免疫が苦手でもわかる!「補体」をわかりやすく解説

免疫

医療系国家試験に役立つ情報を発信しています、国試かけこみ寺です!

今回は、免疫の中でも、つまづきやすい補体について!

あまり複雑な説明は避け、免疫が苦手な人にもわかりやすく説明していきたいと思います!

スポンサーリンク

【結論】そもそも補体とは・補体の目的は?

補体は血中に存在する、免疫の補助をする蛋白質です

最終的な目的は

菌や細胞の膜に穴を開けることです

この穴を開けることを溶解反応といいます

赤血球の場合の溶解反応を、「溶血」といいます

 

補体の最終目的は菌体(細胞)に穴を開けること(=溶解反応)

溶解をさせるのは、基本的に菌(またはウイルス感染細胞)を破壊するためです

ただし、補体は誤って自分の細胞を傷つけることもあります

特に赤血球に結合した抗体を通じて、補体が活性化され赤血球に穴を開けてしまう状態

これが自己免疫性の溶血です

赤血球の溶解反応を、特に溶血といいます

補体の登場物質

補体が難しいと感じる一番の理由は

  • 登場物質名が多い
  • 3種類の活性化ルート

だと思います

まずはここを整理していきましょう

 

補体に登場するメイン物質は

C1~9 です

(後ほど出てくる副経路のみ、B因子というのが登場します)

基本的に、このC1~9が活性化して、最終的に

膜侵襲複合体 (MAC) を形成することが補体の最終目的です

膜侵襲複合体(MAC)とは

膜に穴を開けるドリルのような役割をもつ。その実態は、補体活性化の最終形態、C5b6789の複合体です。MACが菌体の膜に形成されると、膜が貫通し溶解反応が起こります。

登場物質は、C1~9と意外とシンプルであることがわかりましたが、

いくつかの補体は活性化の過程で、分解されます

この分解産物をC3a, C3bC4a, C4bなどと呼ぶため、登場人物が一気に増えたような気がしてややこしいのです(分解産物のa, b それぞれに別の役割があったりもします)

さきほどのMACを形成する初めのパーツは、C5の分解産物であるC5bです

(※この記事ではざっくりした流れを理解してもらうことが目的ですので、各補体分解産物の細かい役割についてはお手持ちの教科書などでご確認をお願いします!)

補体活性化:3つの経路

補体の最終目的はMAC(≒細胞膜に穴を開けるドリル)を形成することです

電動ドリルのイラスト

MAC=C5b6789の複合体

を形成するまでには、3つのルートがあります

ここも補体が難しいと感じる部分ではありますが、ポイントを押さえれば流れをつかめるはずです!

古典経路

抗体(IgG, IgM)が活性化のスタートになるのが古典経路です

抗体が標的の膜に結合すると、抗体にC1が結合、その後

C1→C4→C2→C3→C5

の順で活性化され、MACを形成します

数字通りの活性化順なら良いのですが、C4が先にくるのがポイントです

別(副)経路

別経路のスタートは、血中に存在するC3b(C3の分解産物)です

このC3bにB因子の分解産物であるBbが結合します

ここでできたC3bBbはさらにC3を活性化させ、C3bを生成

最終的には、C3bが2つとBbが結合した、C3bBbC3bができて、C5を活性化→MACを形成します

登場物質がややこしくて、補体がいやになるところのひとつですね(笑)

なのでここでは、もっと簡単に解釈するため

別経路は血中のC3bとB因子の結合からスタート→C5を活性化してMAC形成

とシンプルに覚えてしまっても良いでしょう

レクチン経路

レクチン経路は古典経路ととても似ています

違うのは、スタートがマンノース結合レクチン(MBL)であること、C1が登場しないこと

マンノースは多くの菌体に含まれる糖の名前です

この菌体の膜表面のマンノースに結合する蛋白質がMBLです

活性化の順番は、レクチン→C4→C2→C3→C5

と、古典経路の抗体+C1がレクチンに置き換わった形となります

補体の非働化

補体の非働化とは

血清に56℃、30分間の処理を行い、熱に弱い補体成分を失活(不活化)させること

非働化の目的は血清の抗体を調べる検査、例えば

  • 凝集反応
  • 溶解反応

を行う時に、補体のせいで血球や細胞が壊れることを防ぐためです

抗体のことを調べたい場合は、補体は邪魔になるということですね

ちなみに、抗体は56℃では失活しないため、補体のみを不活化することができます

56℃で失活する熱に弱い補体を易熱性成分といいます

易熱性の補体は、C1, C2, C5, C8, C9, B因子 になります、以下のゴロで覚えましょう!

働かない人2号はクビ

働かない:非働化(56℃で失活=易熱性)

2号はクビ(2,5,8,9,B)

 

検査だけではなく、実験レベルの細胞培養などの際にも、細胞の栄養として用いる血清を非働化してから培地に添加するのが一般的です。

 

スポンサーリンク

まとめ

  • 補体の目的は、菌や感染細胞に穴を開け溶解反応を起こすことである
  • 登場物質はC1~9(とB因子)、各補体の分解物をC3a, C3bなどと小文字で表現する
  • 穴を開けるドリルに相当するのが、C5b6789の複合体=MAC(膜侵襲複合体)

3つのルートについて

古典経路

  • 活性化のスタートが抗体(IgG, IGM)
  • 抗体にC1結合→C4→C2→C3→C5の順で活性化され、MACを形成

副(別)経路

  • スタートは、血中に存在するC3b(C3の分解産物)
  • C3bにB因子の分解産物であるBbが結合、最終的にC3bBbC3bがC5を活性化させ、MAC形成

レクチン経路

  • 古典経路と似ている
  • スタートがマンノース結合レクチン(MBL)であり、C1が登場しない
  • マンノースは菌体を構成する糖であり、そこに結合する蛋白質がMBL
  • 活性化順は、レクチン→C4→C2→C3→C5

補体の非働化について

  • 血清に56℃、30分間の処理を行い、熱に弱い補体成分を失活(不活化)させること
  • 目的は、抗体を調べる検査(凝集反応・溶解反応)で補体の影響を失くすため

 

以上、補体についての基礎的なまとめでした!

この記事を読んだあとに、教科書をもう一度見てみると、きっとより理解が深まることと思います。

ここまで読んで頂きありがとうございました!

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました