小児で高値となる
  • 胎盤型は妊娠後期に上昇する
  • 小腸型はB,Oの分泌型で食後高値となる

 

ALPは肝臓・骨・胎盤・小腸とバラエティに富んだアイソザイムを持っているので、病態と結びつけるのが難しいですが、由来臓器さえ覚えておけば関連付けやすいでしょう

 

AMYの基礎知識

AMY:アミラーゼ

言わずと知れた消化酵素です、ご存知の通り唾液と膵液に含まれており、アイソザイムも2つです

チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー

・活性中心にCa2+、活性化にはClが必要

活性中心がカルシウムなので、EDTAではキレートされて活性低値となる(ALPより影響は軽微)

 

アイソザイム

・膵AMY(P-AMY) と 唾液AMY(S-AMY)の2種が存在

(膵臓:Pancreas、唾液:Saliva)

・存在比は、血清中ではP:S=4:6、尿中ではP:S=7:3程度

膵炎・膵癌でP型が増加する

ゆえに、膵炎での尿中AMY測定が有用である

他、耳下腺炎、アミラーゼ産生腫瘍などではS型が増加します

 

ALPは情報量が多いですね、AMYは逆に情報量はそんなに多くないけど、実際にどんな問題が出ているのか?

見ていきましょう!

ALPの過去問解説

MT67-PM35 上昇するアイソザイムと疾患の組合せで正しいのはどれか。

1.ALP1 ー閉塞性黄疸
2.ALP2 ー悪性腫瘍の骨転移
3.ALP3 ー肝硬変
4.ALP4 ー 腎不全
5.ALP5 ー潰瘍性大腸炎

ALPのアイソザイムは

1かん・2かん・3こつ・4たい・5しょうちょう

です、あとはこれに従って関連する疾患かどうか判定すればOK

 

正解は1です

MT62-AM39 EDTA加血漿で測定すると、血清に比べて活性が大きく低下するのはどれか。

1. LD
2. AST
3. ALP
4. ALT
5. γ-GT

EDTAは金属イオン(Ca2+、Mg2+、Zn2+など)のキレート作用(除去作用)があります

そのためCa2+を阻害することによる抗凝固作用があるわけですが、

金属イオンを含む酵素、すなわち3.ALPは活性が低下します

ALPの活性中心は亜鉛Zn2+でキレートの影響を大きく受けるためです

MT61-PM37 ABO血液型の影響を受けるのはどれか。

1. CK
2. LD
3. ALP
4. ALT
5. AST

ピンポイントな問題ですが、正解は3.ALPです

ALP5(小腸型)→血液型がB型、O型で分泌型(Se)の人は、食後に高値となります

が!これはJSCC法における測定の場合です。国際基準であるIFCC法では上記の小腸型への影響が少なくなっており、2020年からJSCC→IFCC法に変更されています

JSCC→IFCCに変わって最も大きな影響があるのは基準値です、IFCC法では従来の基準値の約3分の1になっているため今後注意が必要です

MT60-AM40 妊娠後期に上昇するのはどれか。

1.ALP
2.ALT
3.AST
4.γ-GT
5.LD

妊娠後期に上昇というのは、ALP4=胎盤型です

こうして過去問を見てみると、ALPのアイソザイムの豊富さには驚かされます

由来臓器かん・かん・こつ・たい・しょうちょう を是非覚えてください!

MT59-PM39 原発性副甲状腺機能亢進症の際に上昇するのはどれか。

  1. ALP
  2. ALT
  3. AST
  4. LAP
  5. γ-GT

原発性副甲状腺機能亢進症 副甲状腺のホルモンといえばパラトルモンです

パラトルモンといえば、骨吸収を促進し、血中Caを上昇させるホルモン

骨に関係あるのは、ALP3=骨型となります

↓カルシウムに関するホルモン、骨代謝に関しては以下の記事がおすすめです!

【内分泌】カルシウムから考える甲状腺と副甲状腺(=上皮小体)【カルシトニンとパラトルモン】

【国試によく出る】骨形成と骨吸収のまとめ【臨床検査技師国家試験】

MT58-PM38 骨型ALPについて正しいのはどれか。

1.熱処理で安定である。
2.蛋白の一次構造は肝型ALPと同じである。
3.健常成人では血清中ALPの大部分を占める。
4.電気泳動の移動度はノイラミニダーゼ処理によって変化しない。
5.他のアイソザイムよりもL-フェニルアラニンによって強く阻害される。”2

ALPアイソザイムについてかなり細かい知識を問う問題です

ここまでのALPの問題に慣れてきたら、追加で知識を覚える程度でよいと思います

1.熱処理で安定である。→胎盤型の特徴です、65℃でも活性を保つことができます

2.蛋白の一次構造は肝型ALPと同じである。正解

肝型と骨型ALPの一次構造(アミノ酸配列)は同じです、アイソザイムの違いは翻訳後修飾によります

3.健常成人では血清中ALPの大部分を占める。→最も多いのは肝型です

4.電気泳動の移動度はノイラミニダーゼ処理によって変化しないする。→ノイラミニダーゼ処理をする理由は、電気泳動上で肝型と骨型を分離させるためで、骨型の移動度が変化します

5.他のアイソザイムよりもL-フェニルアラニンによって強く阻害される。フェニルアラニンで阻害されるのは小腸型(と胎盤型)です。フェニルアラニン阻害を行うことで骨型と肝型の活性を測ることができます

MT56-PM38 EDTA加血漿で測定すると、血清に比べて活性が大きく低下するのはどれか。

  1. ALP
  2. ALT
  3. AST
  4. CK
  5. LD

EDTAの添加で活性が低下というのは、MT62-AM39、で先程出てきました

 

ALPの過去問を通してみてみると、

  • 金属を含む酵素なのでEDTAで活性低下
  • アイソザイムの由来臓器、特徴を把握すること

が重要であるとわかりましたね!

