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国試かけこみ寺です!
臨床化学は臨床検査技師国家試験で最も出題数の多い分野であり、苦手な人も多いかと思います
そこでまずはどの酵素から勉強すればよいのか、出題回数が最も多い酵素を調べました!
今回は、臨床化学の中の「酵素」に関する問題で最も出現頻度の高い「LD」の過去問を徹底解説します!
- 過去12回分(56~67)の国家試験で出題された酵素
- LDの基礎知識
- LDに関する過去問解説(12題)
- MT65-AM32 患者血清の LD アイソザイムパターン別冊No. 5を別に示す。考えられるのはどれか。2つ選べ。
- MT64-AM39 LD アイソザイムについて正しいのはどれか。
- MT63-AM40 LDアイソザイム1、2型優位なのはどれか。2つ選べ。
- MT63-PM42 4℃の血清保存で不安定なアイソザイムはどれか。
- MT61-AM39 LDアイソザイムのうち急性心筋梗塞で最も上昇するアイソザイムについて正しいのはどれか。
- MT60-PM38 LD について正しいのはどれか。2つ選べ。
- MT58-PM39 血清LD5(%)が上昇するのはどれか。
- MT57-AM40 乳酸デヒドロゲナーゼ〈LD〉について正しいのはどれか。2つ選べ。
- MT57-PM39 血清LD値が500 U/L (基準範囲120~220)の検体でLDアイソザイム分析を行った結果を図に示す。最も考えられるのはどれか。
- MT56-AM39 LD活性測定で反応速度が低下する原因でないのはどれか。
- MT56-PM40 LDについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- MT56-PM43 LDの補酵素はどれか。
- まとめ
過去12回分(56~67)の国家試験で出題された酵素
酵素に分類される問題は毎年3~4問ほど出題されています(原理や計算問題も含む)
過去12回分(56~67)に出題された個別の酵素の回数を数えてみました!
ALP 7回
LD 12回
CK 5回
AMY 4回
AST+ALT 5回
ChE 2回
(※ 国試かけこみ寺調べ。正確でない可能性があります)
ざっくり数えてみましたが、最も多いのがLDで、年平均約1問は出ているという状況です
ということで、今回はLDの過去問に絞って、しっかり解説をしていきたいと思います!
過去に似たようなことが何回も聞かれていますから、しっかりチェックして大事なポイントを押さえることに慣れていきましょう!
LDの基礎知識
LD:乳酸デヒドロゲナーゼ(=乳酸脱水素酵素)
乳酸(L)+NAD ↔ ピルビン酸(P)+NADH の両変換を行う酵素です
- L→P反応は約pH8.8が至適、現在の酵素測定原理でNADH(340nm)の増加を測定します
- P→L反応は約pH7.2が至適、昔はこちらの測定が行われることもありました
次にLDアイソザイムについてです
アイソザイム
・LDは2種類のサブユニットからなる4量体の酵素であり、アイソザイムは5種類ある
サブユニットというのは、蛋白質を構成するパーツのことです。LDの場合は、HとMというパーツを4つ組み合わせてできているので4量体です。LD1(H4)、LD2(H3M1)、LD3(H2M2)、LD4(H1M3)、LD5(M4)というように、5種類あります。
サブユニットのHはハート=心臓、Mはマッスル=筋肉を表します
臨床的意義として特に重要なのは、LD1とLD5です
- LD1:心臓と赤血球に多い
- LD5:肝臓と骨格筋に多い
この2点は必ず覚えましょう
すなわち、病態としては
- LD1の上昇:心筋梗塞や溶血(※ LD2にも増加が見られる)
- LD5の上昇:急性肝炎、筋細胞の破壊
などが重要な点として挙げられます
他に、LD2,3は白血病などでの上昇があります
国家試験重要ポイント
・LDアイソザイム電気泳動の泳動順
(+)1, 2, 3, 4, 5(-)
陽極側に1 ※存在量は、2>1>3>4≒5の順
・半減期は1が最も長く(約80時間)、順に2,3,4,5(約8時間)で短くなる
・溶血検体でLD1,2上昇(CK, ASTと同様に逸脱酵素)
・4,5型は冷蔵で不安定:冷蔵検体で4,5活性は低下します
上記のような酵素の基礎知識は以下の記事からまとめて読むことができます!
LDに関する過去問解説(12題)
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページで公開している問題を引用しています。また、問題に出てくる画像も同様に引用しています。問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT65-AM32 患者血清の LD アイソザイムパターン別冊No. 5を別に示す。考えられるのはどれか。2つ選べ。
1.急性肝炎
2.心筋梗塞
3.溶血性貧血
4.横紋筋融解症
5.急性リンパ性白血病
まずは電気泳動像を見る時には、必ず+と-が右か左か確認しましょう
左右が教科書と逆になっている、なんてこともあるからです
今回の図では、+が右側ですから、右からLD1になります
バンドが濃くなっているのはLD1とLD2であるといえます
1.急性肝炎ー肝臓に多いLD5が増加します
2.心筋梗塞ー心筋の壊死により、LD1,2が増加します
3.溶血性貧血ー溶血により、赤血球に多いLD1, 2が増加します
4.横紋筋融解症ー骨格筋の破壊によりLD5が増加します
5.急性リンパ性白血病ー悪性リンパ腫や白血病ではLD2,3が優位になると言われます
以上から、答えは2,3ですね!
MT64-AM39 LD アイソザイムについて正しいのはどれか。
1.2量体である。
2.LD4 は0℃で安定である。
3.LD5 は溶血によって上昇する。
4.LD1 の半減期は約8時間である。
5.2種類のサブユニットからなる。
間違いをしっかり訂正していきましょう
1.42量体である。
2.LD4とLD5 は0℃で不安定である。
3.LD51,2 は溶血によって上昇する。
4.LD1 の半減期は約8時間である。
LD1の半減期は80時間程度、LD5は8時間程度です
5.2種類のサブユニットからなる。○
答えは5です
サブユニットとは、酵素を構成するパーツのことです
○量体とは、サブユニットがいくつ含まれているか、を表しています
MT63-AM40 LDアイソザイム1、2型優位なのはどれか。2つ選べ。
1.赤血球
2.肝細胞
3.心筋細胞
4.リンパ球
5.肺胞上皮細胞
これはシンプルな問題です、LD1,2は赤血球と心臓に豊富
答えは、1,3
ちなみに、肝臓はLD5、リンパ球は特にLD3が豊富です(ゆえに、白血病ではLD3の増加が見られる)
MT63-PM42 4℃の血清保存で不安定なアイソザイムはどれか。
1.LD5
2.ALP2
3.c-AST
4.CK-MM
5.唾液腺型アミラーゼ
選択肢にはLD以外の酵素がありますが、4℃(冷蔵)不安定というのは、LD4,5の特徴となります
よって、答えは1番です
MT61-AM39 LDアイソザイムのうち急性心筋梗塞で最も上昇するアイソザイムについて正しいのはどれか。
1. 血中半減期が最も長い。
2. 急性肝炎でも最も上昇する。
3. 4℃保存で最も不安定である。
4. Mサブユニットの4量体である。
5. 電気泳動で最も陰極側に泳動される。
急性心筋梗塞で最も上昇=LD1について正しい文を選べ、となりますね
答えは1です
2~5はLD5の特徴です
MT60-PM38 LD について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.半減期はLD1が最も短い。
2.心筋にはLD1が最も多く含まれる。
3.肝細胞にはLD2 が最も多く含まれる。
4.4つのアイソザイムが知られている。
5.2 種類のサブユニットからなる4 量体である。
最低限覚えるべき基礎知識が詰まった問題です
文章を正しく直します
1.半減期はLD15が最も短い。
2.心筋にはLD1が最も多く含まれる。○
3.肝細胞にはLD25 が最も多く含まれる。
4.45つのアイソザイムが知られている。
5.2 種類のサブユニットからなる4 量体である。○
答えは2,5
MT58-PM39 血清LD5(%)が上昇するのはどれか。
1.肺癌
2.悪性貧血
3.急性肝炎
4.悪性リンパ腫
5.急性心筋梗塞
LD5は肝疾患、もしくは筋疾患を想定すればOKです
よって、答えは3です
悪性リンパ腫はLD2,3の増加、急性心筋梗塞はLD1の増加が想定されます
MT57-AM40 乳酸デヒドロゲナーゼ〈LD〉について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 臓器特異性が高い。
