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国試かけこみ寺です!
今回は、臨床検査技師国家試験で毎年1~2問は出てくる、腫瘍マーカーについて、過去問の内容を徹底的に見てみました!
腫瘍マーカーは覚えるしかない…とは言ってもがむしゃらに全て覚えるというのも辛いですよね。
- 実際にどの腫瘍マーカーが、答えになる頻度が高いのか
- 実際の問題ではどのような聞き方をしてくるのか?
これらに焦点を当てて、問題を分析し、国家試験で絶対覚えるべき腫瘍マーカー6つを掘り下げていきたいと思います。
(過去問は全て厚生労働省ホームページで公開されているものを引用しています。また、あくまで私的利用の個人研究のため作成したものですので、情報の取り扱いは自己責任でお願いいたします。)
- 結論:絶対覚えるべき腫瘍マーカー6選
- 臨床検査技師国家試験:腫瘍マーカーの過去問
- MT66-PM86 腫瘍マーカーと腫瘍の組合せで誤っているのはどれか。
- MT65-PM80 腫瘍マーカーと対象となる腫瘍との組合せで誤っているのはどれか。
- MT64-PM83, MT57-AM82 臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ。
- MT63-PM83, MT55-AM80 肝細胞癌の腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ
- MT62-AM83 Lewis血液型の影響を受けるのはどれか。
- MT61-AM82 肺小細胞癌に特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。
- MT58-AM83 腫瘍マーカーと癌の組合せで正しいのはどれか。
- MT57-PM82 CA19-9で正しいのはどれか。
- MT56-PM80 膵癌の腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ。
- MT54-AM82 臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。
- まとめ
結論:絶対覚えるべき腫瘍マーカー6選
※これを覚えるだけで点がとれるということではありません
- PSA:前立腺癌
- PIVKA-Ⅱ&AFP:肝癌
- ProGRP:肺小細胞癌
- CA19-9:膵癌、(胆道癌)
- CEA:消化器系+肺
過去問を分析した結果、重要度が高いと思われる6つについて個別に解説していきます
黄色マーカーは「臓器特異性が高いものはどれか?」という問題の答えになることが多いです
なお、腫瘍マーカーは基本的に増加すればその癌である、というものではありません。正常な臓器から検出される場合もありますし、癌以外の疾患で増加することも多々あります。実際には複数の腫瘍マーカーを組み合わせて判断されることも多いです。
測定方法はモノクローナル抗体を利用した、EIA, ELISA, CLIA, CLEIAなどの標識免疫測定がほとんどです。
PSA:前立腺癌
前立腺癌に特異性の高い腫瘍マーカーで出現頻度はかなり高く、絶対に覚えるべきです。
PIVKA-Ⅱ& AFP:肝癌
PIVKA-Ⅱ(ピブカツーと読むことが多い)とAFPは肝癌に特異性が高いです
PIVKA-Ⅱの正体は、肝臓で作られる異常な血液凝固第Ⅱ因子です。ビタミンK(V.K)の欠乏や阻害で上昇します。このことから、抗凝固薬であるワーファリンでも上昇してしまいます。
AFP(α-feto-protein)は元々は胎児(feto)の時にもっている糖蛋白で、胎児性抗原ともいいます。肝細胞癌で強く発現しますが、妊娠などでも上昇の可能性はあります。
ProGRP:肺小細胞癌
ProGRPは肺小細胞癌の特異度と感度に優れるマーカーです。そんなに出現頻度が高いわけではありませんが、個人的に一番忘れがちと思っているので解説しています。
CA19-9:膵癌、(胆道癌)
CA19-9は膵癌だけに特異的というわけではありませんが、国試での出現頻度が非常に高いです。
というのも、CA19-9というのはルイス式血液型(Le)抗原の一種である糖鎖抗原です。このため、日本人の10%程度存在するLe(a-b-)では,癌が発生してもCA19-9は産生されず,腫瘍マーカーとして利用できません(松仁会医学誌46(1):7~11,2007)
こういった背景から、CA19-9の特徴として問われることがあったり、膵・胆道癌での陽性率が高いなど覚える重要度は高いです。
ちなみに、膵癌の腫瘍マーカーは数が多いのですがDU-PAN-2, SPan-1は
膵臓:pancreas なので覚えやすいかと思います。
CEA:消化器系+肺
最後はCEAです。CEAは臓器特異性は低く、胃、大腸、膵、胆道などの消化器系に加え、肺癌で上昇します。そのため、ざっくりと消化器系+肺と覚えると良いと思います。国試では選択肢に必ずと言っていいほど出てきますが、あまり答えにならない(もしくは消去法で選ぶことになる)という特徴があります。
ちなみに、CEAもAFPと同様に糖蛋白質であり、胎児性抗原です。
以上を踏まえて過去問を見ていきます!
