【第66回臨床検査技師国家試験】PM85, 86, 87, 88, 89の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

令和2年2月19日(水)に実施された

臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT66-PM85 カラム凝集法の結果 別冊No. 13を別に示す。最も考えられるのはどれか。

1.Ax 型
2.汎血球凝集反応
3.不規則抗体保有患者
4.O 型赤血球の異型適合血輸血後
5.直接抗グロブリン試験陽性患者

第66回臨床検査技師国家試験問題 午後 別冊より転載

カラム法による判定についておさらいしましょう

に沈んでいれば陰性(0)に完全に浮いていれば陽性(4+) が基本です

そして、左の色付きの3つの結果がオモテ検査(患者血球+試薬血清)

右がウラ検査です(患者血清+A1血球 or B血球)

図の結果を左から順に判定していくと

A:4+, B:4+, D:4+, Control:0, A1球: 2+, B球: 2+

  • オモテ検査:AB型, Rh+
  • ウラ検査:O型(ただし凝集が弱い)

ウラ検査の2+に不一致の原因があると考えると、患者血清中の抗体に問題がありそうです

(普通のO型であれば、ウラ検査ではしっかり4+で凝集するため)

1.Ax 型

Ax型は非常に抗原性の弱いA型血球のことです、あくまでA型なので抗B抗体を持ちます

今回の結果には該当しません


2.汎血球凝集反応

汎血球凝集反応とは、原因は様々ですが感染症や血液疾患により、赤血球表面に隠れていた抗原が露出し血清と凝集反応を起こしてしまう現象です

血球側に原因がありますので、今回のウラ検査の凝集には該当しません

 


3.不規則抗体保有患者

不規則抗体がある場合は患者血清中の抗体に原因、すなわちウラ検査に影響を及ぼすはずです

このことから最も考えられるのは不規則抗体です

解答はとなります

 

 
4.O 型赤血球の異型適合血輸血後

O 型赤血球の異型適合血輸血

これはO型でない人に、O型の血球を輸血したという意味です

問のオモテ検査はAB型になっています、ここにO型の血球が混じると、オモテ検査で部分凝集が起こるため、今回は該当しません


5.直接抗グロブリン試験陽性患者

直接クームス試験陽性の意味するところは、生体内で赤血球に何らかの不完全抗体が結合しているということです

このことから患者血球側の問題なのでウラ検査の凝集には該当しません

 

MT66-PM86 腫瘍マーカーと腫瘍の組合せで誤っているのはどれか。

1.CYFRA ー 肺平上皮癌
2.hCG  ー 絨毛癌
3.NSE  ー 肺小細胞癌
4.PIVKA-Ⅱー肝細胞癌
5.ProGRP ー 膵 癌

 

腫瘍マーカーは覚えるしかないシリーズ…ですね

誤りは5になります

 

proGRP肺小細胞癌での特異性が高いです

1~4の選択肢は正しく、出現頻度の高いものなので

覚えるようにしましょう

↓国試に出やすい腫瘍マーカーはこちらの記事でチェックできます!

 

MT66-PM87 発作性寒冷ヘモグロビン尿症でみられる所見はどれか。

1.Ham 試験陽性
2.補体価CH50高値
3.直接 Coombs 試験陰性
4.P 血液型の P 抗原陽性
5.Donath-Landsteiner 反応陰性

 

発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)とは

赤血球に対する冷式の自己抗体ができ、自己免疫性の溶血を引き起こす

この冷式の自己抗体がドナート・ランドシュタイナー抗体D-L抗体)です

低温から37℃に戻すと、自己抗体が補体を活性化して溶血します

またD-L抗体P抗原に対して反応します

P抗原とはP血液型の抗原で、ヒトパルボウイルスB19の受容体です

 

さて、以上のことから選択肢を見ていきましょう

 

1.Ham 試験陽性 ✕

Ham試験は発作性夜間ヘモグロビン尿症の試験です


2.補体価CH50高値 ✕

PCHで補体は溶血反応で消費されるため低下します


3.直接 Coombs 試験陰性 ✕

直接クームス試験は、体内で赤血球に何らかの抗体が感作しているかを調べる試験です

PCHではまさに、低温でD-L抗体が赤血球に感作するわけですから

クームス試験は陽性になります

 

4.P 血液型の P 抗原陽性 ○

P抗原とはP血液型の抗原で、ヒトパルボウイルスB19の受容体です

D-L抗体は抗Pの反応性を持つため4が正解となります

 


5.Donath-Landsteiner 反応陰性 ✕

D-L反応はまさにD-L抗体を検出する方法ですので

抗体を持っていれば陽性となります

 

以下の記事で発作性寒冷/夜間ヘモグロビン 尿症について詳しく解説しています!

