医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和4年2月16日(水)に実施された
第68回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説しています!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp220421-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT68-AM70.β-ラクタム系抗菌薬でないのはどれか。
① メロペネム
② セファゾリン
③ ピペラシリン
④ セフォタキシム
⑤ レボフロキサシン
βラクタム系を覚えるポイントは2つです!
- ペニシリン系:○○シリン
- 語尾にムがつく:セフェム系、モノバクタム、カルバペネム系
ただし、セフェム系の抗菌薬は、セフ○○○ と名のつくものが多いです
これらを踏まえて見ていけば非常に簡単な問題です
① メロペネム
② セファゾリン
③ ピペラシリン
④ セフォタキシム
⑤ レボフロキサシン
ということで、βラクタムでないのは、5になります
○○キサシンはニューキノロン系になります!
↓抗菌薬についてもっと詳しく勉強したい方はこちらを参照してください!
MT68-AM71.感染経路が空気感染である病原体はどれか。2つ選べ。
① Measles virus<麻疹ウイルス>
② Mycobacterium tuberculosis
③ Mycoplasma pneumoniae
④ Nisseria meningitides
⑤ Rubella virus<風疹ウイルス>
空気感染といえば、麻疹・水痘・結核です
(麻疹・水痘はウイルスですが、結核は細菌です)
結核菌の学名をちゃんとわかっているかどうか、という知識も問われています
答えは1,2ですね
MT68-AM72.微生物の分類について正しいのはどれか。2つ選べ。
① 原虫は真核生物である。
② 細菌は真核生物である。
③ 真菌は原核生物である。
④ リケッチアは真核生物である。
⑤ ウイルスは原核生物、真核生物のどちらにも分類されない。
微生物の分類について、非常に基本的な知識ですので一般常識と思って覚えましょう!
まず、原核生物は細菌、
真核生物はそれ以外です、具体的には、真核生物は真菌、原虫(寄生虫)などです
① 原虫は真核生物である。○
② 細菌は真核生物である。✕
③ 真菌は原核生物である。✕
④ リケッチアは真核生物である。✕ リケッチアも細菌なので原核です
⑤ ウイルスは原核生物、真核生物のどちらにも分類されない。○
ウイルスは非常に特殊な存在で、分類自体がされていません
MT68-AM79.IgEについて正しいのはどれか。
① J鎖を持つ。
② 補体を活性化する。
③ 2つのサブクラスがある。
④ 分子量は約900,000である。
⑤ H鎖の定常部ドメインは4個からなる。
IgEについて問うというのはかなりマニアックなように思えますが、
実はメジャーなIgG,A,Mの役割と特徴をしっかり理解できていれば解ける問題です。
①J鎖というのは、IgMの5量体やIgAの2量体を形成するJoint部分です。
②抗体で補体を活性化するといえば古典経路であり、これはIgGの役割です
③サブクラスを2つもつのはIgAです、IgGは4つあります。サブクラスとは、IgAやIgGを更に細かく分類したものです。国試レベルではIgAとIgGのサブクラスの数を覚えればOKです。
④分子量が90万はIgMです。抗体の中で一番大きい。IgGは15万。
以上のことから、⑤が余ります
IgEの定常部ドメインが4個である、というのは(国試レベルでは)覚えなくてもよいかと思います
1~4は定番知識ですので、これらを覚えておけば消去法で解ける、という問題でした
MT68-AM80.補体のC1成分について正しいのはどれか。
① 易熱性成分である。
② 走化性因子として働く。
③ 別経路の活性に関与する。
④ 活性化にはMg2+が必要である。
⑤ 補体成分の中で血清中の濃度が最も高い。
こういった問題を機に補体の各成分の役割をまとめるとよいでしょう
重要度が高いのはC1, C3, C4, C5です
まずは選択肢を見ていきます
① 易熱性成分である。○ これが正解で、定番知識になります
補体の易熱性成分はC1, C2, C5, C8, C9, B因子です
易熱性とは56℃30分で失活する熱に弱いタンパク質です(抗体などのタンパクは失活しません)
易熱性成分を失活させることを、非働化といいます
② 走化性因子として働く。✕ 好中球の走化性を亢進するのはC5aです(ややマニアック知識)
③ 別経路の活性に関与する。✕ C1が関わるのは古典経路のみです
④ 活性化にはMg2+が必要である。✕ 細かいですが大事な知識
C1の活性化にはCa2+が必要です、それ以外(C4, C2, C3, B因子)にはMg2+が必要
⑤ 補体成分の中で血清中の濃度が最も高い。✕
血中濃度が最も高いのはC3, 次がC4、これを覚えればOKです
補体はその仕組みを理解するのもなかなか大変です。古典経路、別経路、レクチン経路の3つがそもそもわからん!という人は以下の記事を参考にしてください!
