医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和4年2月16日(水)に実施された
第68回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説しています!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp220421-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT68-AM83.CRP産生に関与するサイトカインはどれか。
① IFN-γ
② IL-4
③ IL-6
④ IL-18
⑤ TGF-β
CRPの基本知識についておさらいしておきましょう
CRPとは
炎症で上昇する急性期蛋白。半減期が半日と短いため、炎症の度合いを診るために用いられる。(強い炎症が起これば急上昇、半減期が短いため、炎症が治まればすぐ低下していく)。炎症性サイトカインによって産生が亢進する。
上記説明の赤文字部分に着目してください。CRPは炎症性サイトカインによって、産生が亢進します
すなわち、この問題はCRP産生に関与するサイトカインはどれか=炎症性サイトカインはどれか と同義となります
主要な炎症性サイトカインはIL-1, 6, 8 ,TNF-α(いろはアルファ)で覚えましょう。答えは3です。
MT68-AM84.臨床的意義のある不規則抗体はどれか。
① 抗C
② 抗Leb
③ 抗N
④ 抗P1
⑤ 抗Xga
臨床的意義のある、とは輸血などによって影響の大きい不規則抗体という意味です
国家試験レベルでは臨床的意義のない不規則抗体を覚えておくのが得策です
国試で覚えるべき臨床的意義のない不規則抗体(免疫検査学の赤本の記載を参考にしています)
抗N、抗Leb、抗P1、I血液型、抗Xga
と、ここまで書いていうのもなんですが、1の抗CとはRh血液型で、Rh血液型は明らかに臨床的意義のある抗体ですので、この問題は冷静に1を選んでおけばOKです
MT68-AM85.交差適合試験の主試験が陽性になる可能性が高いのはどれか。
① 患者がA型、提供者がO型
② 患者がAB型、提供者がO型
③ 患者が直接抗グロブリン試験陽性
④ 提供者が直接抗グロブリン試験陽性
⑤ 患者がRhD陽性、提供者がRhD陰性
まず、交差適合試験について説明できなくてはなりません
交差適合試験とは輸血用の血液(供血者)と、輸血される患者血液(受血者)で副作用が起こらないかどうかを確認することです
受血者の血清中に、供血者の赤血球に対する抗体が本当にないか調べるのが主試験
供血者の血清中に受血者の赤血球に対する抗体が本当にないかを調べるのが副試験です
※ 主試験は必ず行う必要がある
この問題は主試験が陽性になる場合、ですから、「患者血清中に提供者の赤血球に対する抗体がある」場合、となります。その上で選択肢を見ましょう
① 患者がA型、提供者がO型 →O型の血球に対する抗体がそもそもない
② 患者がAB型、提供者がO型 →上記と同様
③ 患者が直接抗グロブリン試験陽性
④ 提供者が直接抗グロブリン試験陽性
直接抗グロブリン試験は、赤血球に感作している抗体を検出する試験です(主に溶血を起こす疾患で調べるものです)
③は患者血球の話なので主試験は関係ないです
④は提供者の赤血球に(患者の)抗体が感作しているということ、すなわち、これは「患者血清中に提供者の赤血球に対する抗体がある」ですから、交差適合試験の陽性になる可能性があり、正解となります
⑤ 患者がRhD陽性、提供者がRhD陰性
→患者はRh+なので抗D抗体を持たない、主試験においては関係なし
以上を簡単に整理します
主試験が陽性になる場合=「患者血清中に提供者の赤血球に対する抗体がある」場合
すなわち患者の抗体が提供者の赤血球に反応する選択肢を探せば良いのです
① 患者がA型、提供者がO型→患者の抗体は抗Bなので問題なし
② 患者がAB型、提供者がO型→患者の抗体はないので問題なし
③ 患者が直接抗グロブリン試験陽性→直接抗グロブリンは血球の話である、患者血球は主試験と関係なし
④ 提供者が直接抗グロブリン試験陽性→提供者血球に患者の抗体が感作している、正解
⑤ 患者がRhD陽性、提供者がRhD陰性→患者の抗D抗体はないので問題なし
この手の問題は、抗体と赤血球の関係をはっきりさせるとわかりやすくなります
MT68-AM86 カラム凝集法の反応像(別冊No. 17)を別に示す。正しいのはどれか。
1.A型 RhD 陽性
2.O 型 RhD 陽性
3.O 型 RhD 陰性
4.AB 型 RhD 陰性
5.AB 型 RhD 陽性
まずはカラム法の判定は、上に溜まると凝集(4+)です
このことから、
オモテ:抗A 4+, 抗B 4+, 抗D 4+
ウラ:A1血球 ー, B血球 ー
ということで、5.AB 型 RhD 陽性が正解。カラムの判定さえできればサービス問題です。
MT68-AM87 CH50 が高値を示す疾患はどれか。
1.肝硬変
2.悪性腫瘍
3.血管神経性浮腫
4.全身性エリテマトーデス
5.膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
CH50 補体価が高い、低い、が何を表すかを説明できる必要があります
まず補体価が低い、とは体内での補体の消費亢進を表します
補体の消費が亢進するということは、抗原抗体反応(免疫複合体の形成)が多く起きているということになります
補体価が高いとは、補体の産生は亢進しているが抗原抗体反応は進んでいない状態を示します
そして、国試レベルにおいては補体価高値になる疾患として、関節リウマチと悪性腫瘍を覚えておけば良いでしょう。答えは2です。
他、肝硬変や全身性エリテマトーデス(SLE)など多くの疾患はCH50は低下します
肝硬変では補体の産生そのものが低下、SLEでは自己抗体により補体の消費が亢進するためです
MT68-AM88 輸血用血液製剤について誤っているのはどれか。
1.濃厚血小板は振盪しながら保存する。
2.赤血球液の保存温度は2〜6℃である。
3.濃厚血小板の有効期限は採血後2日間である。
4.新鮮凍結血漿の有効期限は採血後1年間である。
5.洗浄赤血球液の有効期限は製造後 48 時間である。
輸血用製剤のシンプルながら重要な問題
誤りは
3.濃厚血小板の有効期限は採血後24日間である。
保存温度・採血後または製造後期限は最低限覚えておきたいですね
製剤の簡単な覚え方を紹介します
保存方法は
赤血球ー冷蔵
血小板ー室温・振盪
血漿ー冷凍→解凍は37℃
期限は
赤血球ー3週間、洗浄したら48時間
血小板ー4日
血漿ー1年、解凍後3時間
MT68-AM89 輸血副反応と原因の組合せで正しいのはどれか。
1.C 型肝炎 -輸血用血液製剤中のリンパ球
2.血管内溶血 -輸血用血液製剤の補体
3.輸血後GVHD- 不規則抗体
4.輸血関連循環過負荷(TACO)- 抗内皮細胞抗体
5.輸血関連急性肺障害(TRALI)- 抗白血球抗体
選択肢左部分、副反応の原因をしっかり理解していきましょう
1.C 型肝炎 –HCVの感染(ただし、現在は製剤からの感染はほぼない)
2.血管内溶血 -主な要因は不適合輸血
3.輸血後GVHD- 輸血用血液製剤中のリンパ球が宿主を攻撃
4.輸血関連循環過負荷(TACO)- 輸血による急激な体液量の増加
5.輸血関連急性肺障害(TRALI)- 抗白血球抗体○
抗白血球抗体は、抗HLA抗体、抗顆粒球抗体ともいいます
輸血副反応については以下の記事もぜひ御覧ください!
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