医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成30年2月21日(水)
に実施された
第64回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
- MT64-PM79 補体の副経路の構成要素はどれか。2つ選べ。
- MT64-PM80 炎症性サイトカインはどれか。2つ選べ。
- MT64-PM83 臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ。
- MT64-PM85 補体のコールドアクチベーション(寒冷活性化)で正しいのはどれか。2つ選べ。
- MT64-PM86 不規則抗体スクリーニングで抗 E と抗 c が検出された患者の Rh 血液型はどれか。
- MT64-PM87 1989 年に検査が行われるようになり、日本での輸血後肝炎の減少に大きく貢献した検査項目はどれか。
- MT64-PM88 患者の間接抗グロブリン試験による不規則抗体スクリーニングの反応結果の写真別冊No. 12Aとパネル血球のアンチグラム別冊No. 12Bを別に示す。考えられる不規則抗体はどれか。
MT64-PM79 補体の副経路の構成要素はどれか。2つ選べ。
1.C1
2.C2
3.C3
4.C4
5.C5
問題の答えを先に言ってしまうと、3,5になります
補体とは菌に対する自然免疫のひとつです
補体の経路は3種類あります
- 古典経路
- レクチン経路
- 副経路
今回は詳細は省きますが、古典経路とレクチン経路はスタートが少し違うけれどもほぼ同じ経路を辿ります
具体的には、
古典経路は抗体の結合をきっかけにC1→4→2→3→56789という順番で補体が反応していきます
古典経路はC1からスタートします
レクチン経路はC1の代わりにレクチンというタンパク質がスタートで登場し
その後は古典経路と同じ反応を辿っていきます
一方で、副経路というのはC3→56789、という反応になっています
いずれの経路も最終的な目的はMACという複合体を作り
菌の細胞膜に穴を開けて攻撃することです
MT64-PM80 炎症性サイトカインはどれか。2つ選べ。
1.インターロイキン-3 IL-3
2.インターロイキン-4 IL-4
3.インターロイキン-6 IL-6
4.インターロイキン-10 IL-10
5.腫瘍壊死因子-α TNF-α
炎症性サイトカインは覚えるしかないというのが現状です
主な炎症性サイトカインは
IL-1,6,8 と TNF-α
・ヒーローは(168)TNFアルファ
・TNFα+いろは(168)
など無理矢理でも覚えてしまいましょう!
MT64-PM83 臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ。
1.CA19-9
2.CEA
3.PIVKA-II
4.PSA
5.SCC
腫瘍マーカーはその名の通り、がんで増加するマーカーのことですが
臓器特異性が異なります
この中で特異性が高いのは
・PIVKA-Ⅱ:肝細胞癌
PIVKAとはビタミンKの阻害によって誘導される異常タンパク質のことで、肝細胞癌で上昇します
また、ビタミンKの阻害という点から、抗凝固薬であるワーファリンでも上昇します
・PSA:前立腺癌
prostate specific antigen:前立腺特異抗原
の名前の通り、前立腺の特異性が高い腫瘍マーカーです
MT64-PM85 補体のコールドアクチベーション(寒冷活性化)で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.HCV 抗体が関連している。
2.C3 蛋白濃度は低値である。
3.C4 蛋白濃度は低値である。
4.血清補体価CH50は正常である。
5.クリオグロブリンが関連している。
補体のコールドアクチベーションとは、血清を室温よりも低温に置いた場合に、補体の古典経路を活性化してしまうことです
その主な原因がクリオグロブリンや、肝疾患によるものです
クリオグロブリンとは低温で凝固するグロブリンのこと。異常な形質細胞が作り出すM蛋白であったり、C型肝炎ウイルスに関連して出現するなどのパターンがある。
これらのことから、答えは1,5になります
補体の蛋白濃度に影響するのではなく、活性の低下を招きます
2と3はC3,C4は濃度正常・活性低下
4はCH50(血清の補体価) の低下、が正しい文章となります
MT64-PM86 不規則抗体スクリーニングで抗 E と抗 c が検出された患者の Rh 血液型はどれか。
1.CCDEE
2.CCDee
3.CcDEe
4.ccDEE
5.ccDEe
Rh式血液型に対する不規則抗体では、抗D抗体は通常持っていません
D抗原があるかないかは、Rhプラス、Rhマイナスで表しますね
抗D抗体ができる可能性があるのは、Rhマイナスの人がRhプラスの血液に感作した場合
国試でよく出題されるパターンにRh不適合妊娠があります
Rhマイナスのお母さんが、Rhプラスの赤ちゃんを妊娠する場合です
↓以下の記事でわかりやすく解説しています
C,c およびE, e はヘテロがありうるので
遺伝子型CC=抗c抗体
遺伝子型cc=抗C抗体
遺伝子型Cc=抗c抗体,抗C抗体
となります(E, eも同様です)
問題文では抗Eと抗cということで
2.CCDee が答えとなります
MT64-PM87 1989 年に検査が行われるようになり、日本での輸血後肝炎の減少に大きく貢献した検査項目はどれか。
1.HAV 抗体
2.HBs 抗原
3.HCV 抗体
4.HEV 抗体
5.サイトメガロウイルス抗原
輸血による肝炎といえばC型肝炎とB型肝炎ですね
HCV抗体の検査を行うことによって、輸血による肝炎が減少しました
また、B型肝炎に関しては検査を行うのはHBs抗体となります
B型肝炎に関する抗原抗体の臨床的意義については
↓こちらの記事で詳しく解説しています
MT64-PM88 患者の間接抗グロブリン試験による不規則抗体スクリーニングの反応結果の写真別冊No. 12Aとパネル血球のアンチグラム別冊No. 12Bを別に示す。考えられる不規則抗体はどれか。
1.抗 C
2.抗 D
3.抗 E
4.抗 Jka
5.抗 M
まずは
カラム法による判定についておさらいしましょう
下に沈んでいれば陰性(0)、上に完全に浮いていれば陽性(4+) が基本です
Ⅰが陰性、Ⅱが陽性、Ⅲが陰性であるとわかります
次にNo12.Bのアンチグラムを確認していきます
Ⅰ、Ⅲが陰性のため、Ⅰ、Ⅲに含まれている抗原を塗りつぶしていきます
ここから縦のラインで塗りつぶされていないもの、すなわち抗E抗体の可能性が最も高いと言えます
コメント