【第63回臨床検査技師国家試験】AM72, 73, 79-83の問題をわかりやすく解説

MT国家試験

医療系国家試験の解説サイト

国試かけこみ寺です!

平成29年2月22日(水)に実施された

臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp170425-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

スポンサーリンク

MT63-AM72 作用機序と抗菌薬の組合せで正しいのはどれか。

1.細胞質膜障害 ーアミノグリコシド系
2.核酸合成阻害 ーグリコペプチド系
3.蛋白合成阻害 ーテトラサイクリン系
4.葉酸合成阻害ー β-ラクタム系
5.細胞壁合成阻害 ーキノロン系

1.細胞質膜蛋白合成障害 ーアミノグリコシド系
2.核酸細胞壁合成阻害 ーグリコペプチド系
3.蛋白合成阻害 ーテトラサイクリン系 これが正解
4.葉酸細胞壁合成阻害ー β-ラクタム系
5.細胞壁DNA合成阻害 ーキノロン系

抗菌薬と作用機序というのは暗記に頼るしかないのが現状です…

ただ、ある程度のコツがありますので気になる方は以下の記事をご覧になってみて、役立ちそうな部分をノートなどにメモしてもらえればと思います!

MT63-AM73 日和見感染症はどれか。

1.梅 毒
2.オウム病
3.腸チフス
4.感染性心内膜炎
5.ニューモシスチス肺炎

日和見感染症とは、免疫力が低下している場合に発症するものです

特に国家試験レベルでは、HIV感染、無γ-グロブリン血症、原発性免疫不全などのような疾患で併発する日和見感染症の知識が問われることが多いです

選択肢の答えは、 5.ニューモシスチス肺炎 です原因菌はPneumocystis jirovecii:ニューモシスチス・イロベチーという真菌です、かつてはカリニ肺炎とも呼ばれました)

他には、カポジ肉腫、サイトメガロウイルス感染症(←どちらもヘルペスウイルスの仲間が原因)

他の真菌では、カンジダ症などを覚えておくと良いでしょう

MT63-AM79 免疫寛容の破綻が発症原因となる疾患はどれか。

1.花粉症
2.関節リウマチ
3.接触性皮膚炎
4.移植片対宿主病
5.血液型不適合妊娠

免疫寛容とは簡単に説明すると、免疫細胞が自己と非自己を認識し、自己を攻撃しないようにする仕組みのことです

1,3,5はいずれも外からの非自己に対する免疫反応です。

(血液型不適合妊娠はRh-のお母さんが、1回目の妊娠でRh+の子を妊娠した時に、抗D抗体ができてしまい、第二子Rh+の場合に、抗D抗体が赤ちゃんのRh+血液を攻撃してしまうといったものです)

4の移植片対宿主病=GVHDは、造血幹細胞移植で、提供者(=ドナー)のリンパ球が患者を攻撃する病気です。つまり、ドナーのリンパ球にとっては、患者の組織が非自己となってしまい攻撃をするのです。

この問題の正解は 2.関節リウマチ です。関節リウマチの原因となるリウマトイド因子(Rf)は自分のIgG(のFc部分)に対する抗体です。すなわち、自己免疫疾患です。

自己免疫疾患は、基本的には免疫寛容の破綻を原因としているということですね。

MT63-AM80 免疫応答で正しいのはどれか。

1.一次反応で IgM は IgG に遅れて出現する。
2.二次反応で IgM は出現しない。
3.二次反応で記憶 B 細胞が生じる。
4.二次反応は初回と異なる抗原を2回目に投与したとき起きる。
5.一次反応より二次反応の方が多くの抗体が産生される

免疫の基礎知識を問う問題です、選択肢に一次反応と二次反応、IgGなどの抗体の話が出ていますので、獲得免疫の応答の話であるとわかります

基本的な流れとしては

  • 1回目の感染、一次反応でまず数日でIgMが先に作られ、1週間頃からIgGが産生される
  • この時に、1度目の感染を記憶しているメモリーTやメモリーB細胞ができる
  • 同一抗原による2回目の感染が起こると、迅速にメモリー(記憶)細胞が反応し、迅速に、かつ多くの抗体(IgM, IgG)を作ることができる