AMYの過去問解説

MT66-PM32 アミラーゼアイソザイムで正しいのはどれか。

1.S型は尿に排泄されない。
2.急性膵炎ではS型が上昇する。
3.P型はS型よりも分子量が大きい。
4.流行性耳下腺炎ではP型が上昇する。
5.腎不全ではP型、S型ともに上昇する。

アミラーゼアイソザイムの基本知識の詰まった問題

1.S型は尿に排泄されない。→どちらも排泄はされます(P型が多い)

2.急性膵炎ではSP型が上昇する。→膵炎なのでP型

3.P型はS型よりも分子量が大きい小さい。→尿にP型が出やすい理由がこれです。腎糸球体で濾過されるかどうかは主に分子量に左右されます。

4.流行性耳下腺炎ではPS型が上昇する。→唾液が関連するとS型上昇

5.腎不全ではP型、S型ともに上昇する。→腎不全ではどちらも排泄低下して、結果的に血中に増加

 

MT60-AM39 ヒト血清アミラーゼについて正しいのはどれか。

1.Clにより活性化する。
2.Zn2+を含有する酵素である。
3.アルブミンより分子量が大きい。
4.2つのサブユニットからなる酵素である。
5.デンプンの末端グルコースを水解する酵素(エキソ型)である。” 1

やや応用知識も混ざった問題ですが、見ていきましょう

1.Clにより活性化する。○正解

2.Zn2+を含有する酵素である。→ZnはALPです、AMYはCaです

3.アルブミンより分子量が大きい小さい

この選択肢は考え方が重要なのでしっかり解説します。まず、この問題はアミラーゼの分子量を知らなくても、他の知識があれば解くことができます。

アルブミンは通常、尿にはほとんど検出されません。尿中アミラーゼは検出可能です。すなわち、アミラーゼはアルブミンより分子量が小さいため腎糸球体を通過して尿中に排泄されるのです。

このように持っている知識を組み合わせ、推測することで答えを導き出せることもありますから、諦めず考えるようにしてみてください。

4.2つのサブユニットからなる酵素である。

サブユニットとは酵素を構成するパーツですが、アミラーゼはサブユニットは一つです。

5.デンプンの末端グルコースを水解する酵素(エキソ型)である。

→エキソ型とは分子の末端を切断する酵素、対してエンド型は分子内の内側から切断する酵素です

アミラーゼに関しては、両方ともある、というのが正解になるかと思います

 

ややマイナー知識が選択肢にはありますが、正解は基本知識の1番さえわかっていれば解ける問題でした。保証はありませんが、基礎知識をとりあえず押さえておけば、マイナー知識を知らなくとも答えにたどり着ける可能性は十分あるということです。

MT59-AM38 ヒトの血中アミラーゼについて正しいのはどれか。

  1. 膵臓でのみ産生される。
  2. 腎糸球体で濾過される。
  3. 血中半減期は約24時間である。
  4. α-1,6‐グルコシド結合を切断する。
  5. 活性中心に亜鉛イオンを含有する。” 2

選択肢を見ていきます 

  1. 膵臓でのみ産生される。→唾液型は唾液腺です
  2. 腎糸球体で濾過される。 →尿中に検出されるのはそういうことです
  3. 血中半減期は約242~4時間である。✕ →これは酵素の中でもかなり短い方です
  4. α-1,64‐グルコシド結合を切断する。✕ →デンプンの構造に関係するものですが詳細は省きます。ヒトのアミラーゼは1,4結合しか切断できません。
  5. 活性中心に亜鉛カルシウムイオンを含有する。✕ →亜鉛はALPです、活性中心の金属はALPとAMYがよく出てきますので必ず覚えておきましょう

MT57-AM41 血中でP型アミラーゼが上昇するのはどれか。

  1. 肺炎
  2. 卵巣癌
  3. 慢性腎不全
  4. 多発性骨髄腫
  5. 急性耳下腺炎

これはP型だから膵臓なのに、関連疾患がないぞ!?と思ってしまいますが、軽いひっかけ問題のようなものです。

正解は3の慢性腎不全です。普段は尿中にP型は排泄されやすいですが、腎不全によって、血中に蓄積してしまい、結果血中に増加すると言えるわけです

5.耳下腺炎はS型上昇なので、答えにはなりません

 

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まとめ

  • ALPの活性中心は亜鉛、AMYはカルシウム、どちらもEDTAキレートの影響を受ける
  • ALPは各アイソザイムの特徴に関する問題が多い!
  • AMYのP型は尿中検査が有効である、その周辺知識が問われることも多い
  • まずは基本知識を押さえて、細かい知識はあとから付けていってもOK!

これまで第一弾:LD、第二弾:CK・AST/ALT、とやってきて第三弾はALP/AMYでした

基礎知識を覚える→過去問を解く→基礎知識の復習&追加知識を覚える

このプロセスで確実に力を付けていけるはずですので、特に臨床化学が苦手な人は、記事を読み返したり、ノートにメモしたりしながら繰り返し勉強してみてください!

 

↓第一弾と第二弾はこちらです♪(クリックすると移動します)

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