【第65回臨床検査技師国家試験】PM81, 84, 85, 87, 89の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

平成31年2月20日(水)に実施された

第65回臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説しています!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp190415-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT65-PM81 新生児の梅毒血清反応において先天梅毒を示唆する所見はどれか。

1.TPPA 法が陽性である。
2.RPR カードテストが陽性である。
3.抗カルジオリピン抗体が陽性である。
4.FTA-ABS 法で IgM 抗体が陽性である。
5.生後数か月の間に無治療でも抗体価の低下がみられる

 

もし、母親が梅毒に感染していた場合、

新生児にも梅毒が感染してしまう可能性があり、これを先天性梅毒といいます

 

梅毒検査の解釈についてですが、新生児であるというのがポイントです

新生児には母親のIgGが胎盤を通じて移行しています

つまり、仮に新生児への感染がなかったとしても

母親の梅毒に対するIgGが反応する可能性があります

 

一方で、新生児が初めに作ることのできる抗体はIgMです

そしてIgMに胎盤通過性はありません

そのため、新生児由来の梅毒に対するIgMがあれば

先天的に感染している可能性が高いと言えます

このことから、答えは4になります

1,2,3の選択肢は母親由来のIgGを検出している可能性があります

 

5.生後数か月の間に無治療でも抗体価の低下がみられる

無治療で抗体価低下が見られるということは

子に移行した母親由来のIgGが消失している可能性を意味します

もし新生児が感染していれば、抗体価は上昇していくはずです

 

MT65-PM84 モノクローナル抗体作製法について正しいのはどれか。

1.細胞融合剤としてエタノールを使用する。
2.HAT 培地中のヒポキサンチンは核酸合成を阻害する。
3.骨髄腫同士の融合細胞は HAT 培地中のチミジンにより死滅する。
4.骨髄腫細胞と B 細胞が融合したものはハイブリドーマと呼ばれる。
5.B 細胞同士の融合細胞は HAT 培地中のアミノプテリンにより死滅する。

モノクローナル抗体とは

1か所のエピトープのみを認識する抗体のこと。1か所にだけ結合するので、特異性が高い。これに対して複数のエピトープを認識する抗体はポリクローナル抗体という。通常、B細胞が生体内で作る抗体はポリクローナル抗体である(認識箇所が多いほど、菌を殺せるため)。一方で、モノクローナル抗体は人工的に作成し、ヒトが特定の検査や治療に利用しているという側面があります。

モノクローナル抗体の作製方法は、非常に難しいところですが

できるだけ簡単に説明します

 

モノクローナル抗体は

骨髄腫細胞(ミエローマ)とB細胞を融合させたハイブリドーマから作られます

骨髄腫細胞とは癌化(不死化)した形質細胞であり、ほぼ無限に抗体を産生できます

これは多発性骨髄腫に見られる細胞であり、この無限に作られる抗体が

M蛋白(ベンスジョーンズ蛋白も含む)と呼ばれるものです

 

しかしながら、ここで作られる抗体は特異性もなく使えない抗体です

そこで、B細胞の目的に合わせた抗体産生能力を融合させたのが

ハイブリドーマです

ミエローマの不死化能力、B細胞の特異性の高い抗体産生能力を併せ持っています

ハイブリドーマを作製し、目的のエピトープのみに結合できる抗体のクローンをどんどん作らせ、できるのがモノクローナル抗体です

 

以上のことを知っていれば、正しい答えは4であるとすぐわかります

モノクローナル抗体の詳しい作製方法は難解です

ハイブリドーマだけはしっかり理解しておきましょう!

詳しい作製方法については以下の記事でしっかり解説しています!

MT65-PM85 細菌に対する自然免疫の機能で誤っているのはどれか。

1.Toll 様受容体が菌体成分を認識する。
2.補体系では主として古典経路が働く。
3.好中球は血中から炎症箇所に移動する。
4.粘膜を覆っている粘液には抗菌作用がある。
5.樹状細胞は抗原提示により獲得免疫への橋渡しを行う。

 

免疫は専門用語のオンパレードです

ひとつひとつ、意味を説明できるかどうかを今一度確かめましょう

 

1.Toll 様受容体が菌体成分を認識する。○

Toll様受容体とは

Toll-like Receptor(TLR)とも呼ばれる。TLRは細菌、ウイルス、寄生虫などのあらゆる病原体を感知するレセプター。ヒトでは10種類のTLRが見つかっている。

 

2.補体の経路は3つです

  • 古典経路
  • 別経路(副経路)
  • レクチン経路

 

