医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成31年2月20日(水)に実施された
第65回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp190415-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT65-AM79 受動免疫による感染防止対策が行われているのはどれか。
1.結 核
2.B 型肝炎
3.インフルエンザ
4.肺炎球菌感染症
5.ヒト免疫不全ウイルス感染症
まずは、受動免疫と能動免疫について整理します
勘違いされがちですが、ワクチンや予防接種は能動免疫になります
抗原を注射し、免疫細胞に抗体を能動的に作らせるという解釈です
受動免疫とは一言でいうと
既にできている抗体を体内に取り込むことです
具体的には、
・胎盤を通じて、母親から胎児へのIgGの移行
が最もありうるパターンです
母子以外に、この受動免疫が成立する場合として、
免疫グロブリン療法というのがあります
これは抗体を直接血管から注射する方法です
これはB型肝炎感染の恐れがある場合に実施される可能性があります
ワクチンや予防接種は交代ができるまでに数週間かかりますが
免疫グロブリン療法は即効性があります
ということで答えは2.になります
能動免疫である予防接種は1~4で行われていますね
MT65-AM80 健常成人の末梢血白血球で2番目に数が多いのはどれか。
1.単 球
2.好酸球
3.好中球
4.B 細胞
5.T 細胞
最も数が多いのは好中球ですが、2番目はどれかという問題ですね
好中球の次に多いのはリンパ球なのですが
選択肢ではリンパ球がT細胞とB細胞に別れています
リンパ球の中ではT細胞が8割近く、残りをB細胞やNK細胞が占めているので
そのため答えとしては5.T細胞が正解となります
MT65-AM81 MHC 分子について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.クラスⅠ分子はヘルパー T 細胞と結合する。
2.クラスⅠ分子は外から入ってきた蛋白抗原を提示する。
3.クラスⅡ分子には HLA-DR、DQ、DP がある。
4.クラスⅡ分子はマクロファージに発現している。
5.クラスⅡ分子には β2 -ミクログロブリンが結合している。
MHC:主要組織適合遺伝子複合体は
ヒトの場合はHLA:ヒト白血球抗原です
MHC=HLAという認識でOK!
とりあえず問題の解説として
MHCのクラスⅠとクラスⅡで
重要な情報をざっくりまとめたいと思います
MHC(HLA)クラスⅠ
・ほぼ全ての有核細胞がもつ
・核のない細胞では血小板にはあるが、赤血球にはない
・タイプはA・B・Cがある
・MHCクラスⅠを構成するパーツの一つがβ2-ミクログロブリンである
※ β2-ミクログロブリンは腎臓でろ過されて再吸収されるため、腎機能評価にも用いられる
・細胞内のペプチド(抗原)をキラーT細胞に提示するために使われる
MHC(HLA)クラスⅡ
・抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ)だけに存在する
・タイプはHLA-DR, DQ, DP
※タイプの記号は無理して覚えなくてOK。A,B,CがタイプⅠだとわかっていれば大丈夫です
・B細胞やマクロファージが、ヘルパーT細胞に抗原提示をするために使われる
これらを踏まえて改めて選択肢を見ましょう
1.クラスⅠ分子はヘルパー キラーT 細胞と結合する。
クラスⅠ分子は、キラーT細胞へ細胞内抗原を提示するため使います
2.クラスⅠ分子は外から入ってきた蛋白抗原を提示する。
クラスⅠ分子は細胞内の抗原提示です
3.クラスⅡ分子には HLA-DR、DQ、DP がある。○
正しい。クラスⅠはA, B, C
4.クラスⅡ分子はマクロファージに発現している。○
正しい。クラスⅡは抗原提示細胞=B細胞、マクロファージなどに通常発現している
5.クラスⅡⅠ分子には β2 -ミクログロブリンが結合している。
β2ミクログロブリンはクラスⅠ分子を構成するパーツのひとつ
例えば、大量の白血球が死んだり、
血小板増加症で大量の血小板が壊れたりすると
血中のβ2-ミクログロブリンは増加します
MT65-AM82 化学発光酵素免疫測定法CLEIAに用いられるのはどれか。
1.金コロイド
2.ルテニウム
3.ルミノール
4.ルシフェリン
5.フルオレセインイソチオシアネートFITC
免疫測定法には多くの種類がありますが、
簡単にまとめてみましょう
免疫測定の日本語名:英略語:光物質の順です
・化学発光免疫測定:CLIA:アクリジニウムエステル
・化学発光酵素免疫測定法:CLEIA:ルミノール
・電気化学発光免疫測定:ECLIA:ルテニウム
・生物発光免疫測定法:BCLIA:ルシフェリン-ルシフェラーゼ
