医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和3年2月17日(水)に実施された
臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp210416-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT67-AM34 糖代謝について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ソマトスタチンはインスリン分泌を促進する。
2.インスリン抵抗性はインスリン分泌が低下した状態である。
3.C-ペプチドとインスリンは1:2の分子数比で放出される。
4.糖新生系はピルビン酸からグルコースを新生する代謝系である。
5.ジペプチジルペプチダーゼDPP-4はインクレチンを分解する。
やや難しい問題です
1.ソマトスタチンはインスリン分泌を促進抑制する。✕
ソマトスタチンの分泌場所は複数あります
- 膵臓のランゲルハンス島 δ(デルタ)細胞
- 胃の幽門部・十二指腸
- 視床下部
ソマトスタチンの役割は、下記のホルモン分泌を抑制することです
- インスリン、グルカゴンの分泌抑制
- セクレチン、ガストリン、胃酸分泌抑制
- 成長ホルモンの分泌抑制
※セクレチンは胃酸の中和に働くホルモン、ガストリンは胃液分泌の促進ホルモンです
2.インスリン抵抗性はインスリン分泌が低下した状態である。✕
インスリン抵抗性は言い換えると、インスリンが効きにくい状態、ですから
分泌が低下しているわけではありません
インスリン抵抗性の増加が2型糖尿病、インスリン分泌の低下が1型糖尿病です
また、インスリン抵抗性の増加=インスリン感受性の低下、と言い換えることもできます
3.C-ペプチドとインスリンは1:21の分子数比で放出される。✕
インスリンは、プロインスリンという前駆体が分解されて生成されます
この時にできる片割れがC-ペプチドで、生理活性はありません
C-ペプチドは純粋に体内で作られたインスリンと1:1の量でできるため、インスリン注射などの影響を受けません
正解は4,5です
4.糖新生系はピルビン酸からグルコースを新生する代謝系である。○
糖新生は肝臓や腎臓で行われます
5.ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)はインクレチンを分解する。○
インクレチンはインスリンの分泌を促進するホルモンの総称で、間接的に血糖値を下げるホルモンだと言えます
これを抑制するための分解酵素がDPP-4です
ちなみに糖尿病の患者にDPP-4阻害薬を使い、インクレチンの分解を阻害するという療法があります
MT67-AM35 無機質と結合蛋白質の組合せで正しいのはどれか。
1.鉄 ートランスサイレチン
2.銅 ー α2-マクログロブリン
3.亜 鉛ー セルロプラスミン
4.カルシウムー フェリチン
5.マグネシウムー アルブミン
正しいものに直していきましょう
※(MG:マクログロブリン)
1.鉄 ートランスフェリン
2.銅 ー セルロプラスミン(一部アルブミン、極一部にα2MGもあるが今回は正答とされていない)
3.亜 鉛ー アルブミンとα2MG
4.カルシウムー アルブミン
5.マグネシウムー アルブミン ○正しい
重要な情報と、抜き出して補足情報をまとめると
- トラスフェリンが輸送するのはFe3+ を2分子
- セルロプラスミンは銅を運搬するが、鉄代謝にも関与
- アルブミンは多くの金属と結合できる
- カルシウムは50%がアルブミンと結合、アルブミンが低値になると偽低値となる
MT67-AM36 生体内で炎症時に減少する蛋白質成分はどれか。
1.α1 -アンチトリプシン
2.α1 -酸性糖蛋白
3.ハプトグロビン
4.トランスフェリン
5.フィブリノゲン
炎症時に減少する蛋白質は、
- アルブミン
- トランスフェリン
- トランスサイレチン
があります
一方で、炎症時に増加する蛋白質を、急性相反応蛋白といいます
- CRP
- フィブリノゲン
- ハプトグロビン
- α1-アンチトリプシン
- α1-酸性糖蛋白(アシドグリコプロテイン)
このあたりが代表的です
特に、CRPは半減期が1日未満と短く、炎症で急激に上昇し、炎症が治まると早期に下がってくるため指標としてよく使われます
↓血清蛋白の基本情報は以下の記事でまとめています
MT67-AM37 ビリルビンの極大吸収波長nmはどれか。
1.260
2.340
3.450
4.540
5.570
答えは 450 nmです
ビリルビンの吸収波長は覚えなければならない波長の一つです
ビリルビンはビリベルジンが還元されることで生成されます
つまり、酸化するとビリベルジンに戻ってしまいます
これを利用した測定がビリルビンの酸化法です
ビリルビンの酸化法には酵素法(ビリルビンオキシダーゼ)と化学法(バナジン酸酸化法)がありますが、どちらも原理は一緒です
ビリルビンを酸化することでビリベルジンに戻し、450 nm の減少を測定します
↓ビリルビンの基本事項はこちらでチェック!
MT67-AM38 細胞内液に含まれるイオン(mEq/L)で最も多いのはどれか。
1.Cl–
2.HCO3-
3.HPO42-
4.Mg2+
5.Na+
細胞内に多いイオンで覚えるべきは3つです
- K+
- Mg2+
- HPO42-
細胞外に多いイオンは
- Na+
- Cl–
- HCO3-
国試レベルでは上記を覚えておけば十分です
↓電解質の関連記事です
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