【臨床検査技師】NADH(340nm)の増加 or 減少を測定する酵素反応の覚え方・勉強法

臨床化学

今回は臨床検査技師国家試験における

臨床化学の酵素反応の分野について

NADHを測定する酵素反応の覚え方を解説します

2021/7/5 実際の過去問の解説を追加しました!

 

※ NADH+H+という表記もありますが、本記事ではNADHで統一します

※ 酵素反応ではNADPHが使われるものもありますが、NADHとほぼ同じものとして扱います

 

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NADHとは

水素自動車のイラスト

NADHとはざっくりいうと水素を運搬する補酵素です

NAD水素を持たない酸化型

水素を受け取るとNADHという還元型となります

酸素Oを受け取る=酸化

酸素Oが取れる=還元

水素の場合はその逆で、

水素Hを受け取る=還元

水素Hが取れる=酸化

 

これらのことから分かる通り、生体内の水素のやり取り(=酸化還元反応)には必ずと言っていいくらい登場します

(解糖系やTCA回路でも、登場します)

 

NAD自体はビタミンB群である、ナイアシン(≒ ニコチンアミド)から作られます

 

ここからが本題ですが、臨床検査における酵素反応では

酸化還元反応における、NADHの増加または減少を測定するものがあります

そして、NADHの吸収波長は340 nm です(340nmは紫外部測定です)

これは絶対に覚えてください

NADは340 nmに吸収がないため、NADとNADHを区別することができるので、これを測定に応用しています

 

340 nm の増加・減少 というキーワードが出てくれば

NADHのことを聞いているということです

 

NADHの増加を測るのか、NADHの減少を測るのか

酵素反応を全て覚えるのが大変だという場合は

とりあえず、ここから覚えてみても良いと思います

(※ ただし、最終的には酵素反応の原理そのものを覚えなければ得点は安定しません)

 

NADHの増加・減少 測定の覚え方

臨床化学における検査項目で

NADH(340nm)の増加を測定するのは

CK, LD, Glu(グルコース)

 

NADH(340nm)の減少を測定するのは

AST, ALT, ChE, アンモニア、尿素窒素(BUN)

になります

タイトルには酵素反応と書きましたが酵素以外の測定項目も記載しています

 

今回は詳しい酵素反応の原理は省略します

お手持ちの教科書などで確認しながらだと、より理解が深まると思います

 

まずはNADH(340nm)の減少の測定項目を覚える

AST, ALT, ChE, アンモニア、尿素窒素(BUN)

これらの項目はよく見ると共通点がありそうです

これらは肝臓に関連の強い項目です

肝疾患(肝炎・肝硬変など)ではAST, ALT, アンモニアが上昇します

アンモニアが上昇するのは、肝臓でアンモニアを尿素に変換する

尿素回路(オルニチン回路)が働かなくなるからですね

 

上記のことから、尿素窒素(BUN)は肝疾患では低下します

(ちなみに腎臓での排泄も深く関わるため、腎機能が低下すると、排泄できなくなって、尿素窒素は増加です。このときは、他の腎指標、クレアチニンクリアランスなどと合わせて評価します)

ChE:コリンエステラーゼは栄養指標でもあり、肝機能の低下によってChEも低下します

 

これら肝臓に関連の強い項目はNADH(340 nm)の減少を測定します

ただし

他にも、肝機に関連する重要な項目があります

それが、肝臓および胆道の状態を反映する

γ-GT、LAP(ロイシンアミノペプチダーゼ)、ALP(肝型アルカリホスファターゼ)

です

これらの項目は、酵素反応によって発生する

ニトロアニリン(γ-GT, LAP)・ニトロフェノール(ALP、アミラーゼ)の吸光度(約405nm)を測定します

(これらの項目はNADHではなく、ニトロ○○だと覚えればOKです)

 

LDにも肝型アイソザイムがあるじゃないかという声もありそうですが

肝型アイソザイムは電気泳動によってわかるので、酵素活性の測定問題とはまた別の話です

ALPの酵素活性は一般的に肝臓での臨床的意義が強いです

 

  • ALPの酵素活性測定は肝臓の影響を大きく受ける
  • LDの酵素活性は溶血・心筋梗塞などの影響が大きく、臓器特異性は低め(色々な組織に存在する)。アイソザイムを測れば局在がはっきりする。

とざっくり認識しておけばいいかなと思います

 

実践編:臨床検査技師 国家試験 過去問解説

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページで公開している問題を引用しています。問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

MT65-PM37 日本臨床化学会<JSCC>勧告法で吸光度の減少から活性値を求めるのはどれか。2つ選べ

1.CK
2.LD
3.AST
4.アミラーゼ
5.コリンエステラーゼ

吸光度の減少がキーワードです

340nmを測定する項目は、

1.CK
2.LD
3.AST

5.ChE

この中で340nmの減少を測定するのは、3.ASTと5.ChEです

ちなみに、ニトロ○○系は生成物質の吸光度を測定しますので、いずれも吸光度の増加を測定します

  

他に、酵素ではありませんが、ビリルビンの酸化法(ビリルビンオキシダーゼやメタバナジン酸)による測定は、ビリルビン(450nm)をビリベルジンに酸化することで450nmの減少を測定します

MT64-PM40日本臨床化学会<JSCC>勧告法で合成基質が使用されているのはどれか。2つ選べ。

1.CK
2.LD
3.ALP
4.AST
5.γ‐GT

酵素測定における合成基質とはニトロ○○系の測定+コリンエステラーゼを指します

すなわち、γ-GT, ALP, AMY, LAP, ChEを選べばOKです

(ChEは合成基質を用いて、340nmの減少を測定する、ということになります)

 

MT62-AM38 日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法による酵素活性測定で吸光度の減少を測定するのはどれか。2つ選べ。

1. CK
2. LD
3. ALP
4. ALT
5. AST

再びこのパターンです

吸光度の減少は肝疾患をイメージしましょう

4、5が正解です

 

MT62-PM38 日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法による酵素活性測定で可視部測定項目はどれか。

1. CK
2. LD
3. ALP
4. ALT
5. AST

可視部とは400nm-800nmの波長のことです。逆にいうと、可視部でないものは340nmの測定ですよね

340nmを測定する項目は、1、2、4、5です

3.ALPはニトロ○○系で可視部測定です

聞き方は違っても、340nmの測定原理をまず覚えることの重要性がわかりますね!

 

MT60-PM39 日本臨床化学会〈JSCC〉の勧告法による酵素活性測定において可視部測定項目はどれか。2つ選べ。

1.ALP
2.AST
3.CK
4.γ-GT
5.LD

上記と同じ問題ですね!答えは、1.ALPと4.γ-GTです

こうして問題を見てみると、だんだんコツがつかめてきたはずです!

 

まとめ

臨床化学における検査項目で

NADH(340nm)の増加を測定するのは

CK, LD, Glu(グルコース)

 

NADH(340nm)の減少を測定するのは

AST, ALT, ChE, アンモニア、尿素窒素(BUN)

・肝臓に関連の強い項目である

・肝疾患(肝炎・肝硬変など)ではAST, ALT, アンモニアが上昇

・肝疾患でChE、尿素窒素は低下

ただし、肝臓・胆道系のγ-GT、LAP、ALPは測定原理が異なり、ニトロアニリンやニトロフェノールを測定する項目である(=NADHとは無関係)

 

 

臨床化学の専門的な内容ですが、国試勉強の手助けになれば幸いです!

 

↓続けて酵素について勉強したい人、関連記事はこちらです

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