上記以外にも、特異性の高いものなどは実際の問題を見ながら解説しますので、できるだけノートにまとめるなどして覚えるようにしましょう。
臨床検査技師国家試験:腫瘍マーカーの過去問
MT66-PM86 腫瘍マーカーと腫瘍の組合せで誤っているのはどれか。
1.CYFRA ―― 肺扁平上皮癌
2.hCG ―― 絨毛癌
3.NSE ―― 肺小細胞癌
4.PIVKA-Ⅱ ―― 肝細胞癌
5.ProGRP ―― 膵癌 肺小細胞癌
☑ CYFRAは肺癌(肺扁平上皮癌)の特異性が比較的高く、選択肢でたまに見かけます
☑ hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は名前の通り絨毛癌ですが、妊娠で上昇し尿中へ排泄されます、これを測るのがイムノクロマト法による妊娠検査薬です。
☑ NSEも肺小細胞癌で合っていますが、他に神経芽細胞腫、褐色細胞腫など神経系の関与する癌でも上昇します(NSEのNはneuron:ニューロン)
MT65-PM80 腫瘍マーカーと対象となる腫瘍との組合せで誤っているのはどれか。
1.CEA ―― 胃 癌
2.SCC ―― 大腸癌 肺扁平上皮癌、食道癌、子宮頸癌
3.CA125 ―― 卵巣癌
4.CA19-9 ―― 膵 癌
5.PIVKA-Ⅱ ―― 肝 癌
☑ 卵巣癌、子宮癌のマーカーにCA125、CA130があります。どちらも数字が大きい…くらいしか特徴がなく覚えるのは後回しになりそうです。
☑ SCCは扁平上皮細胞を表しており、上記赤字の癌のマーカーとなります。
MT64-PM83, MT57-AM82 臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ。
1.CA19-9
2.CEA
3.PIVKA-II
4.PSA
5.SCC
この問題は過去に同じ選択肢で2回出ています。臓器特異性の高さは重要です。
MT63-PM83, MT55-AM80 肝細胞癌の腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ
1.PSA
2.CEA
3.AFP
4.CA19-9
5.PIVKA-Ⅱ
こちらも過去に2回出ています
MT62-AM83 Lewis血液型の影響を受けるのはどれか。
1.PSA
2.AFP
3.CEA
4.CA19-9
5.PIVKA-Ⅱ
ルイス式血液型ということで、CA19-9です
MT61-AM82 肺小細胞癌に特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。
1.CA15-3
2.CEA
3.CYFRA21-1
4.ProGRP
5.SCC
こちらも「特異性の高い」がキーワードになってます
MT58-AM83 腫瘍マーカーと癌の組合せで正しいのはどれか。
1.PSA ―― 膀胱癌 前立腺癌
2.CA125 ―― 乳 癌 卵巣癌、子宮癌
3.CA15-3 ―― 食道癌 乳癌
4.CA19-9 ―― 甲状腺癌 膵癌、胆道癌
5.PIVKA-Ⅱ ―― 肝細胞癌 ○
PIVKA→ビタミンK→肝臓 と即答できると嬉しい問題
MT57-PM82 CA19-9で正しいのはどれか。
- 糖鎖構造に抗原性がある。
- 扁平上皮癌で陽性となる。
- 正常の組織には存在しない。
- 血中濃度はABO血液型に影響される。
- ポリクローナル抗体によって測定される。
10年前の問題ですが、使い回されて似たような問題が出ることは普通にあり得ます。
MT56-PM80 膵癌の腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ。
1.AFP
2.CA19-9
3.CEA
4.PSA
5.SCC
膵癌マーカーは非常に多いですが、上記2つ、とPANがつくものは覚えておきましょう。
CA19-9とCEAは膵癌の検出よりも、化学療法の治療判定などに用いられるようです(Anticancer Res 2005;25:1687─1691.)
MT54-AM82 臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。
- CA125
- CA19-9
- CEA
- PSA
- SCC
PSAは本当に選択肢によくでます。是非覚えましょう。
まとめ
まずはここから覚えよう!(選択肢に出てくる頻度が高いので、他を知らなくても消去法で答えが導ける場合もある)
PSA:前立腺癌
PIVKA-Ⅱ&AFP:肝癌
ProGRP:肺小細胞癌
CA19-9:膵癌、(胆道癌)
CEA:消化器系+肺
・特異性の高さで言えば、他に hCG:絨毛癌 などもある
・CEAは該当する臓器が非常に多いので、選択肢に出てきた場合は後回しにすると良い。他でどうしても答えが見つからなければ消去法で選ぶのもあり。
・AFPとCEAは胎児性抗原でもある
がむしゃらに覚えることも大切ですが、過去の問題を見た上で、重要度の高いものからしっかり覚えていくと安定した得点に繋がります。
腫瘍マーカーは覚えれば確実に点数に繋がりますから、ぜひ頑張ってみてください!
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