この3つの病態は繋がっている
- 肝不全
- 肝硬変
- 肝癌
この3つの肝臓の病態は全く別々の病気ではありません
慢性肝不全 ≒ 肝硬変→肝癌
へと進行していく一連の流れの中にある病態なのです
肝不全とは肝機能の大幅な低下を意味し
- 急性肝不全(劇症型肝炎)
- 慢性肝不全(肝硬変)
の2つに大別されます
急性肝不全は、
急激に肝機能の低下をもたらすこと(劇症型肝炎)
原因は主にB型肝炎ウイルス、自己免疫疾患の場合もあります
慢性肝不全は、慢性的に肝機能が低下し
じわじわと肝硬変に近づいている状態といえます
原因はウイルス、アルコール、非アルコール性(NASH)など様々です
特にC型肝炎ウイルスは慢性肝不全からの肝硬変に移行しやすい
これは必ず覚えておきましょう
肝硬変は線維性組織の増加
肝硬変とは肝臓の細胞が
線維性に変化し、その名の通り硬くなってしまう病気です
肝硬変が進行し、長期化すると
肝癌に移行しやすいと言われています
(長期化というのは10~30年単位)
肝不全・肝硬変・肝癌の主な症状
これらの病気の主な症状は
肝臓が普段担っている機能の低下
その影響が全身にでてくるため
症状は様々です
肝臓というのは本当に大事な臓器で
多くの役割を担っています
それでは問題を見ながら
なぜ肝不全や肝硬変になると
その症状が起きるのかを解説していきます!
肝不全によって起こる病態でないのはどれか【PT国試より】
- 黄疸
- 腹水
- 出血傾向
- 高コレステロール血症
- 意識障害
解説のため最初から答えを示しています
それでは各選択肢を見ていきましょう
1.黄疸
黄疸とは血中のビリルビンが上昇し
白目や皮膚の部分が黄色くなる病態です
↓ビリルビンについてはこちらで詳しく解説しています
肝細胞性黄疸と呼ばれるもので
直接ビリルビン、間接ビリルビン共に上昇します
2.腹水
肝機能が低下すると血中のタンパク質、
特にアルブミンが低下します
そのため、門脈圧が亢進(重要キーワード)
水分が組織に染み出して、お腹に水が溜まってしまいます
3.出血傾向
なぜ肝不全で出血傾向になるのか?
それは、血液の凝固因子の一部が肝臓で作られているためです
肝臓で作られる凝固因子は、2,9,7,10(肉、納豆)と覚えましょう
また、これらの因子はビタミンK依存的に作られます
ワーファリンという抗凝固薬は
ビタミンKを阻害し、これらの凝固因子を抑えて
血を固まらなくする作用があります
4.高コレステロール血症
コレステロールは肝臓で合成されており
肝機能が落ちるということは、
コレステロールの合成も落ち込んでむしろ低下します
そのため4番が誤りです
5.意識障害
肝不全による意識障害の主な原因は
血中のアンモニアの増加です
肝臓はアンモニアを無毒な尿素へと分解しています
(尿素回路 または オルニチン回路といいます)
これができなくなるため、アンモニアが血中に増加します
その結果、肝性脳症
が引き起こされ、意識混濁、意識障害が起きるのです
肝硬変の症状で誤っているのはどれか【PT国試より】
- 黄疸
- 高アンモニア血症
- 脾腫
- 食道静脈瘤
- 赤血球増多
1.黄疸は先程の問題と一緒の理由
2.高アンモニア血症も先程と理由は一緒で
これによって意識障害が起こります
3.脾腫とは脾臓が腫大すること
原因として、門脈圧亢進があります
4.食道静脈瘤も 門脈圧亢進 が原因となります
門脈圧が亢進し、食道や胃の周りの血管に
血液の塊ができてしまうのが食道静脈瘤です
5.赤血球増多
これは肝臓とは特に無関係です
血液関連では
血小板の低下が起こりえます
まとめ:肝不全、肝硬変で引き起こされる症状
- 肝細胞性の黄疸=ビリルビン上昇
- 高アンモニア血症による肝性脳症=意識障害
- 門脈圧亢進による 腹水・脾腫・食道静脈瘤
- ビタミンK依存性凝固因子(2,9,7,10)の不足による出血傾向
肝臓の役割を知ることで、肝不全・肝硬変で
どのような症状が起きるのかをしっかり理解できます!
ではまた!
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