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国試かけこみ寺です!
令和3年2月17日(水)に実施された
臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp210416-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT67-AM74 ワクチンが開発されていないウイルスはどれか。
1.風疹ウイルス
2.麻疹ウイルス
3.C 型肝炎ウイルス
4.水痘・帯状疱疹ウイルス
5.インフルエンザウイルス
正解は3.C型肝炎ウイルスです
B型肝炎にはワクチンがあります
C型肝炎はワクチンがありませんが、近年大変優秀な薬が開発され、治癒率は高くなりました
風疹・麻疹はMRワクチンという混合ワクチンがあり、1~2歳未満の間で接種、5歳~小学校就学前で接種となっています
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MT67-AM78 プラスミドについて誤っているのはどれか。
1.環状の DNA である。
2.接合によって伝達する。
3.耐性因子の1つである。
4.染色体から独立した遺伝体である。
5.細菌に感染するウイルスの総称である。
プラスミドとは、原核生物(細菌)が持つ、染色体以外の環状DNAのことです
耐性遺伝子などが組み込まれており、他の菌へ接合伝達することで耐性菌増加の原因ともなります
誤りは5で、細菌に感染するウイルスはバクテリオファージと言います
ファージが細菌に感染し、遺伝子を菌に取り込ませることを形質導入と言います
MT67-AM79 ABO 血液型抗原について正しいのはどれか。
1.O 型では H 抗原がない。
2.赤血球のみに発現している。
3.亜型は後天的な抗原変異である。
4.特異性を決定するのは糖鎖である。
5.新生児の発現量は成人と同じである
ABO血液型抗原についての基礎情報を整理していきましょう
1.O 型では H 抗原がない。✕
H抗原はいずれの血液型も共通して持っています
H抗原のみがO型、H+A抗原がA型、H+BがB型、H+A+BがAB型です
H抗原を持たない極めて稀な血液型、それがボンベイ型(Oh)です
H抗原がなく、オモテ検査ではO型判定となりますが
ウラ検査では対照のO型血球も凝集してしまいます(抗H抗体を持つため)
ボンベイ型は百万人に1人程度の割合で、同型でしか輸血できません
2.赤血球のみに発現している。✕
体液、唾液などに含まれる糖蛋白質などにも発現しています
Se血液型が分泌型の人は唾液でABO血液型を調べることができます
3.亜型は後天的な抗原変異である。✕
遺伝的な先天性のものが主です、稀に後天性もあります
4.特異性を決定するのは糖鎖である。○
特異性というのは、A抗原、B抗原の糖鎖ですから正しい文章です
5.新生児の発現量は成人と同じである。✕
新生児では抗原や抗体の発現量が弱く、血液型誤判定の可能性があります
3歳程度で成人と同等と言われています
MT67-AM80 ABO 血液型検査を行ったところ、オモテ検査 B 型、ウラ検査 O 型で判定保留となった。最も考えられるのはどれか。
1.B 亜型
2.cisAB 型
3.後天性 B
4.白血病
5.不規則抗体
オモテでBが正しいならば、ウラでA血球が凝集していないことが誤り、と解釈できます
つまり、患者の抗A抗体の反応が悪い、もしくはA血球に問題あり、となり選択肢からは考えられません
このことからウラ検査のO型が正しいとするなら
オモテ検査がB型と誤判定される原因は、不規則抗体となります
本来凝集しないはずの血球が凝集しているということは、不規則抗体、寒冷凝集素などが主な原因として挙げられます
MT67-AM82 ハプテンに対する抗体の作製で誤っているのはどれか。
1.動脈注射する。
2.複数回接種する。
3.アジュバントを用いる。
4.キャリア蛋白に結合させる。
5.ポリクローナル抗体が作られる
ハプテンとは抗体と結合するけれど、抗体産生の元にはならない低分子物質のことです
(抗体産生の元になることを免疫原性と言います)
ハプテンは不完全抗原ともいい、蛋白質などの大分子と結合すると、抗体が産生される完全抗原となります
具体的には薬剤分子を指す事が多いです
例えばペニシリンアレルギーですが、ペニシリン単体では抗体は産生されませんが
ペニシリンが蛋白質と結合した段階で、免疫細胞に認識されると抗体が産生される可能性があります
このようなハプテンに対する抗体を動物に作らせる際の方法を問うている問題です
誤りは1になります
動物に抗体を作らせる際には、ハプテンに限らず静脈注射か皮下注射が一般的なため誤りです
動物実験を行ったことがある人はイメージしやすいかと思います
2.複数回接種する。
抗体を作らせるための、抗原の複数回接種は有効です
3.アジュバントを用いる。
アジュバントとは賦活剤、すなわち反応増強剤のようなもので抗体を作りやすくします
4.キャリア蛋白に結合させる。
ハプテンは蛋白に結合しなければ免疫原性を持たないため必須です
5.ポリクローナル抗体が作られる
生体内で作られる抗体は、ポリクローナル抗体です
モノクローナル抗体の作成にはハイブリドーマを用います
なお抗体の作成法についてMBL社のサイトの説明がわかりやすいです(リンクでHPに飛びます)
↓以下の記事でも国試レベルで解説しています
MT67-AM83 末血のフローサイトメトリのドットプロット図(別冊No. 13)を別に示す。矢印で示すのはどれか。
1.単 球
2.顆粒球
3.血小板
4.リンパ球
5.壊れた細胞の破片
フローサイトメーターは細胞にレーザーを当て、散乱した光を計測することで、細胞を分けることができる仕組みです
具体的には、末梢血の血球は大きさや内部構造にそれぞれ違いがあります
この内部構造の違いによって、レーザーの散乱光に違いができ、その度合をプロットしたものがドットプロット図です
- 前方散乱光(FSC):値が大きいほど、細胞が大きいことを表す
- 側方散乱光(SSC):値が大きいほど、内部構造が複雑(顆粒などの存在)を表す
- 点の一つ一つが細胞1個を表す、点の集まりが多いほどそのグループの細胞数が多いということ
改めて図を見ると、
4つのグループがあることがわかります
この問題では4がどの細胞群かを考えます
FSCとSSCの解釈がわかれば
細胞が大きく、内部構造に顆粒などが多い、ということがわかります
点の数も最も多く細胞数が多いので、答えは2.顆粒球です
3は大きくて内部構造は単純で数は少なめ=単球
2は中くらいの大きさ、構造は単純で数はやや多い=リンパ球
1は血小板や細胞の破片など小さいものの集まりであるとわかります
この図は末梢血のフローサイトドットプロットの非常に基本的な分布なのでぜひ覚えておきましょう
フローサイトの測定の注意点は、細胞が重なっていた場合、大きさが倍の判定になることがあります
例えば血小板増多などで凝集が起きると、大きな細胞と判定されることがあるということです
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