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国試かけこみ寺です!
令和4年2月16日(水)に実施された
第68回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説しています!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp220421-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT68-AM29.糖新生を行う臓器はどれか。2つ選べ。
- 脳
- 肝臓
- 心臓
- 腎臓
- 脾臓
糖新生とはグルコースが欠乏した際などにピルビン酸をグルコースに変換することです
糖新生を行っている臓器は肝臓と腎臓です
ちなみにこの問題は第63回でも全く同じ問題が出ています
問題解説はこちら→MT63-AM34 糖新生を行うのはどれか。
MT68-AM30.糖尿病の診断で糖尿病型判定に用いられないのはどれか。
- HbA1c
- 随時血糖値
- 空腹時血糖値
- グリコアルブミン
- 75g経口ブドウ糖負荷後 2 時間血糖値
糖尿病診断に用いないのは4.グリコアルブミンです
糖尿病型の診断基準は以下です
- 空腹時 :126以上
- 随時 :200以上
- OGTT :200以上
- HbA1c :6.5%以上
黄色の血糖値のいずれか かつ HbA1c が基準値を上回ると糖尿病と診断されます
詳しくは以下の記事でも解説しています↓
MT68-AM31.ケトン体はどれか。2つ選べ。
- 胆汁酸
- アセトン
- アラキドン酸
- トロンボキサン
- 3-ヒドロキシ酪酸
なんと、この問題は前年度の67回でも全く同じ問題が出ています!
リンクはこちら→MT67-AM31
ケトン体とは以下の3つです
ケトン体
アセトン
アセト酢酸
3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸とも)
アセトンとアセト酢酸は覚えやすいですが、3-ヒドロキシ酪酸を見落とさないようにしましょう
MT68-AM32 代謝系と調節酵素の組合せで正しいのはどれか。
1.解糖系 -ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ
2.糖新生 -アセチル CoA カルボキシラーゼ
3.脂肪酸合成 -ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体
4.クエン酸回路 -ヘキソキナーゼ
5.コレステロール合成 -3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル(HMGCoA 還元酵素)
各回路と酵素の組み合わせについて
それぞれの回路には定番の覚えるべき酵素名がいくつかあり、ポイントがあります
1.解糖系は1分子のグルコースから2分子のピルビン酸を生成します
解糖系でチェックすべきは、3つの律速酵素です
- ヘキソキナーゼ
- ホスホフルクトキナーゼ
- ピルビン酸キナーゼ
これら3つは不可逆反応で一方通行、糖新生(ピルビン酸をグルコースに戻す時)には使えません
他にもう一つ、解糖系酵素で重要なものにエノラーゼがあります
エノラーゼを阻害するフッ化ナトリウムが血糖用採血管に用いられることは有名です
2.糖新生の酵素まで覚えるのは国試レベルではマニアックかなと思います
3.脂肪酸合成も国試レベルではかなりマニアックです
国試ではマニアックすぎる知識を捨てていくのも一つの選択です、そのためここでは解説は省略させていただきます
4.クエン酸回路は酵素名が物質名を含むものが多く、物質をゴロで覚えてしまいましょう
クエン酸回路の物質名のゴロは→こちら!
5が正解になります
コレステロールの合成経路もゴロ合わせがあります!
