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国試かけこみ寺です!
臨床化学は臨床検査技師国家試験で最も出題数の多い分野であり、苦手な人も多いかと思います
この記事は、特に酵素別の過去問をピックアップして解説しています!
↓最も出題数が多いのはLDです、まだ読んでいない方はこちらからどうぞ!
今回の記事ではLDに続いて、CKとAST/ALTについて解説します!
ちなみに、LD・CK・AST・(ALT)は細胞内に豊富な逸脱酵素です
逸脱酵素とは、溶血や細胞が壊れた時に、血中に上昇する酵素ということです!
基礎知識をおさらいしたあとに、実際の過去問を見ていくという流れになっていますので
何度か読み返してもらえると自然と勉強ができるかと思いますので、ぜひご活用ください!
CKの基礎知識
CK:クレアチンキナーゼ
キナーゼとはリン酸化酵素のことです
すなわちCKの役割はクレアチンにリン酸をつけること(ATPからリン酸を一つもらう、逆反応もできる)
クレアチン+ATP ↔ クレアチンリン酸+ADP
※クレアチンリン酸は筋肉の高エネルギー化合物です
・CKの測定原理は340nm(NADH)の増加です(※正確にはNADPHですがここでは便宜上NADHと同一として扱っています)
・共役酵素にHKとG6PDがあります(ヘキソキナーゼ・グルコース6リン酸脱水素酵素)
この2つの酵素はグルコース測定のJSCC勧告法「HK・G6PD法」と共通です!
CKの活性測定原理は、クレアチンリン酸を基質として、ATPを生成することから始まります
このATPをヘキソキナーゼが利用し、グルコースと反応、さらにG6PDが作用することでNADHが生成し、340nmの増加をしているのです
まとめるとこんな感じ
クレアチンリン酸+ADP→(CKが作用)→クレアチン+ATP
ATP+グルコース→(HKが作用)→G6P(グルコース6リン酸)
G6P+NADP→(G6PDが作用)→NADPH(340 nm)が生成
実はこの反応はグルコースのJSCC勧告法にも共通しています
上記の反応の1番上の列を抜かした反応、つまりATP+グルコースから反応を開始して、NADPHの増加を測定するのがグルコースの測定法=HK・G6PD法です!
今回は酵素の話ですが、実はCKの測定原理を知るということは、GluのHK・G6PD法の原理を知ることでもあるんですね
チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー
・酵素活性にチオール基(SH基)が必要(測定試薬にはN-アセチルシステインという活性化剤が含まれる→システインは硫黄Sを含むアミノ酸)
筋肉に多く存在することから、心筋梗塞・筋細胞が破壊される疾患(筋ジストロフィー、筋炎など)で上昇します
心筋と骨格筋の病態を見分けるには、アイソザイムが有用です
アイソザイム 国家試験重要ポイント
・CKは2種類のサブユニットからなる2量体の酵素であり、アイソザイムは3種類ある
CKのサブユニットはM(マッスル=骨格筋)とB(ブレイン=脳)の2つがあり、2量体なのでCK-MM, CK-MB, CK-BBの3種類ができます。MMは骨格筋、MBは心筋に多く存在します。(BBは脳ですが、臨床的にはまず見かけません)
・特に心筋梗塞における、CK-MBの上昇が国家試験で狙われやすい
・激しい運動によって、CK-MMが一過性に上昇することもある
AST, ALTの基礎知識
AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ
ASTとALTはセットでよく出てきますが、違いをしっかり区別しておくことが重要です
・測定原理はいずれも340nm(NADH)の減少です
・ASTの共役酵素はリンゴ酸脱水素酵素
・ALTの共役酵素はLD(乳酸脱水素酵素)
チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー
ASTとALTはいずれも肝機能の指標として用いられますが
・ALTの方が肝特異性が高いです
ASTももちろん肝臓に多く含まれていますが、赤血球・心臓・骨格筋・腎臓など他の組織にも多く含まれており、ASTは溶血・心筋梗塞などでも大きく上昇します ※ALTも他組織に含まれているが影響は少ない
ASTのように、細胞や赤血球内に特に多く含まれ、細胞破壊や溶血の影響で上昇する酵素を逸脱酵素と言います(逸脱酵素は他に、LD・CKもあります)
つまり、ASTの上昇があったとしても、肝疾患だけでなく、心筋梗塞や筋疾患、溶血なども疑うべきということになります
そして、実際の診断では他の検査値、腹部エコーやMRIなども行って総合的に病態をつかんでいく、という流れになるわけですね
このように、病態を知るためには、他に関連する検査値も併せて判断することが重要です
アイソザイム
ASTとALTには
- 細胞質型(cytosol)
- ミトコンドリア型(mitocondria)
が存在し、それぞれc-AST, m-ASTなどと表記します
AST・ALTはアイソザイムについてはそんなに出ることはありませんが
この2種類があることは覚えておきましょう
国家試験重要ポイント
他に、いくつか国家試験の選択肢となりそうな情報をまとめます
・ALTの方が半減期が長い
・補酵素としてビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサルリン酸)が必要
補酵素とは酵素の活性に必要な因子で、ビタミンB群にその役割を持つものが多いです
日本臨床化学会(JSCC)による測定では試薬にビタミンB6は含まれていません
このため、ビタミンB6欠乏患者や、透析によって水溶性ビタミンが流れ出ている患者ではAST, ALT活性は低値となります
ここまでの説明で出てきた、“340nmの測定”、“共役酵素” という言葉がいまいちわからない人は、以下の記事を先に読むことをおすすめします!
【臨床検査技師】NADH(340nm)の増加 or 減少を測定する酵素反応の覚え方・勉強法
【臨床化学】共役酵素とは?臨床検査技師国試に出るポイントを解説!
