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国試かけこみ寺です!
臨床化学のデータの読み方と病態についてシリーズ化して記事を書いております!
臨床化学は多くの人が難しいと感じる科目ですが、丸暗記だけで対応することはかなり難しいです
そのため、なぜこの病気でこの項目が上がるのか・下がるのか、など一度は理由を知っておくと、いざ暗記するときも頭に残りやすくなります
今回は、前回のNa, Kに引き続き、電解質のCl, Ca, P編いってみたいと思います!
↓前回の記事はこちらから
Cl-クロール(クロライド)
基準範囲 覚えやすいように丸めています、基準値は施設により異なる場合があります
- Cl:100~110 mmol/L(=mEq/L)
大体100、と覚えてしまってOKです。100を少し下回ることもあります。
チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー
・ナトリウムと連動することが多い(プラスとマイナスの電荷のバランスを取り合う)
・クロールは酸塩基平衡・AG(アニオンギャップ)などでよく出てきます
アニオンギャップ(AG)は
[Na+] -([Cl–]+[HCO3–])
ナトリウムイオンー(塩化物イオン+重炭酸イオン)
この式から、低クロールではAGが大きくなることがわかります
高Cl:要因とそのメカニズム
・高Naに連動する
・サリチル酸中毒ー国試でたまに出てきます。機序は省略しますが覚えておくとよいです!
低Cl:要因とそのメカニズム
・嘔吐ー胃酸(HCl)を失うため。代謝性アルカローシス。
・アニオンギャップが増大する疾患ー乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、腎不全
アニオンギャップについては以下の記事で解説しています↓
Ca-カルシウム、P-リン
ナトリウムとカリウムのように、カルシウムとリンも互いに負の連動をします
Ca↑ならP↓、Ca↓ならP↑が基本です(※例外あり)
基準範囲 覚えやすいように丸めています、基準値は施設により異なる場合があります
- Ca:8.6~10.0 mg/dL(=4.3~5.0mEq/L)
Caは通常 mg/dLですが、国試ではmEq/L 表記で問題が出ることがあります
※mg/デシリットルなので注意
mEq/L はmmol/Lに価数を掛けたものになります、そして、カルシウムの場合はmEq/Lがちょうどmg/dLの半分になるという特徴があります(Caの分子量が40で価数が2であるため、数字の偶然です)
・P:2.0~4.0 mg/dL
リンの基準値の覚える優先度は低めで大丈夫です
チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー
・腎臓の基本的な働きはNa再吸収、K排泄でしたが、ここにCa再吸収、P排泄も加わります
・Ca↑ならP↓、Ca↓ならP↑が基本です
・ただし、ビタミンD3の欠乏が例外でどちらも低下します(後述)
Ca:カルシウムの基本情報をおさらい
・血中では、イオン型50%、蛋白(アルブミン)結合型40%、その他10%の状態で存在
・アルブミン結合型は、低アルブミンとなると偽低値となるため補正が必要
代表的な低アルブミン疾患:ネフローゼ症候群(糸球体から蛋白流出)、肝硬変(蛋白合成能低下)
・EDTA採血ではキレートされるため、測れない(2価金属全般、Ca, Mg, Zn, など)
・低Ca血症で起きる痺れや痙攣(けいれん)をテタニーという
・甲状腺ホルモンのカルシトニン、副甲状腺のパラトルモンの影響を受ける、同様に骨形成、骨吸収と連動する
↓関連記事はこちら
高Ca、低P:要因とそのメカニズム
・副甲状腺機能亢進症ーパラトルモン過剰、骨吸収促進
・多発性骨髄腫・骨肉腫などの骨破壊が起こる疾患
低Ca、高P:要因とそのメカニズム
・腎不全ーCa再吸収の低下=尿に出ていく、P排泄の低下=体内に溜まる
・副甲状腺機能低下・甲状腺機能亢進ーそれぞれのホルモンの影響
低Ca、低P:要因とそのメカニズム
・ビタミンD3欠乏症ーV.D3の欠乏によって、Ca吸収が低下→Ca濃度を上げようとパラトルモン分泌が亢進する→結果、Pが低下する、Caは吸収できていないので上がらない
高Ca、高P:要因とそのメカニズム
・ビタミンD3中毒ー上記と逆と考えてOK
電解質では特に、Na, K, Caは絶対チェックしておきましょう!
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