医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和2年2月19日(水)に実施された
の臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT66-AM22:静肺コンプライアンスが上昇するのはどれか
1.肺気腫
2.高度肥満
3.肺線維症
4.気管支喘息
5.脊柱側弯症
肺コンプライアンスとは簡単に言えば
肺の膨らみやすさ、やわらかさ となります
1.肺気腫は肺胞の組織がつぶれ
肺がブヨブヨ、スカスカになってしまうイメージで覚えましょう
そのため、肺気腫は肺コンプライアンスが上昇します
基本的に、
肺コンプライアンスの上昇は肺気腫
これを暗記してしまっていいと思います
逆に、肺コンプライアンスの低下する疾患というのは
肺コンプライアンスの低下=肺が固くなる病気
代表的なものは3. 肺線維症・間質性肺炎ですね
2.高度肥満や、5.脊柱側弯症というのは
肺が圧迫されることで呼吸がしにくくなり
肺コンプライアンスは低下します
↓閉塞性と拘束性の肺疾患についてこちらで復習できます
MT66-AM29:生体で正しいのはどれか
1.血漿蛋白は酸として緩衝作用を示す。
2.赤血球を高張液にさらすと膨張する。
3.成人男性の体重の約 80%は水である。
4.間質液が異常に蓄積した状態を充血という。
5.膠質浸透圧は血中アルブミン濃度に依存する。
この問題を間違ってしまった人は
わからない単語の説明をノートにまとめると良いでしょう
1.血漿蛋白は酸塩基として緩衝作用を示す。
血漿蛋白の半分以上を占めるのはアルブミンです
アルブミンは等電点が約4.9であり、血液のpHは約7.4
タンパク質は
等電点より高いpH溶液中ではマイナス荷電
等電点より低いpH溶液中ではプラス荷電をもちます
このことから、血液中でのタンパク質は基本的にマイナス荷電
マイナス荷電によって、酸のH+を緩衝する(やわらげる)わけですから
塩基としての役割を持っているというのが正しい文章です
2.赤血球を高低張液にさらすと膨張する。
高張液は濃度の高い液体のこと
高張液は浸透圧が高い=水を引っ張る力が強いと言えますので
赤血球は縮んでしまいます
低張液では逆に赤血球が水を吸って膨張します
3.成人男性の体重の約 8060%は水である。
これは一般常識として覚えておくしかないですね
4.間質液が異常に蓄積した状態を充血水腫という。
間質液とはいわゆる組織液のことで
血管やリンパ管などから滲み出た水が組織に溜まっている状態ですね
うっ血性心不全などから水分が肺に溜まってしまう病態、肺水腫などがあります
また、皮下組織に溜まったものは浮腫といいますね
5.膠質浸透圧は血中アルブミン濃度に依存する。
これは正しい文章です
アルブミンの膠質浸透圧によって
組織と血管の水分のバランスが保たれています
MT66-AM31:基質と酵素の組合せでアンモニアが関係するのはどれか。2つ選べ。
1.尿 酸 -ウリカーゼ
2.尿 素 -ウレアーゼ
3.クレアチン -クレアチンキナーゼ(CK)
4.グルタミン酸 -グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)
5.アスパラギン酸 -アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
このような問題は全ての酵素反応を知っていないと解けない
と、思いがちですがそんなことはありません
例えば、ヘリコバクター・ピロリが胃に生息できるのは
アンモニアを産生して胃酸を中和しているから
という話を聞いたことはありませんか?
このアンモニアの産生というのがまさにウレアーゼの作用で
尿素からアンモニア(と二酸化炭素)を産生する酵素なんです
そして、このウレアーゼを検出するピロリ菌の検査が
尿素呼気試験です
これでウレアーゼについてかなりイメージしやすくなりましたね!
ただ単純に酵素反応式を覚えるのではなく、
色々なものと関連付けてイメージしながら覚えてみるのも良いですね
更に勉強できそうな人は
尿素窒素(BUN)の測定、ウレアーゼ法についても
まとめてみるとよいかもしれませんね!
この問題のもう一つの答えは
4.グルタミン酸 -グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)
になるわけですが
これはアミノ酸の代謝から
尿素回路(オルニチン回路)に繋がる
非常に重要な反応です!
アミノ酸の代謝には色々ありますが
アンモニアの産生に関わる脱アミノ化反応は
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが担っています
グルタミン酸→アンモニア+α-ケトグルタル酸
α-ケトグルタル酸(=2-オキソグルタル酸)は
クエン酸回路の中間代謝物でもありますね
このグルタミン酸に関連して、もう一つ知識をつけてしまいましょう
選択肢5にある、AST、セットで覚えるALTについて
AST, ALTはいずれも肝機能の指標となるのは誰もが知っていることですね
では実際のところ、この酵素反応は何をしているのか
AST:アスパラギン酸+α-ケトグルタル酸→グルタミン酸+オキサロ酢酸
ALT:アラニン+α-ケトグルタル酸→グルタミン酸+ピルビン酸
ASTはアスパラギン酸、ALTはアラニンを基質とします
ちなみに昔は
ASTはGOT(グルタミン酸・オキサロ酢酸)、
ALTはGPT(グルタミン酸・ピルビン酸)
と呼ばれていました
これらはいずれも反応に関連する物質の頭文字をとっていますね
このようにアミノ酸は体内で変換を繰り返し
再利用されたり、エネルギーになったりしています
そして、最終的な代謝物としてアンモニアが出てくるということですね
以上をまとめます
・AST, ALTは肝機能の指標である
・ASTはアスパラギン酸を基質としてグルタミン酸とオキサロ酢酸
・ALTはアラニンを基質としてグルタミン酸とピルビン酸
・グルタミン酸はグルタミン酸デヒドロゲナーゼによって脱アミノ化されアンモニアが発生する
・アンモニアは肝臓の尿素回路(=オルニチン回路)で処理される
今回の解説は以上になります!
問題の選択肢をどんどん広げていくことで
知識が繋がり、応用が効くようになっていきます
それでは国試合格目指して、頑張りましょう!
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