モノクローナル抗体とは
1か所のエピトープ(抗原側の結合部位)のみを認識する抗体のこと。1か所にだけ結合するので、特異性が高い。これに対して複数のエピトープを認識する抗体はポリクローナル抗体という。通常、B細胞が生体内で作る抗体はポリクローナル抗体である(認識箇所が多いほど、菌を殺せるため)。一方で、モノクローナル抗体は人工的に作成し、ヒトが特定の検査や治療に利用しているという側面があります。
モノクローナル抗体の作製方法は、非常に難しいところですが
できるだけ簡単に説明します
モノクローナル抗体は
骨髄腫細胞(ミエローマ)とB細胞を融合させたハイブリドーマから作られます
骨髄腫細胞とは癌化(不死化)した形質細胞であり、ほぼ無限に抗体を産生できます
これは多発性骨髄腫に見られる細胞であり、この無限に作られる抗体が
M蛋白(ベンスジョーンズ蛋白も含む)と呼ばれるものです
しかしながら、ここで作られる抗体は特異性もなく使えない抗体です
そこで、B細胞の目的に合わせた抗体産生能力を融合させたのがハイブリドーマです
ミエローマの不死化能力、B細胞の特異性の高い抗体産生能力を併せ持っています
ハイブリドーマを作製し、目的のエピトープのみに結合できる抗体のクローンをどんどん作らせ、できるのがモノクローナル抗体です
作り方を以下にまとめます
ハイブリドーマの作製に用いる培地はHAT培地といいます
また、融合剤としてエチレングリコールを使います
HAT培地は
- H:ヒポキサンチン
- A:アミノプリテン
- T:チミジン
を含んでいます
ミエローマとB細胞を融合させたいのですが、
ミエローマ同士、B細胞同士でも融合してしまうため、
この2つを排除しなくてはなりません
(融合しない単独細胞もいるのでそれも排除します)
- B細胞単独
- B細胞ーB細胞
- ミエローマ単独
- ミエローマーミエローマ
- B細胞ーミエローマ ←これだけ残したい
まずはB細胞だけの融合細胞・単独細胞の場合
ここで用いているB細胞には寿命がありますので
選別しなくとも死滅します
問題はミエローマです。
ミエローマは不死化してあるため、
・ミエローマのみの細胞を排除
・ミエローマ+B細胞は生き残る
この状態を作りたいわけです
細胞が増えるためにはDNA合成が必要で、合成経路は
- de novo経路
- サルベージ経路
の2つがあります
HAT培地のA:アミノプリテンはde novo経路を阻害します
de novo経路は阻害されているため、サルベージ経路のみで核酸合成をする必要があります
サルベージ経路に必要な材料が、H:ヒポキサンチンとT:チミジンです
サルベージ経路に用いられる酵素に、HGPRTとTKという酵素があります
ハイブリドーマ作製に用いられるミエローマはこの2つのいずれかの酵素を欠損させてあります
そのため、A:アミノプリテンによるde novo経路阻害
サルベージ経路は酵素欠損により使えない、ということで
ミエローマだけの細胞は死滅します
ミエローマとB細胞の組み合わせになったハイブリドーマは
de novo経路は阻害されているけれども、
B細胞部分がサルベージ経路を使えるので、無事に増殖が可能となります
このようにして、HAT培地によって
ミエローマ+B細胞のハイブリドーマのみを選別しているのです
なお第65回の臨床検査技師国家試験で
モノクローナル抗体の作製方法について問われています
まとめ
- モノクローナル抗体はハイブリドーマから作られる
- ハイブリドーマは骨髄腫細胞とB細胞が融合したもの
ハイブリドーマの作製で必要な知識
- 細胞融合剤としてエチレングリコールを使用する。
- HAT 培地中のA:アミノプリテンは核酸合成を阻害する。
- アミノプリテンが阻害するのはde novo経路
- もう一方のサルベージ経路には、H:ヒポキサンチンとT:チミジンが必要
- de novo経路がダメならサルベージ経路を使うが、ハイブリドーマ作製に用いる骨髄腫細胞はサルベージ経路の酵素を欠損している
- よって、骨髄腫同士の融合細胞は HAT 培地中のA:アミノプリテンによりde novo経路を阻害されるだけで死滅する。
- B 細胞同士の融合細胞は不死化されていないので自然に死滅する
- 以上のことから、骨髄腫細胞とB細胞が融合した場合のみ、生存することができる
非常に難しく思えますが、何度か読み返してなんとなく理解できればOKです!
過去の国試にも出ていますが、難しいな~と思った人は
・モノクローナル抗体はハイブリドーマに作らせる
・ハイブリドーマとは骨髄腫細胞(ミエローマ)とB細胞が融合したもの
この2点だけをしっかり押さえておきましょう!!
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