【第67回臨床検査技師国家試験】PM1, 2, 7, 8, 9の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

令和3年2月17日(水)に実施された

臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp210416-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT67-PM1 イムノクロマト法による便潜血検査について正しいのはどれか。

1.検体は冷凍で輸送する。
2.食事制限が必要である。
3.IgG 感作赤血球を用いる。
4.プロゾーン現象がみられる。
5.上部消化管出血と下部消化管出血の検出感度は同等である

イムノクロマト法とは毛細管現象を利用した、免疫測定法です

サンプルを滴下するとメンブレン(膜)状を移動し、メンブレンに固定された抗原や抗体に、検体中の目的成分がくっつくと線が浮き出ます

一般的には妊娠検査薬がイメージしやすいかと思います

妊娠検査薬のイラスト(陽性)
↑イムノクロマトによる妊娠検査薬のイメージ。灰色の枠はコントロール、赤枠が陽性、2本の線が出れば妊娠の可能性が高いと考えられる。

非常に簡便であることから、POCT(ベッドサイドでできる検査)であり、身近な例ではインフルエンザの抗原検査もイムノクロマト法です

さて、便潜血のイムノクロマト検査は、メンブレン上の抗ヒトヘモグロビン抗体に、ヘモグロビンが反応すると線が出るわけです

改めて選択肢を見ていきましょう

1.検体は冷凍で輸送する。✕

検体は便の懸濁液であり、数日であれば常温保存が可能です

2.食事制限が必要である。✕

基本的にはヒトヘモグロビンに特異的に反応するため、肉や魚などの食物の影響を受けないように作られています

3.IgG 感作赤血球を用いる。✕

イムノクロマトでは赤血球は用いません

4.プロゾーン現象がみられる。○

プロゾーン現象とは、検体中の目的物(抗原や抗体)が過剰となり、偽陰性を生じる現象です。便潜血に限らず、イムノクロマト法など免疫検査全般で見られる現象です

5.上部消化管出血と下部消化管出血の検出感度は同等である。✕

上部消化管は胃や十二指腸、下部消化管は小腸から大腸を指します。上部消化管からの出血は、便になるまでに大きな影響を受けますから、検出できない可能性があります

MT67-PM2 網膜芽細胞腫の原因遺伝子はどれか。

1.ABL1
2.BRCA1
3.EGFR
4.KRAS
5.RB1

網膜芽細胞腫は小児がんであり、RB1遺伝子の異常によって生じます

ちなみに、RB1Rb)は癌抑制遺伝子です

※癌抑制遺伝子とは通常は癌に対して抑制的に働いている遺伝子です。そのため異常が生じると、癌細胞を抑えきれなくなり癌が発症しやすくなります。最も有名ながん抑制遺伝子はp53です

他選択肢の遺伝子について簡単に解説します

1.ABL1

CML(慢性骨髄性白血病)に特徴的な、フィラデルフィア染色体上にあるBCR/ABL 遺伝子のことです

2.BRCA1

BRCA1の異常は乳癌や卵巣癌を引き起こすとされます

ちなみにBRCA1も癌抑制遺伝子です

3.EGFR

EGFRはEGF(上皮成長因子)のレセプターであり、変異が起こると細胞増殖が抑制できなくなり癌が発症しやすくなる、がん遺伝子の一つです。

4.KRAS

KRASもがん遺伝子の一つです。他に、NRAS, HRASというのもあり、3種のRAS蛋白質と呼ばれます。様々な癌の原因遺伝子とされます。

癌遺伝子よりも抑制遺伝子の方が少ないため、上記の癌抑制遺伝子(p53, Rb, BRCA1)はぜひ覚えておきましょう

MT67-PM7 塩基置換により終止コドンが生じる遺伝子変異の種類はどれか。

1.サイレント変異
2.ナンセンス変異
3.ミスセンス変異
4.フレームシフト変異
5.ミススプライシング変異

これらはDNAの塩基の変異を表す言葉です、ざっくりとわかりやすく説明します

1.サイレント変異

塩基置換などの変異が生じても、できるアミノ酸は変わらない場合を意味します。翻訳される蛋白質に変化がないので、サイレントです。

2.ナンセンス変異

これが正解です。終止コドンはナンセンスと覚えましょう。ちなみに、終止コドンはUAA, UGA, UAGの3つです

3.ミスセンス変異

ミスセンスは点変異(塩基一つが変わる)によって一つだけ違うアミノ酸ができる変異です。たった一つのアミノ酸の違いでも蛋白質に異常が生じ得ます。代表的な疾患は鎌状赤血球などです。

4.フレームシフト変異

フレームシフトとは塩基の欠失や挿入によって、3つのコドンの組み合わせがずれてしまい(←これをフレームシフトという)翻訳されるアミノ酸がガラリと変わってしまう変異をいいます。

5.ミススプライシング変異

スプライシングとは、mRNAを作るときに、DNAから必要な部分(エクソンという)だけを抜き出して転写を行うことです(ちなみにいらない部分はイントロンといいます)

このスプライシングする部分を飛ばすなどしてミスしてしまう変異をいいます

 

国家試験レベルでは、ナンセンスとミスセンスの違いが最も頻度が高いのでここだけは覚えておきましょう

  • 終止コドンはナンセンス
  • 点変異がミスセンス

MT67-PM8 ヒトのテロメアについて誤っているのはどれか。

1.染色体を安定化する。
2.染色体両腕の末端領域を指す。
3.テロメラーゼにより短縮する。
4.体細胞では分裂ごとに短縮する。
5.塩基の繰り返し DNA 配列からなる。

  • テロメアは染色体の末端構造のことで、塩基の繰り返しからなり、染色体の端を保ち安定させる役割がある
  • 細胞の老化によって短くなる
  • テロメラーゼという酵素で伸ばすことができる

以上のことから3が誤りです

テロメラーゼは分解する酵素ではなく、テロメアを伸長する酵素です

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MT67-PM9 健常成人の脳脊髄液について正しいのはどれか。

1.色調は黄色である。
2.糖濃度は血漿の約 10%である。
3.蛋白濃度は血清の約 10%である。
4.細胞成分はリンパ球が主体である。
5.クロール濃度は血清より低値である

髄液の非常に基本的な知識問題ですので押さえていきましょう

1.色調は黄色無色透明である。✕

正常で非常に淡い黄色の場合もあります。明らかな黄色をキサントクロミーと言います

この黄色は、赤血球の破壊による間接ビリルビンもしくは高濃度の蛋白由来です

2.糖濃度は血漿の約 10%3分の2である。✕

髄液の糖の基準範囲は40~75mg/dLです

これが血糖値の半分以下、となってくると細菌感染などで消費されていると推測できます

3.蛋白濃度は血清の約 10%である。✕

大事なのは何%という情報ではなく、髄液の蛋白濃度の基準範囲です

髄液の蛋白濃度基準範囲は40mg/dL以下 です

血中の総蛋白が7~8 g/dLであることを考えると、gとmgでそもそも桁が違います

血中の200分の1以下と言えます、感染などが起きると蛋白が上昇します

4.細胞成分はリンパ球が主体である。○

髄液の細胞成分はリンパ球がほとんど、という特徴があります

基準範囲は0~5個 /μL

5.クロール濃度は血清より値である。✕

血中のクロールは 100meq/L、髄液は120meq/L 程度です

髄液クロールの大幅な減少は、結核性髄膜炎に特徴的です

 

国試の1~10問目は、まずは浅く広く知識をつけていくのがおすすめです!

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