・蛍光免疫測定法:FIA:FITC(フルオレセインイソチオシアネート)
代表的なのはこのようなものがあります
今回のCLEIAは3.ルミノールが正解です
なかなか覚えるのがしんどい項目ではありますが
免疫測定では狙われやすいところでもあります
MT65-AM84 判定として正しいのはどれか。
1.オモテ検査 O 型、ウラ検査 A 型、Rh 陽性
2.オモテ検査 O 型、ウラ検査 B 型、Rh 陽性
3.オモテ検査 AB 型、ウラ検査 A 型、Rh 陽性
4.オモテ検査 AB 型、ウラ検査 A 型、Rh 陰性
5.オモテ検査 AB 型、ウラ検査 B 型、Rh 陽性
カラム法による判定について
下に沈んでいれば陰性(0)、上に完全に浮いていれば陽性(4+) が基本です
そして、左3つの結果がオモテ検査(患者血球+試薬血清)
右がウラ検査です(患者血清+A1血球 or B血球)
写真の結果を記すと
A:0, B:0, D:4+, Control:0, A1球: 4+, B球: 0
オモテO型、Rh+、ウラB型
となりますので、答えは2です
続けて、次の問題へ
MT65-AM85 このような判定結果となった原因として考えられるのはどれか。2つ選べ。
1.亜 型
2.連銭形成
3.免疫不全患者
4.過去の骨髄移植
5.不規則抗体保有患者
A:0, B:0, D:4+, Control:0, A1球: 4+, B球: 0
オモテO型、Rh+、ウラB型
一つずつ、選択肢を見て判断します
1.亜型
亜型は赤血球抗原が弱いため、
オモテ検査で凝集が見られない(非常に弱い)ことがあります
とすると、オモテの結果が偽陰性となり、ウラではB型判定のため
Bの亜型の可能性はありえますね
2.連銭形成
連銭形成は何らかの原因で赤血球が連なり
凝集しているように誤判定されてしまう現象です
ウラ検査の結果が偽陽性だとすると、
オモテはAB型判定になるはずなので、矛盾します
これは間違い
3.免疫不全患者
免疫不全患者で、無γ-グロブリン血症のような状態だとすると
ウラ検査は全て陰性に判定されるはずですので
今回の結果とは矛盾するため、間違い
4.過去の骨髄移植
骨髄移植ではドナー(供給者)の赤血球が作られるようになります
例えば、今回のO型赤血球がドナー由来だとすると
ウラの検査から、元々はB型で
O型からの骨髄移植を受けたという可能性はありえます
5.不規則抗体保有患者
患者の抗体が影響するのはウラ検査です
不規則抗体を持っていたとすると、ウラの結果が偽陽性で
この人は本来AB型であるということになりますが、
オモテ検査の結果はO型になるので矛盾するため、間違いです
以上より、答えは1,4です
非常にややこしいところですが、
オモテ検査は患者血球、ウラ検査は患者抗体
あくまでもこれを基本に矛盾を探していきましょう
MT65-AM89 免疫学的機序による輸血副作用はどれか。2つ選べ。
1.鉄過剰症
2.輸血後 GVHD
3.高カリウム血症
4.輸血関連循環過負荷TACO
5.輸血関連急性肺障害TRALI
1,3は免疫学的機序とは関係ないのは明白です
鉄過剰は赤血球の長期輸血などで起こり得ます
輸血に伴う高カリウム血症は、冷蔵していた血液製剤では
赤血球のNa-Kポンプの停止によりカリウムが漏れ出し、
高K血となっている可能性があるためです
2.輸血後 GVHDは明らかに免疫学的機序ですね
GVHD;graft versus host diseaseとは
移植片 対 宿主 病つまり、移植片(ドナー組織) が 患者を攻撃する病気です
いわゆる移植拒絶反応とは逆の反応です(移植拒絶は患者の免疫が移植片を攻撃する)
ドナーのリンパ球による免疫反応と考えられます
4.輸血関連循環過負荷TACO
TACOとは輸血中~輸血後6時間以内に発症する
急性の呼吸困難を伴う合併症です
原因は、輸血による循環血液量の増加による過負荷
体液量が急激に増え、心肺に負担がかかり起こる症状です
単純な体液量の増加であり、免疫は関係ありません
5.輸血関連急性肺障害TRALI
輸血関連急性肺障害 (TRALI)とは
製剤中に含まれる白血球抗体(HLA抗体、好中球抗体)と、
患者の白血球や肺の毛細血管内皮細胞が反応して
好中球が活性化され、肺の毛細血管に損傷を与えることでTRALIが発症すると推測されています
(AABB Press,Bethesda, 2012, pp191-215.より)
このことから、免疫学的機序が関連しているといえます
輸血関連循環過負荷(TACO)と 輸血関連急性肺障害(TRALI)は
似ているように思えますが全く違う病態なのでしっかりチェックしましょう!
第66回でも類似問題がありますので、チェックしてみてください!
免疫系のかなり重たい問題が多かったため
ノートにメモなど取りながら繰り返し記事を読んでみてもらえたらと思います!
読んで頂きありがとうございました!
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