医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成29年2月22日(水)に実施された
臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp170425-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT63-AM84 Ⅲ型アレルギー性疾患はどれか。
1.膜性腎症
2.Basedow 病
3.アトピー性皮膚炎
4.自己免疫性溶血性貧血
5.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
アレルギー分類の簡易な見分け方のキーワードです
- Ⅰ型:「花粉症・喘息・蕁麻疹・アトピー」最も身近で耳にする疾患
- Ⅱ型:「溶血と細胞減少」・「バセドウ病と重症筋無力症」
- Ⅲ型:「SLE、腎炎、リウマチ」の3つを暗記
- Ⅳ型:「金属、うるしかぶれ」・「GVHD」
アレルギー分類は一度、自分でまとめるなどして本気を出して覚えてしまうしかありません
上記のキーワードは最低限の見分け方になりますのでよければ参考にしてみてください
以上から選択肢を分類していくと
1.膜性腎症→アレルギーの話で腎炎が出てきたらⅢ型
2.Basedow 病→バセドウはⅡ型(覚える)
3.アトピー性皮膚炎→身近でよく聞くのはⅠ型
4.自己免疫性溶血性貧血→溶血はⅡ型
5.特発性血小板減少性紫斑病(ITP) →細胞減少はⅡ型
正解は1になります
↓復習はこちらの記事からどうぞ!
MT63-AM85 フローサイトメトリで正しいのはどれか。
1.核内 DNA 量を測定できる。
2.酵素標識モノクローナル抗体を用いる。
3.測定器の光源に重水素ランプを用いる。
4.ラテックスビーズなどの人工粒子は測定できない。
5.前方散乱光から細胞の内部構造に関する情報が得られる。
分野としては検査機器の問題ですね、フローサイトメトリは蛍光色素を用いて血球表面のCD抗原などをマーカーし、血球を分離できる機器です
1.核内 DNA 量を測定できる。○正解です、通常であれば表面マーカーを検出することが多いですが、核内DNAに結合する蛍光色素を用いることで測定は可能です
2.酵素蛍光標識モノクローナル抗体を用いる。✕→フローサイトで使用する標識は蛍光色素です
3.測定器の光源に重水素ランプを用いる。 ✕ →フローサイトはレーザー光を用います、重水素ランプは分光光度計で使われます
4.ラテックスビーズなどの人工粒子は測定できない。 ✕ →人工粒子でも測定可能です。具体的にはスタンダード(標準物質)として流すカウント用ビーズなどがあります
5.前方散乱光から細胞の内部構造に関する情報が得られる。 ✕ →前方(Forward)散乱光で大きさ、側方(Side)散乱光で内部構造の複雑さを検出できます。すなわち、リンパ球はFもSも小さめ、顆粒球などはSideが大きくなるという感じです。
機器に関しては、卒業研究などで使っていた人にとってはわかりやすく、使っていない人にはいまいちしっくりこないという問題がありますね
MT63-AM86 ABO式血液型判定で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ウラ検査は血球濃度 10%で行う。
2.オモテ検査とウラ検査を両方行う。
3.カラム法では部分凝集が判定できない。
4.部分凝集がみられるときは亜型の可能性がある。
5.スライド法では判定用抗体滴下後5秒以内に判定する
ABO式血液型の判定操作は基本中の基本ですが、文章の正誤判断になると勘違いをしてしまうこともあり油断は禁物です
1.ウラ検査は血球濃度 103%で行う。✕ 一般的にオモテもウラも3~5%血球です
2.オモテ検査とウラ検査を両方行う。○
- オモテ:患者血球+抗A抗B血清
- ウラ:A球B球+患者血清