古典経路の始まりにはIgGもしくはIgMが必要です

すなわち抗体が関与するのは獲得免疫であり、

自然免疫で主となる補体経路は、別経路になります

レクチン経路にも抗体は必要ありません

誤りは2.になります

 

3. 好中球は血中から炎症箇所に移動する。○

好中球は遊走能を持っているので正しい文です

 

4.粘膜を覆っている粘液には抗菌作用がある。○

粘膜は粘液によっ病原体の侵入を阻止しています


5.樹状細胞は抗原提示により獲得免疫への橋渡しを行う。○

樹状細胞は抗原提示のスペシャリストと言える細胞です。自然免疫による貪食などで抗原を認識し、獲得免疫による抗体産生のためT細胞へと抗原提示します。

  

MT65-PM87 血液製剤の細菌汚染対策のために重要なのはどれか。

1.外観の検査
2.放射線照射
3.核酸増幅検査
4.抗 HLA 抗体検査
5.トリプターゼ測定

 

血液製剤はその安全性を確保するために様々な検査が行われますが

選択肢に書いてある検査の意味を理解しなければなりません

 

まずは問題の答えですが、答えは1になります

細菌による汚染があると、製剤の色が変色した

血小板製剤であれば凝集塊などが見えるなど

外観でわかることが多いです

 

2.放射線照射

放射線を当てるのはGVHDの防止です

GVHD;graft versus host disease

移植片 対 宿主 病つまり、移植片(ドナー組織) が 患者を攻撃する病気です

いわゆる移植拒絶反応とは逆の反応です(移植拒絶は患者の免疫が移植片を攻撃する)

ドナーのリンパ球による免疫反応と考えられます

リンパ球は放射性感受性が高いため

(=放射線に弱い、効きやすい)

赤血球や血小板への影響がない範囲で行うことができます

 

3.核酸増幅検査

核酸増幅検査は

NAT:Nucleic acid Amplification Test とも呼ばれます

核酸検査が必要なのは、血液・輸血感染の可能性があるウイルス

つまりは、以下の3種が代表的です

  • HIV:ヒト免疫不全ウイルス
  • HBV:B型肝炎ウイルス
  • HCV:C型肝炎ウイルス

 

4.抗 HLA 抗体検査

製剤中抗HLA抗体検査は

・血小板輸血不応

・TRALI

などに対して行われます

輸血関連急性肺障害 (TRALI)とは

製剤中に含まれる白血球抗体(HLA抗体、好中球抗体)と、

患者の白血球や肺の毛細血管内皮細胞が反応して

好中球が活性化され、肺の毛細血管に損傷を与えることでTRALIが発症すると推測されています

(AABB Press,Bethesda, 2012, pp191-215.より)

 

5.トリプターゼ測定

トリプターゼは肥満細胞(マストセル)に含まれる酵素です

肥満細胞はⅠ型アレルギーに関与します

血液製剤によるアナフィラキシー反応に対して測定が行われます

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MT65-PM89 不規則抗体同定検査の間接抗グロブリン試験(試験管法)と直接抗グロブリン試験(試験管法)の両方に使用されるのはどれか。2つ選べ。

1.ブロメリン
2.パネル赤血球
3.被検者の血清
4.IgG 感作赤血球
5.被検者の赤血球

別名:クームス試験と呼ばれるものですね

クームス試験の目的は患者のもつ不規則抗体の検出です

クームス試験に用いるクームス試薬とは、抗免疫グロブリン抗体です

直接クームス試験は、患者赤血球に既に結合している抗体直接検出する

間接クームス試験は、患者血清中に存在する抗体パネル血球を用いて間接的に検出する

 

1.ブロメリンは交差適合試験のブロメリン法で用いますがクームス試験には関係ないです

2.パネル赤血球、3.被験者の血清を使うのは間接クームスのみです

以上から、答えは4,5になります

 

4.IgG感作赤血球とは既に抗体が結合した赤血球のことです

クームス試験が陰性の場合、IgG感作赤血球とクームス試薬を反応させます

ここで凝集が見られないということは反応が正しく起こっていない可能性があります

具体的には、試薬の入れ忘れや、赤血球の洗浄不十分などが考えられます

 

5.被験者の血球は直接クームスでは当然用います

間接クームスによる不規則抗体の同定の際には、陰性対照として必要になります

患者血清と患者赤血球を反応させるので普通は凝集しないはずですが

自己免疫疾患による自己抗体・寒冷凝集・過去3ヶ月以内の輸血の影響

などが考えられます

 

 

免疫・輸血の完璧な理解は非常に難しいですので

なんとなくわかるまででいいので、何度も文章を読み返してみてください

本日も勉強お疲れ様です!

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