HMG-CoA還元酵素はスタチンという高コレステロール治療薬のターゲットでもあります
これは覚えておくべき酵素かと思います
MT68-AM33. ビリルビン代謝について正しいのはどれか。
- ウロビリンは腸肝循環する。
- 直接ビリルビンは還元されウロビリノゲンになる。
- 間接ビリルビンは腸内細菌により加水分解される。
- δビリルビンは間接ビリルビンにアルブミンが結合している。
- ヘムのポルフィリン環はヘムオキシゲナーゼによって開環される。
※この問題は厚労省の正解は5とされていますが、2の選択肢も正しいのではないかと見解が分かれるところかと思います。
1.ウロビリンは、ウロビリノーゲンが酸化されてできる尿中の黄色の色素を指し、ウロビリノーゲンとは異なります。ウロビリノーゲンは腸肝循環する、といえます。
2.厳密にいうと直接ビリルビンとは、親水性の(=ジアゾ試薬に直接反応する)抱合型ビリルビンおよびδ-ビリルビンを指します。
δ-ビリルビン
δ-ビリルビンのδ(デルタ)とはHPLCで分離した時の分画に由来する。δ-ビリルビンは、抱合型ビリルビンとアルブミンが非酵素的に強固に結合したビリルビンで、長期の胆汁うっ滞などで生成される。血中半減期はアルブミンと同様で、通常のビリルビンよりも非常に長い。
この定義からいうと、直接ビリルビンのうち、抱合型は還元されてウロビリノーゲンになりますが、δ-ビリルビンはウロビリノゲンにはならないといえます。
非常に細かいとは思いますが、厳密には正しくないと言えます。
3.正しい文章とするならば。抱合型ビリルビンは腸内細菌に還元される、となります。
4.δ-ビリルビンは抱合型ビリルビンがアルブミンと結合したものです
5.こちらは文章の通り、正しいです。ポルフィリンはヘムの前駆物質であり、ヘムから鉄原子を除いたものといえます。ヘムが代謝される際に、ヘムオキシゲナーゼによる処理を受け、鉄が除かれると、ビリベルジンとなります。
このように解釈の違いから2は微妙な選択肢ですが、5は明らかに誤りのない正しい文章となりますので解答は5となっています。とはいえ、2の文章も正しいと解釈する人が多いのではないか、ということもまた事実かと思います。
MT68-AM34.酵素法によるカルシウム測定に用いられるのはどれか。2つ選べ。
- α-アミラーゼ
- ヘキソキナーゼ
- ガラクトシダーゼ
- ホスホリパーゼ D
- ピルビン酸キナーゼ
カルシウムの酵素法ということですが、これはカルシウムが反応に必要な酵素を利用して測定しているといえます
このことから、活性にカルシウムが必要な、1.アミラーゼ、4.ホスホリパーゼD が該当します
MT68-AM35 体内の鉄代謝について正しいのはどれか。
1.健常人の総鉄量は約 10 g である。
2.鉄の 1/3 はヘモグロビンに含まれる。
3.鉄はフェリチンと結合し貯蔵される。
4.トランスフェリンは日内変動がある。
5.ミオグロビンは8個の鉄分子を含む。
鉄は体内(血液中)にたくさんあるイメージがあるかもしれませんが、微量元素でありほんのわずかしか含まれません
各選択肢をチェックしていきましょう!
1.健常人の総鉄量は約 10 3~4g である。
2.鉄の 1/3 2/3(60~70%)はヘモグロビンに含まれる。
3.鉄はフェリチンと結合し貯蔵される。正しい○
4.トランスフェリンは日内変動がある。✕ こちらは詳しく解説します
日内変動があるのは、血清鉄であり、朝高夜低となります
血清鉄とは、鉄と結合しているトランスフェリンのことです。鉄と結合していないトランスフェリンのことをUIBC(不飽和鉄結合能)といいます。
血清鉄とUIBCの和が、TIBC(総鉄結合能)≒トランスフェリンの総量、になります。
よってトランスフェリンには日内変動がなく、血清鉄は朝高夜低で日内変動がある、となります
5.ミオグロビンは81個の鉄分子を含む。
ミオグロビンは主に筋肉に含まれ、鉄を1分子結合できます
ちなみに横紋筋融解症などでは血中に流出し、ミオグロビン尿となります
MT68-AM36 芳香族アミノ酸はどれか。
1.リジン
2.アラニン
3.チロシン
4.システイン
5.イソロイシン
アミノ酸分類はゴロあわせで対応可能です、覚え得なのでぜひ覚えてしまいましょう!
芳香族アミノ酸はフェットチーネ
- フェニルアラニン
- トリプトファン
- チロシン
です!
↓こちらの記事で詳しく解説しています!
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