3.カラム法では部分凝集が判定できない。✕→以下の図を参照
4.部分凝集がみられるときは亜型の可能性がある。○
5.スライド法では判定用抗体滴下後5秒以内に判定する。✕ →5秒は早すぎです笑
凝集は弱い場合もありますから、2分以内にしっかり判定します
MT63-AM87 患者と供血者の血液型の組合せで赤血球製剤の輸血によって急性溶血反応が起こるのはどれか。
1.患者A型- 供血者O型
2.患者B型- 供血者O型
3.患者O型- 供血者A型
4.患者AB型- 供血者A型
5.患者RhD陰性- 供血者RhD陽性
これは絶対に間違えられない問題ですね
正解は 3.患者O型- 供血者A型 です
O型は抗Aと抗Bの両方を持っていますから、O型からしか輸血できません
O型の赤血球は、A抗原、B抗原がないので理論上は誰に輸血しても溶血は起こらないとされます
RhDに関してですが、Rh-の人に、Rh+の血球を輸血しても、1回目であれば抗D抗体を持っていないので急性の溶血は起こらないと考えられます。ただし、2回目からは抗D抗体が作られているため溶血が起こります。
MT63-AM88 血液製剤とその使用目的で正しいのはどれか。
1.アルブミン製剤は栄養補給を目的とする。
2.新鮮凍結血漿は創傷治癒促進を目的とする。
3.赤血球液は抹消循環系への酸素供給を目的とする。
4.赤血球液と血小板濃厚液の併用は全血の代用を目的とする。
5.血小板濃厚液は手術前患者の血小板数を 10 万/μL 以上にすることを目的とする。
書いてあること自体は難しくないのですが、ぱっと見ると小難しい文章が並んでいるように見えます
こういう時こそ、雰囲気でなくしっかり選択肢の文章と向き合って判定していきましょう
1.アルブミン製剤は栄養補給を目的とする。✕ →アルブミンはたしかに栄養指標蛋白ですが、低アルブミン血症による症状改善が目的になります。
2.新鮮凍結血漿は創傷治癒促進を目的とする。✕→新鮮凍結血漿は凝固因子の補充です
3.赤血球液は抹消循環系への酸素供給を目的とする。○→正しいです。小難しく書かれていますが、赤血球の補充とは、体中に酸素を供給するということです。
4.赤血球液と血小板濃厚液の併用は全血の代用を目的とする。✕→全血の代用は行うべきでないとされます。
5.血小板濃厚液は手術前患者の血小板数を 10 5万/μL 以上にすることを目的とする。 ✕→血小板数の基準は5万です。ちなみに、血小板濃厚液は採血後4日以内に使用し、20℃で振盪保存が必要です。
MT63-AM89 直接抗グロブリン試験の目的はどれか。2つ選べ。
1.不規則抗体の検査
2.赤血球感作タンパクの検査
3.自己免疫性溶血性貧血の検査
4.抗体解離試験の抗体特異性の検査
5.新生児溶血性疾患の母親血清の検査
直接抗グロブリン試験と間接抗グロブリン試験の基本的な見分け方は以下のとおりです
- 直接抗グロブリン試験:患者赤血球に既に結合している抗体を検出する
- 間接抗グロブリン試験:血清中に存在する抗体を検出する
もっと簡単に言うと、どちらも調べたいのは抗体なのですが
- 直接は血球側(に結合している抗体)を調べる
- 間接は血清側(に含まれている抗体)を調べる
これらを踏まえて選択肢を判定していくと
1.不規則抗体の検査→抗体なので間接
2.赤血球感作タンパクの検査→赤血球に感作とあるので、赤血球側を調べる直接
3.自己免疫性溶血性貧血の検査→赤血球に結合している自己抗体を調べる、赤血球側を調べる直接
4.抗体解離試験の抗体特異性の検査→抗体を調べる間接
(赤血球に結合した抗体を解離させ、その解離液中の抗体特異性を調べます)
5.新生児溶血性疾患の母親血清の検査 →母親の血清の抗体を調べる間接。※赤ちゃん側の血球を調べる場合は直接になる。
↓以下の記事でも解説をしていますのでご覧になってみてください!
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