MT68-AM81.血清中にMタンパクが認められる疾患はどれか。
① 慢性肝炎
② Basedow病
③ 骨髄異形成症候群
④ 原発性マクログロブリン血症
⑤ 全身性エリテマトーデス
M蛋白とは、多発性骨髄腫もしくはマクログロブリン血症によって出現するモノクローナル抗体のことです(ということで答えは4になります)
国家試験で最も重要なM蛋白がベンスジョーンズ蛋白(BJP)です
ベンスジョーンズ蛋白の実態は、先に上げた病気でできたモノクローナル抗体の軽鎖(κ型、λ型)です(低分子であるため、尿中に出現する)
BJPには60℃で凝固し、100℃で再溶解するという特徴があります
MT68-AM82.免疫担当細胞について正しいのはどれか。
① 好塩基球は貪食能を持つ。
② NK細胞はIFN-γを産生する。
③ 好中球は遅延型過敏反応に関与する。
④ Th2細胞は主に細胞性免疫に関与する
⑤ CD4陽性T細胞はMHCクラスⅡを発現する。
基本的な免疫の知識です、地道に覚えていく必要がありますね
各選択肢を見ていきましょう
① 好塩基球は貪食能を持つ。✕
貪食能を持つのは、好中球やマクロファージです
② NK細胞はIFN-γを産生する。○
IFN-γはNK細胞、Th1細胞などが分泌するサイトカインです
IFN-γの最も主要な役割は、マクロファージの殺菌能亢進です
他に、抗原提示細胞(マクロファージ、B細胞、樹状細胞)を活性化し、結果的にT細胞を活性化することなどがあります
③ 好中球は遅延型過敏反応に関与する。✕
遅延型過敏反応はⅣ型アレルギーと同義です。Ⅳ型アレルギーはT細胞が関与しており、アレルギー反応までに時間がかかるため遅延型と呼ばれます。
④ Th2細胞は主に細胞液性免疫に関与する
まず、Th細胞とはヘルパーT細胞の中の更に細かい分類のことです
国試レベルではTh1, Th2, Th17が存在すると覚えておきましょう
Th1は細胞性免疫の促進
Th2は液性免疫を促進します
液性免疫とは抗体産生による免疫のことで、主役はB細胞ですが、そのB細胞の抗体産生を促進させるのがTh2細胞の分泌するIL-4やIL-5になります。結果的に液性免疫促進に働くと言えるのです。
Th1が分泌するのは、IFN-γであり、細胞性免疫の促進に働きます
⑤ CD4陽性T細胞はMHCクラスⅡを発現する。
MHCとはヒトの場合、HLAと同義です。MHCにはクラスⅠとクラスⅡが存在しますので違いをしっかり覚えておきましょう
クラスⅠ:全ての有核細胞と血小板に発現する(赤血球にはない)
クラスⅡ:抗原提示細胞(樹状細胞、B細胞、マクロファージ)に発現する
クラスⅡは抗原提示細胞、クラスⅠは赤血球以外の細胞はほぼ持っている、と覚えておくと良いでしょう
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