CKの過去問解説
MT66-PM36 日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法で、ヘキソキナーゼとグルコース-6-リン酸脱水素酵素の共役により測定されるのはどれか。
1.CK
2.AST
3.ALP
4.γ-GT
5.アミラーゼ
ヘキソキナーゼとグルコース-6-リン酸脱水素酵素を共役酵素とする測定はどれか、という意味ですから
1.CKが正解になります
MT64-AM40 日本臨床化学会<JSCC>勧告法の試薬中にN-アセチルシステインを含むのはどれか。
1.CK
2.LD
3.ALP
4.ALT
5.アミラーゼ
CKの基礎知識です、酵素活性にチオール基(SH基)が必要→チオール基を持つアミノ酸「システイン」の誘導体であるN-アセチルシステインが試薬に含まれています
答えは1.CK
(覚え方:無理やりですが、CK→シーステイン と連想するとよいかも?)
MT61-PM38 日本臨床化学会〈JSCC〉の勧告法によるCK活性測定試薬に含まれないのはどれか。
1. ADP
2. NADP
3. グルコース
4. クレアチン
5. N-アセチルシステイン
こちらは原理をしっかりわかってないと難しい問題
クレアチンリン酸+ADP→(CKが作用)→クレアチン+ATP
ATP+グルコース→(HKが作用)→G6P(グルコース6リン酸)
G6P+NADP→(G6PDが作用)→NADPH(340 nm)が生成
酵素の活性測定試薬に含まれるのは基質、含まれないのは生成物です
つまり上記の矢印の左側が基質、右側でできた物質が生成物です
このことから、生成物である4.クレアチンは測定試薬に含まれないとわかるのです
生成物は純粋に酵素反応でできた物質ですから、外から加えてしまうと、活性が偽高値のようになってしまうというわけです
MT58-AM38 血清CKについて正しいのはどれか。
1.4℃で保存すると失活しない。
2.甲状腺機能亢進症では高値を示す。
3.男性よりも女性の方が高値を示す。
4.多発性筋炎ではCK-BBが上昇する。
5.急性心筋梗塞ではLDよりも早く上昇する。
CKについての基礎知識問題です
選択肢をしっかり見ていき、知らない情報はインプットです
1.4℃で保存すると失活しない。→失活しないと断定しているので誤りです、4℃でも時間が経てば失活しますし、-20℃以下でも長期保存で失活します
2.甲状腺機能亢進低下症では高値を示す。→原因ははっきりしていませんが甲状腺機能低下ではCK高値となる傾向が臨床ではよくあるようです
3.男性よりも女性の方が高値を示す。→筋肉量の影響を受けるため、男性高値の傾向です
4.多発性筋炎ではCK-BBMMが上昇する。→BBは脳なので明らかな間違いです
5.急性心筋梗塞ではLDよりも早く上昇する。○
心筋梗塞では細胞破壊が起きるため、逸脱酵素が上昇します
早いのがCK(-MB)で、遅いのはLD(1)です
MT57-PM40 CK活性測定(常用基準法)に用いられる共役酵素はどれか。2つ選べ。
- ヘキソキナーゼ
- ピルビン酸キナーゼ
- リンゴ酸脱水素酵素
- 乳酸デヒドロゲナーゼ
- グルコース-6-リン酸脱水素酵素
CKの共役酵素ということで、1,5が正解です
MT54-PM39 急性心筋梗塞で最も早期に上昇するのはどれか。
- クレアチンキナーゼ(CK)
- 乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)
- アルカリホスファターゼ(ALP)
- アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)
- アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
心筋梗塞マーカーで酵素で早期に上昇するのはCKです
ただし、現在はもっと有用な早期上昇マーカーである、H-FABP、トロポニンTなどの測定も行われます
AST/ALTの過去問解説
MT66-PM37 アミノトランスフェラーゼのホロ化に必要なのはどれか。
1.コバラミン
2.ピリドキシン
3.リボフラビン
4.トコフェロール
5.ニコチンアミド
ホロ化とは補酵素と結合した酵素のことです
補酵素がなければ活性化しない酵素があり、補酵素の結合前をアポ酵素、結合後をホロ酵素といいます
すなわち、この問題は「ASTの補酵素はどれか」と言っていて、正解は2.ピリドキシン=ビタミンB6です
MT63-AM44 ミトコンドリア分画にアイソザイムが存在するのはどれか。
1.LD
2.AST
3.アミラーゼ
4.コリンエステラーゼ
5.アルカリホスファターゼ
シンプルな知識問題、ミトコンドリア型のアイソザイムがあるのはAST/ALTです
MT55-PM42 ASTの補酵素として働くのはどれか。
- ビタミンA
- ビタミンB6
- ビタミンC
- ビタミンE
- ビタミンK
MT54-PM38 ASTのホロ化に必要なのはどれか。
- NADH
- マグネシウム
- L-アスパラギン酸
- 2-オキソグルタル酸
- ピリドキサルリン酸
上記2問より、ASTはホロ化に必要な補酵素が重要だということですね
正解はビタミンB6=ピリドキサルリン酸です
まとめ
CKについて
- 測定原理+反応原理など細かい知識まで要求される、これを知っておけば「試薬に含まれるのはどれか」と言った問題にも対応可能
- 共役酵素はHK・G6PD!覚えよう
- アイソザイムはやっぱりCK-MBが大事、心筋梗塞で酵素の中では早期に上昇
AST/ALTについて
- 基礎知識としては、補酵素であるピリドキサルリン酸=ビタミンB6が非常に大事
- 酵素測定以外では、臨床的意義の重要性は高い
まずは実際の過去問で出ている大事なところから覚えていき、模試で経験を積んで、新しい知識をアップデートしていきましょう!!
↓続きの記事はこちらです♪
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