上記を踏まえて選択肢を見ていくと

1.一次反応で IgM は IgG に遅れて出現する。→感染して作られる抗体はIgMが先です

2.二次反応で IgM は出現しない。→出現しないというのは誤りです、一次反応と同程度まで作られることもあります

3.二次反応で記憶 B 細胞が生じる。一次反応の時点でメモリー(記憶)TもBもできます

4.二次反応は初回と異なる抗原を2回目に投与したとき起きる。1回目と同一抗原で起きるのが二次反応です

5.一次反応より二次反応の方が多くの抗体が産生される ○正しい

MT63-AM81 補体で正しいのはどれか。

1.血中濃度は C4 が最も高値である。
2.レクチン経路は獲得免疫に関与する。
3.C3b はアナフィラトキシンとして作用する。
4.B 因子は古典的経路と副経路の両方に関与する。
5.C1 複合体形成にカルシウムイオンを必要とする。

補体についてですが、難度が高めです。補体の仕組み、登場物質をしっかり把握しないといけない問題です。ここではひとまず各選択肢の解説をしていきます

1.血中濃度は C4 C3が最も高値である。→C3, C4は臨床化学の測定項目でもあります。最も濃度が高いのはC3の方です。

2.レクチン古典経路は獲得免疫に関与する。→獲得免疫は抗体を意味しており、抗体が必要な補体経路は古典経路となります。副(別)経路およびレクチン経路は自然免疫のみです。

3.C3b はアナフィラトキシンとして作用する。→アナフィラトキシンはC3a, C4a, C5a(Anaphylatoxinのaと覚えるとよい)のことで、IgEを介さず肥満細胞のヒスタミン放出させることができます。

4.B因子は古典的経路と副経路の両方に関与する。→B因子は副(別)経路のみに登場する物質です

5.C1 複合体形成にカルシウムイオンを必要とする。→○正しい。C1は古典経路のスタートで、複合体の形成にカルシウムが必要です

MT63-AM82 生ワクチンはどれか。

1.麻 疹
2.A 型肝炎
3.B 型肝炎
4.肺炎球菌
5.破傷風トキソイド

答えは 1.麻 疹 になります

ワクチンには大きく分けると、生ワクチン不活化ワクチンがあります。

生ワクチンは弱毒化された菌やウイルスそのものです。

不活化ワクチンは、菌やウイルスを構成する蛋白質の一部などです、さらにその中でも毒素に限定した不活化ワクチンをトキソイドと言います

種類としては生ワクチンのほうが少ないのでこちらから覚えましょう

ゴロは探せば色々とあると思いますので、ここではゴロを使わない生ワクチンの覚え方を紹介します


まず、空気感染を起こす3種、これは絶対に覚えなければいけないです

麻疹・水痘・結核 です(ここはゴロでもOK:麻 酔打った果)

次に、麻疹に名前が似ていてセットになる風疹を覚えます(もちろん感染様式や症状は違います)

最後に、オの音がつく、おたふく(ムンプス、流行性耳下腺炎)、黄熱、ロタウイルス(おた、ロタで音が似ているので意外と思い出しやすい)

※ちなみに上記のうち結核(BCG)だけは菌で他は弱毒ウイルスです


ちょっと独特ですが、自分に合いそうだと思ったら使ってみてください

スポンサーリンク

MT63-AM83 腫瘍細胞で特異的に産生されるのはどれか。

1.NSE
2.hCG
3.SCC
4.CA15-3
5.BCR-ABL 融合蛋白

正解から言うと、5.BCR-ABL 融合蛋白になります

他の選択肢も腫瘍マーカーですが、必ずしも癌細胞特異的というわけではありません。癌でなくとも上昇する可能性があるということです。

BCR-ABL遺伝子とは t(9;22)=9番と22番の染色体での転移で発生し、フィラデルフィア染色体ともいい、慢性リンパ性白血病(CML)の原因遺伝子で、国家試験超頻出の絶対覚えるべき遺伝子変異です

BCR-ABL 融合蛋白 はこの遺伝子変異が起こっていなければ作られない蛋白なので、特異性が極めて高いと言えます

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました