国試かけこみ寺です!
今回は
- ・血中尿素窒素(BUN)の臨床的意義
- ・国試過去問:計算問題の解説
この2点を解説していきたいと思います!
計算問題は苦手な人も多いとは思いますが
ちゃんと仕組みを理解すれば、計算自体は難しいものではありませんので
まずは記事の解説をぜひ読んで見ていただきたいと思います!
(計算が苦手な人にも理解できるよう丁寧に解説していきます!)
BUNとは?
BUN:blood urea nitrogen =血中尿素窒素
とは、血液中の尿素の中の窒素量を表しています
なぜわざわざ尿素の窒素量を測るのかというと、
検査で尿素を直接測るのは難しく
尿素中の窒素を測る方法が主流だからです
BUNは尿素中の窒素を表す数値ですが
血液中の尿素量の指標になると言えます
(尿素窒素を測ることは尿素を測ることそのものである、ともいえます)
では血液中の尿素量は何を表すのか?
尿素は体内で発生したアンモニアを処理した結果できます
(アンモニアは主にタンパク質を代謝してできます)
このアンモニアの処理経路は尿素回路(オルニチン回路)と呼ばれ
肝臓の細胞で行われます
その後、尿素は尿中に排泄されます
以上のことから、考えられるのは
BUNが上昇する場合
・体内のアンモニア発生が増加している
・腎機能が低下している
簡潔にいうとこの2通りがあるといえます
BUNが低下する場合
・タンパク質の摂取量が極端に少ない=アンモニアができないため
・肝機能の低下でアンモニアが処理できていない
→この場合、アンモニアが高値になる
BUN 検査値の注意点
BUNだけを見てもわからないことが大半です
例えば、BUN低下で肝機能が疑われるのであれば
AST, ALT, γ-GTなどを始めとした検査値も見ますし
BUN上昇で腎機能低下が疑われるのであれば
クレアチニンなど、腎機能の指標を合わせて見ることになります
臨床的意義で重要なものの一つとして
消化管出血があります
消化管出血では、
BUNは上昇しますが
クレアチニンに変化ありません
血液中のタンパク質が腸管から吸収され
多量のアンモニアが発生、処理されてBUNが上昇します
通常 BUNの上昇は腎機能低下が疑われますが
クレアチニンが正常であれば腎機能に問題はないとわかります
このように検査値は複合的な視点で判断しなくてはいけません
それでは、次に国試過去問で出ている
尿素窒素の計算問題について見ていきましょう!
その前に前提知識として
尿素[(NH2)2CO]の分子量は60
この尿素の中に窒素N(=原子量14)が2つあるので
尿素窒素の分子量は28となります
尿素量を尿素窒素量に変換するときは
(28/60)をかければよいとなります
逆に、尿素窒素量を尿素量に変換するときは
(60/28)をかければよいです
MT61-AM37:尿素窒素濃度 42 mg/dL の標準液の尿素濃度に最も近いのはどれか。
ただし、尿素[(NH2)2CO]の分子量は 60 とする。
1. 0.7 mmol/L
2. 1.5 mmol/L
3. 7 mmol/L
4.15 mmol/L
5.70 mmol/L
BUNの計算問題で必ずやるべきことは
・単位のチェック
・尿素から尿素窒素なのか、尿素窒素から尿素なのか
この2点です
まずは、単位のチェック
文章中に出ているのは mg/dL で、選択肢はmmol/Lになっています
まずは文章中の mg/dLを変換して、mg/L としましょう
濃度計算の場合は、まず分母を合わせることが最重要です
文中の尿素窒素濃度 42 mg/dLは
420 mg/ L と置き換えられます
次に、変換すべきは尿素窒素から尿素であることがわかるので
分子量 28を60にする→60/28をかける となります
このことから
420 × 60/28 = 900 mg/ L
ここまでで、文中の標準液には 尿素 900mg/Lがあるとわかりました
選択肢は mmol/Lですから、あとはmg→mmol に直すため
尿素の分子量60で割り算してやればOKですね
900/60 =15 mmol/L
答えは4.となります
この問題の最も引っ掛けられやすいのは
文中の単位と選択肢の単位の分母(dL と L)が違うところです
グラムをモルに変える事から始めてしまうと
最後にdL→L の変換を忘れて、
答えの桁がずれる間違いが最も多いと考えられます
そのため、グラムとモル、以外をまず揃えてしまうのをおすすめします!
MT63-AM38:血清にウレアーゼを反応させたところ17mg/dLのアンモニアが生じた。この血清中の尿素窒素濃度(mg/dL)はどれか。
ただし、アンモニアの分子量を17、尿素<(NH2)2CO>の分子量を60とする。
①7
②14
③21
④28
⑤35
この計算問題はウレアーゼの反応についての知識が必要です
ウレアーゼは尿素を加水分解し、
アンモニアと二酸化炭素にする酵素です
(NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2
ちなみに、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃癌の原因菌として有名ですが、ピロリ菌が胃酸に耐えられるのはウレアーゼを持っているためです。アンモニアを産生して胃酸を中和できるのです。
反応式自体を覚えるのが苦手であれば
ウレアーゼでは1モル 尿素から2モル アンモニアができる
原則、これを覚えましょう!
それでは問題を見ていきますが
・単位のチェック
これはmg/dLで同じですから、とりあえず変換はしなくてよさそうです
最終的に、求めるのは尿素窒素量です
注意が必要ですね
文章をしっかり読みましょう
ウレアーゼを反応させたところ17mg/dLのアンモニアが生じた
17mg/dLのアンモニア(分子量17)は、1mmol/dLのアンモニアといえます
ウレアーゼでは1モル 尿素から→2モル アンモニアができますから
1mmol/dL アンモニアは←0.5mmol/dL 尿素から生じた
といえますね
ここまできて、元の血清に0.5mmol/dL 尿素があることがわかりました
求めたいのはあくまで尿素窒素量になるため
変換をしなくてはいけません
ここで注意点ですが、モルの状態で28/60をかけることはできません
尿素量↔尿素窒素 の変換の掛け算はグラム単位で成立します
そのため、0.5mmol尿素(分子量60)をmgにすると
0.5×60= 30 mg の尿素
これを尿素窒素に変換すると、
30×28/60=14 mg/dL
答えは2.となります!
・単位を揃える
・尿素(60)↔尿素窒素(28)の変換
これらに気をつければかなりシンプルな計算になりますね!
計算問題だからといって、諦めてしまうのはもったいないので
BUNの意義も含めてしっかり学んでいきましょう!
ここまで見ていただいてありがとうございます!
↓第66回国家試験の関連問題です
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