【第63回臨床検査技師国家試験】AM29-34の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

平成29年2月22日(水)に実施された

臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp170425-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT63-AM29 生体の微量成分元素はどれか。2つ選べ。

1.銅
2.リ ン
3.セレン
4.カルシウム
5.マグネシウム

生体の微量元素は出題頻度が高いわけではないですが、シンプルに覚えておけば点が取れる問題です

正解は、1.銅と3.セレンです。

ここでは微量元素を覚えるよりも、まずは身体を構成する元素について整理しておきます

まず、人体を構成する成分として最も多いのは水分、次いでタンパク質です。つまり人体の大部分を占めるのは、酸素(O)、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)と言えます。次にです、骨の主成分はリン(P)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)があります

他、微量元素ではないものにはカリウム(K)、ナトリウム(Na)、イオウ(S)、アルミニウム(Al)があります。Na,Kは血中電解質のメイン。イオウは髪の毛のタンパク質などに多く存在しています。アルミニウムは体内での役割ははっきりしていませんが、数10 mgは存在しています。

一方で、微量元素というのは、数mg以下です。以下の12元素を指します。

微量元素:鉄(Fe)亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、ヨウ素(I)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、セレン(Se)、フッ素(F)

鉄・銅や亜鉛、ヨウ素などは体内での重要な役割を考えると、微量なイメージがないかもしれないので注意が必要です。

この12種類をゴロで覚えるのもなかなかしんどいので、ちょっとした覚え方のコツを紹介します。それは微量元素でないものを先に覚えてしまうこと。

  • 酸素(O)、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)は水とタンパク質だから当然多い
  • ウムがつくものは微量ではない:カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)
  • 上記に加えてイオウ(S)とリン(P)は体内に多い

選択肢から、微量でないものをこのように判定していくとよいでしょう!

 

MT63-AM30 2ポイント法で第2試薬反応後の吸光度 0.100 を検体盲検補正すると 0.095 であった。この検体の第1試薬反応後の吸光度はどれか。

ただし、検体量は 10 μL、第1試薬量は 240 μL、第2試薬量は 50 μL とする。

1.0.005
2.0.006
3.0.024
4.0.030
5.0.150

現在の生化学の測定項目というのは、第1試薬・第2試薬の構成になっていることがほとんどです

第2試薬を添加してからが反応開始ということを頭に入れておきましょう、すなわち第1試薬のみを入れた状態は盲検(Blank)という解釈ができます

と、考えると第2試薬反応後の吸光度 0.100 を検体盲検補正すると 0.095なので、Blankは0.005となりそうですが、第2試薬を入れた段階で体積が増えていることを考慮しなくてはいけません

体積が増えているということは、1ポイント目で測った盲検の吸光度は薄まっているということです

第1試薬を入れた段階の盲検吸光度をXとすると、検体量は 10 μL、第1試薬量は 240 μL、第2試薬量は 50 μL なので

1ポイント目の測定は240+10=250 μL、2ポイント目の測定は250+50=300 μLとなります

すなわち、X*250/300=0.005(体積が増えた分、元の盲検吸光度を薄めて補正する)

X=0.006、正解は2と求めることができます

 

MT63-AM31 Michaelis-Menten 式の初速度分析法で測定可能なのはどれか。

1.ウリカーゼを用いる尿酸の測定
2.ウレアーゼを用いる尿素窒素の測定
3.ヘキソキナーゼを用いるグルコースの測定
4.アシル CoA シンセターゼを用いる遊離脂肪酸の測定
5.コレステロールオキシダーゼを用いる総コレステロールの測定

初速度分析と終点分析について簡単に説明すると、

  • 初速度分析というのは、反応進行中2点間の吸光度を測定し、酵素活性などを求める方法
  • 終点分析というのは、反応が終了し安定してから吸光度測定を行う方法です

ここでは初速度分析と終点分析の難しい解説はこのくらいにして、とりあえず問題を解けるためのアドバイスをお教えします!

初速度分析法で測定できるのは「酵素活性」「ウレアーゼ法によるBUN測定」と覚えましょう

※ここでいう酵素活性はLD, AST, CKなどのことです

つまり、酵素活性以外の検査項目はほとんど終点分析だということです

その中でもウレアーゼ法によるBUNの測定は初速度分析が可能、2.が答えとなります

 

MT63-AM32 アニオンギャップの計算に用いるイオンはどれか。2つ選べ。

1.重炭酸
2.無機リン
3.カルシウム
4.ナトリウム
5.マグネシウム

アニオンは陰イオンカチオンは陽イオンのことです

アニオンギャップ(AG)は
[Na+] -([Cl-]+[HCO3-])
ナトリウムイオンー(塩化物イオン+重炭酸イオン)

で表されます(アニオンとカチオンの差=アニオンギャップ)

このことから、答えは1,4になります

アニオンギャップは代謝性アシドーシスの鑑別の手助けとなる指標です

↓実際にアニオンギャップはどのように使われるのか?についてはこちらの記事で詳しく解説しています!

MT63-AM33 サルコイドーシス患者の血清で高値を示すのはどれか。

1.カリウム
2.クロール
3.カルシウム
4.ナトリウム
5.マグネシウム

サルコイドーシスは国試でよく見かける疾患ですので、病態を理解しておくことが重要です。教科書的には、サルコイドーシスは壊死を伴わない非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を形成する全身性疾患とあります

これだけでは非常に難解に感じると思いますので一つずつ言葉を分解して解釈していきます、

壊死を伴わない非乾酪性→乾酪とはチーズのような、という意味です。乾酪性壊死とは組織が腐って壊死していく状態を表すので、そうではないということです。

類上皮細胞肉芽腫→類上皮細胞とは、上皮細胞のようなマクロファージ、のことです。すなわち、見た目上皮細胞っぽいマクロファージが集まった肉芽腫、と言えます。

以上のことから、サルコイドーシスは全身性炎症によりマクロファージが集まり組織に肉芽腫を作る病気と言えます(一般的に予後は良好)

肺への影響が最も多く見られ、拘束性換気障害を伴うこともあります(拘束性肺疾患の定番は肺線維症、間質性肺炎です)

生化学の検査項目では、アンジオテンシン変換酵素:ACEの上昇が見られます(アンジオテンシン変換酵素は肺に多く存在します)

そして、問題にもある血清で高値になる項目は、3.カルシウムです

カルシウムが上昇する理由は、サルコイドーシスでは活性型ビタミンDが増加し、腸管Ca吸収が過剰となるためとされています(Eur Respir J. 1998; 11: 1015-20.)

サルコイドーシスについての情報を以下にまとめます

  • 非壊死性で全身に類上皮細胞肉芽腫を伴う炎症性疾患
  • 特に肺に見られ、拘束性肺疾患となりやすい
  • ACE上昇、血中Ca高値を伴う

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MT63-AM34 糖新生を行うのはどれか。

1.脳
2.心 臓
3.肝 臓
4.骨格筋
5.脂肪組織

糖新生とは、解糖系の逆反応と言うこともできます

すなわち、ピルビン酸からグルコースを生成するということです

糖新生を行うことができるのは、肝臓腎臓です

例えば炭水化物を取らないような肉食動物(ライオンなど)はタンパク質、アミノ酸を代謝して得られたピルビン酸から、糖新生を行って体内でグルコースに変換し解糖系を行っているというわけです

 

今回の解説は以上になります!

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