医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成29年2月22日(水)に実施された
臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp170425-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT63-AM3 健常成人男性の1日平均原尿量(糸球体濾過量)に最も近い値(L)はどれか。
1. 15
2. 50
3. 150
4. 500
5.1,500
原尿とは、腎糸球体で濾過された血液成分ともいうことができます
濾過されない物質は主に、アルブミン(分子量6万6千)以上の大きなタンパク質です
逆に言うと、それ以下の物質および水分は濾過され原尿となりますが、原尿の99%は再吸収されて血中に戻っていきます
さて、問題の答えの1日の原尿量は、3.150L です
この99%が再吸収、すなわち、残りの1%が尿として排泄されるわけです
そのため1日の尿量平均は1.5Lということになります
MT63-AM5 免疫学的便潜血検査で正しいのはどれか。
1.痔核で陽性とならない。
2.大腸ポリープで陽性とならない。
3.検査前の食事内容制限を必要とする。
4.連続日検査をすると陽性率は上昇する。
5.大腸早期癌のスクリーニングとして 90%の感度がある
免疫学的便潜血検査とは、イムノクロマト法による検査と解釈できます
イムノクロマト法とは毛細管現象を利用した、免疫測定法です
サンプルを滴下するとメンブレン(膜)状を移動し、メンブレンに固定された抗原や抗体に、検体中の目的成分がくっつくと線が浮き出ます
一般的には妊娠検査薬がイメージしやすいかと思います
非常に簡便であることから、POCT(ベッドサイドでできる検査)であり、身近な例ではインフルエンザの抗原検査もイムノクロマト法です
さて、便潜血のイムノクロマト検査は、メンブレン上の抗ヒトヘモグロビン抗体に、ヘモグロビンが反応すると線が出るわけです、以上を踏まえて選択肢を見ていくと
1.痔核で陽性とならない。
いわゆる切れ痔で肛門付近が出血し、便に血がついた場合、陽性反応が出ます。偽陽性で最も多い原因がこれです。
2.大腸ポリープで陽性とならない。
大腸ポリープとは大腸にできたイボのようなもので、非腫瘍性のものもあれば、将来癌病変となりうるものなど様々です。便潜血検査の本質的な目的は大腸からの出血の検出ですから、例え良性のポリープであったとしても癌の可能性を見逃さないことが重要なのです
便潜血検査で陽性になった後には、大腸カメラを行って悪性の病変がないかを精密検査することが重要です
3.検査前の食事内容制限を必要とする。
イムノクロマト法はヒトヘモグロビン抗体を用いますから、食物由来の動物のヘモグロビンなどの影響はないと考えられるため、食事の制限はありません
4.連続日検査をすると陽性率は上昇する。○
連続日検査は、2日法とも言います。これは2日間の便検査をすることで、陽性率が上がるというものです。やはり便や大腸の状態によって出血度合いも変わりますから、2回法が有効です。
5.大腸早期癌のスクリーニングとして 90%の感度がある
癌の進行度や算出方法によって感度は30~90%と大きく変化するようです(参考:国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)
少なくとも、早期癌では出血の見られないこともありますから進行癌と比べるともっと低くなるはずです
便潜血検査については67回にも登場しています
MT63-AM10 遺伝子検査法とその目的の組合せで誤っているのはどれか。
- ノザンブロット法ーDNA断片の解析
- FISH法ー欠失解析
- DNAマイクロアレイ法ー網羅的遺伝子解析
- シークエンス解析ー変異解析
- マイクロサテライトDNA解析法ーキメリズム解析
1.が誤りです
ノザンブロット法はRNA配列の解析法です
また、DNA配列の解析をサザンブロットといいます
そして、タンパク質の解析法がウェスタンブロットです
これらは全て、ゲル電気泳動を行い、膜にブロッティングして可視化するという方法です
※イースタンはありません
2.FISH法(fluorescence in situ hybridization)
fluorescenceは蛍光
in situ とはその場でという意味ですが、その場というのは組織や細胞そのものを意味します
簡単にざっくりいうと、
細胞や組織の遺伝子配列(DNAやmRNA)に蛍光標識して顕微鏡などで観察できるようにする方法です
PCRなどが、抽出したDNAを増幅させるのに対し、FISH法では
組織や細胞そのもののDNAやmRNAを蛍光標識して、蛍光顕微鏡で直に観察することができます
選択肢にある欠失解析とは、ある組織の遺伝子の欠失解析、例えば癌病変などの変異した遺伝子を蛍光顕微鏡で観察できるようにできるパターンなどですね
3.DNAマイクロアレイ法ー網羅的遺伝子解析
まさに選択肢の通りで、マイクロアレイ=網羅的な解析と覚えておきましょう
遺伝子解析のスクリーニングのようなイメージです
4.シークエンス解析ー変異解析
一つ前の問題でも説明したとおり、塩基配列の解析、すなわち変異の解析も可能です
ちなみにとある塩基配列中の変異の頻度が全体に対して1%以上見られる場合、SNP(一塩基多型)と呼びます(まれに見られる突然変異とは異なり、塩基の多様性と表現します)
5.マイクロサテライトDNA解析法ーキメリズム解析
これは国試レベルでは難しいので覚えなくてもいいと思うのですが
マイクロサテライトDNA解析はSTR解析とも呼ばれます
具体的には、親子関係や犯人の特定などの個人識別に用いられたり
臨床では、骨髄移植後の生着率を調べることなどに用いられます
キメリズム(キメラ)とは、ドナーとレシピエントの細胞が混ざって存在するような状態ということです
遺伝子検査は複雑なものが多く、非常に難しく感じると思いますが、少なくともこの問題ではブロッティング法の違いを理解することを問いているのかなと推測します
↓遺伝子検査については以下の記事で過去問解説をしています!
MT63-AM11 患者が訴える症状として誤っているのはどれか。
1.関節痛
2.心雑音
3.発 熱
4.浮 腫
5.めまい
こちらは医学総論の問題です、患者が訴える症状でないということで答えは2.心雑音になります
心雑音がするのですが…、と言ってくる患者さんがいたら怖いですよね
確実に1点ゲットしていきましょう
MT63-AM13 Ⅲ型高脂血症として正しいのはどれか。
1.膵炎の原因になる。
2.アキレス腱黄色腫がみられる。
3.動脈硬化の原因とはならない。
4.トリグリセライドが増加する。
5.アポリポ蛋白 C2 の異常が原因である。
脂質異常症の問題ですが、知識としてはかなり細かいですので解説は一部省略します(国試レベルでここまで覚えなくても…という印象を受けます)
問題の正解は4です。というか、Ⅱa型以外は全てTG上昇します。
あとはⅢ型の脂質異常症については、アポEの異常であるというのを覚えておくと良いと思います
脂質異常症で重要なのはどのリポ蛋白が上昇するかです
Ⅰ:カイロミクロン
Ⅱ:LDL
Ⅲ:IDL
Ⅳ:VLDL
Ⅴ:カイロミクロン+VLDL
※Ⅱ型にはⅡaとⅡbがあり、ⅡbはLDL+VLDLです
↓ゴロ合わせはこちらの記事で解説しています
リポ蛋白(リポタンパク)について、国試レベルの知識をわかりやすく解説!【臨床検査技師】
63回の解説も(一部の問題ですが)、国試レベルで必要な知識を広げて勉強できるように解説していきたいと思いますので、よろしくおねがいします!
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