- 4量体として存在する。
- 乳酸とクエン酸を変換する。
- 細胞内濃度よりも血漿中の濃度が高い。
- 急性心筋梗塞ではCKよりも長期間高値を示す。
やや、応用的な知識の問題
1.臓器特異性が高い。
2.4量体として存在する。○
3.乳酸とクエンピルビン酸を変換する。
4.細胞内濃度よりも血漿中の濃度が高い。
LDは細胞内に豊富な酵素で、逸脱酵素といいます、そのため溶血によって血中に増加します。溶血影響の大きい逸脱酵素は他にAST、CKなどがあります。
5.急性心筋梗塞ではCKよりも長期間高値を示す。○
急性心筋梗塞では心筋細胞の壊死(破壊)が起こりますから、逸脱酵素も上昇します
その中で、LD(1, 2)の上昇は最も遅く、CK(-MB型)は早いです
これは半減期の長さと相関しています
MT57-PM39 血清LD値が500 U/L (基準範囲120~220)の検体でLDアイソザイム分析を行った結果を図に示す。最も考えられるのはどれか。
- 白血病
- 急性肝炎
- 溶血性貧血
- 急性心筋梗塞
- 筋ジストロフィー
10年前の問題ですが、基準範囲も書いてくれているし、図にアイソザイムの番号まで書いてくれていて、出題者の優しさであふれていますね
LD5の顕著な上昇ということで、2.急性肝炎が正解です
10年以上前の図が近年改変されて出題されることもありますから、チェックする価値はあります
現在の国試であれば、番号や基準範囲は消されて出題されると思います(右が陰極なのでLD5とわかります)
MT56-AM39 LD活性測定で反応速度が低下する原因でないのはどれか。
1. 溶血
2. pHの変動
3. 酵素の変性
4. 生成物阻害
5. 基質濃度の低下
少し雰囲気の違う問題に感じるかもしれませんが、落ち着いて選択肢を考えましょう
反応速度低下の原因ではないと言っています、選択肢の1.溶血 から見ていくと
溶血が起こると、LDが上昇し活性が上がりますから、反応速度は増加します、よって答えは1
2~4は、全て酵素活性の低下する原因であると言えます
MT56-PM40 LDについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- 半減期はLD1が最も短い。
- 心筋にはLD1が多く含まれる。
- 4つのアイソザイムが知られている。
- 肝細胞にはLD2が多く含まれる。
- 2種類のサブユニットからなる4量体である。
なんと、先程のMT60-PM38とほぼ同じ問題です、LDの基礎知識はやはり押さえておかなくてはいけませんね!
1.半減期はLD15が最も短い。
2.心筋にはLD1が最も多く含まれる。○
3.45つのアイソザイムが知られている。
4.肝細胞にはLD25 が最も多く含まれる。
5.2種類のサブユニットからなる4量体である。○
MT56-PM43 LDの補酵素はどれか。
1. ナイアシン
2. パントテン酸
3. ビタミンB2
4. ビタミンB6
5. ビタミンB12
LDの問題というよりは補酵素の問題です
補酵素とは酵素反応に必要な補助の役割をする物質のことですが
LDでは、1.ナイアシンが答えになります
ナイアシンはNADの元となるビタミンです
LDの反応は、乳酸から水素をとって、水素をNADに移すことで、ピルビン酸とNADHが産生されます
NADは補酵素として、LDの反応に必須なのです
ちなみに選択肢はすべてビタミンB群で、ビタミンB群は多くが補酵素に関連しています
2. パントテン酸ーアセチルCoAやサクシニルCoAなど、CoA(補酵素A)の元となる物質です
3. ビタミンB2(=リボフラビン):NADと似た水素を運搬する補酵素 FADの原料です
4. ビタミンB6(=ピリドキシン):AST/ALTの補酵素であるピリドキサルリン酸の原料
5. ビタミンB12(=シアノコバラミン):欠乏すると悪性貧血を引き起こします
まとめ
こうして過去の問題を見ていると、大事な部分は何度も出ていることがわかります
酵素の勉強が苦手でも、それを基本知識として頑張って覚えてみると点数アップに繋がるはずです!
なかなか覚えられないことはノートにメモして、もう一度この記事を最初から読み直してみるなど、勉強のお役に立てれば幸いです!
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