 

MT66-PM88 モノクローナル抗体について正しいのはどれか。

1.沈降反応に適している。
2.IgM クラスの抗体は作製できない。
3.リンパ球サブセットの解析に用いる。
4.複数のエピトープに対する抗体である。
5.B リンパ球と T リンパ球のハイブリドーマから作製する。

 

モノクローナル抗体とは

単一のエピトープ(抗体が結合する部位)に対する抗体

つまり、結合部位が基本的に1か所しかないので特異性が高い

B細胞と骨髄腫細胞(=形質細胞腫)を融合させたハイブリドーマから、人工的に作られる

 

対して、自然に作られる抗体はポリクローナル抗体である

(エピトープを複数持つ、細菌などにより抗体を結合しやすくするため)

 

これらを踏まえて選択肢を見てみましょう

 

1.沈降反応に適している。✕

沈降反応は目的のタンパク質などに抗体を結合させ

沈降したところを回収するタンパク質の精製法です

結合部位の多い、ポリクローナル抗体が適しています

 


2.IgM クラスの抗体は作製できない。✕

IgGが多いですが、IgM型のモノクローナル抗体を作ることも可能です


3.リンパ球サブセットの解析に用いる。○

リンパ球サブセットとは、リンパ球の分類のことですね

大きくはT細胞とB細胞の分類、さらにT細胞の中には

CD4+のヘルパーT、CD8+のキラーTなどに分けられます

これを行う手法がフローサイトメトリーです

 

例えば、これを行うには目的のCD4やCD8に

特異的なモノクローナル抗体を用いる必要があります

 


4.複数のエピトープに対する抗体である。✕

これはポリクローナル抗体の説明です


5.B リンパ球と T リンパ球のハイブリドーマから作製する。✕

モノクローナル抗体の作製は、

B細胞骨髄腫細胞(=形質細胞腫)を融合させたハイブリドーマを用います

これは、B細胞の抗体産生能力に、骨髄腫の増殖能を兼ね備えた細胞です

目的の抗体を産生するハイブリドーマのクローンを増やして

モノクローナル抗体を増産します

 

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MT66-PM89 抗 HLA 抗体が原因となるのはどれか。2つ選べ。

1.輸血後 GVHD
2.血小板輸血不応
3.遅発性溶血性輸血副作用
4.臓器移植後の急性拒絶反応
5.輸血関連循環過負荷(TACO)

 

抗HLA抗体とは

移植・輸血・妊娠などで非自己のHLA抗原に感作してできる抗体です

HLA抗原(クラスⅠ)はほぼ全身の有核細胞表面に存在します

有核なので、赤血球にはない。ただし、血小板には存在する

 

これを踏まえて選択肢を見ていきましょう

 

1.輸血後 GVHD ✕

GVHD;graft versus host diseaseとは

移植片 対 宿主 病つまり、移植片(ドナー組織) が 患者を攻撃する病気です

いわゆる移植拒絶反応とは逆の反応です(移植拒絶は患者の免疫が移植片を攻撃する)

輸血後GVHDでは患者の持っているHLA抗体は関係なく、

ドナーのリンパ球が、患者のHLA抗原を非自己と認識することが原因です

 


2.血小板輸血不応 ○

抗HLA抗体を原因とする輸血不応で最も考えやすいのは血小板輸血です

抗HLA抗体を持っている患者に、他者の血小板が輸血され

血小板にはHLA抗原が発現していますから

これを攻撃してしまうことになります

 


3.遅発性溶血性輸血副作用 ✕

遅発性溶血性副作用は、輸血や妊娠によってできた

赤血球に対するIgGを原因とし、二度目以降の輸血などで

できたIgGの抗体価が上昇し時間差で溶血を引き起こします

 

問題の答えとしては抗HLA抗体は関与していないので✕です

 


4.臓器移植後の急性拒絶反応 ○

これは、患者の免疫が移植片(ドナー組織)を攻撃して起こります

原因として患者T細胞が移植片のHLA抗原を攻撃すると考えられます

もう一つ、可能性として

患者の持つ抗HLA抗体が、移植片を攻撃することも考えられるため

問題の答えとしては○になります

 


5.輸血関連循環過負荷(TACO) ✕

TACOとは輸血中~輸血後6時間以内に発症する

急性の呼吸困難を伴う合併症です

原因は、輸血による循環血液量の増加による過負荷

体液量が急激に増え、心肺に負担がかかり起こる症状です

 

 

第66回の国試解説はひとまずここまでとなります!

絶対合格目指して、まだまだ頑張りましょう!

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