医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和5年2月15日(水)に実施された
第69回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説しています!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp230524-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
- MT69-AM1 EDTA-2K 採血管で採取した血漿を用いた場合、 測定値が血清より高くなるのはどれか。
- MT69-AM 2 パニック値として報告すべきなのはどれか。
- MT69-AM 3 クレアチニン (酵素法)の内部精度管理図を示す。原因として最も考えられるのはどれか。
- MT69-AM 7 コンパニオン検査の特徴について正しいのはどれか。 2つ選べ。
- MT69-AM 9 培養検査で検出された細菌が起炎菌である可能性の最も高い検体はどれか。
- MT69-AM 10 臥位に比べて座位で採血したときに高値となる血清成分はどれか。
- MT69-AM13 汎血球減少症を呈するのはどれか。2つ選べ。
- MT69-AM 14 末期慢性腎不全で認められるのはどれか。2つ選べ。
- MT69-AM 15 メタボリックシンドロームの診断基準に含まれるのはどれか。 2つ選べ。
MT69-AM1 EDTA-2K 採血管で採取した血漿を用いた場合、 測定値が血清より高くなるのはどれか。
- ALP
- Ca
- CRP
- Mg
- TP
用いている抗凝固剤はEDTAですので、まずは金属キレート(2価の金属イオンが結合除去されること)はすぐ想定できますね。
この時点で、2. Ca、4. Mgは低下するので✕
次に、ALPは活性中心に亜鉛Znを含み、活性化にMgを必要とする金属酵素です。つまり、ALPの活性も低下します
残りはCRPとTPですが、ここまできて迷う人も多いかもしれません。
抗凝固剤を用いた「血漿」であることがポイントです。
血漿は血液が凝固していないため、血液凝固因子(第○因子)が消費されていません。
これらの凝固因子もタンパク質ですから、血中に残っていると通常よりもタンパク質濃度は高くなるということで、5が正解になります。
ちなみに凝固因子で最も多い成分はフィブリノゲン(=第Ⅰ因子)で200~300 mg/dL 存在します。つまり、TPは0.2~0.3g/dL程度上昇すると考えられます。
MT69-AM 2 パニック値として報告すべきなのはどれか。
- K 7.0mmol/L
- Na 130 mmol/L
- LD 300 U/L
- 血小板数 50万/μL
- ヘモグロビン 15.0g/dL
パニック値は基本的に覚えるしかありませんが、電解質は特に基準範囲が狭いということは覚えおきましょう。
答えは1のカリウムです。
国試レベルの問題では、特に明らかにおかしいレベルの値が正解となるので、ざっくりとでも基準範囲は覚えておくとよいです
酵素系のパニック値はざっくり覚えるなら、LD・CKは1000以上、AST・ALTは500以上 というのを押さえておけばよいでしょう
↓血ガスや電解質の基準値の覚え方はこちらの記事で紹介しています
MT69-AM 3 クレアチニン (酵素法)の内部精度管理図を示す。原因として最も考えられるのはどれか。
- 第1試薬と第2試薬を逆にして測定した。
- 管理試料を半分の溶解液量で溶解した。
- 標準物質の濃度を2倍にして測定した。
- 使用期限が切れた試薬で測定した。
- 未熟な技量のスタッフが測定した。
今回は管理図の細かい説明は省略し、単純にこの図の意図を理解できるよう説明していきます。
この管理図は、毎回の平均値をプロットしたもので、平均値が段々と下方に低下していることがわかります(マーカー部分が非常に大事です)
ここに注目して、測定値がどのようになっていくか各選択肢を見ていきましょう
段々と下方に低下 これをキーワードに見ていきます
1. 第1試薬と第2試薬を逆にして測定した。→試薬の順序を間違えるとおかしな値になりますが、段々とではなく、おかしな値が出た時点から一定に異常値がでるはずです
2.管理試料を半分の溶解液量で溶解した。→管理試料が濃くなるということですが、こちらも段々とではなく、管理試料を間違った時点から一定におかしな値になるはずです
3.標準物質の濃度を2倍にして測定した。→2と同様の考え方です
4.使用期限が切れた試薬で測定した。→これが正解です。使用期限が切れて、段々と活性が低下していく と考えられます
5.未熟な技量のスタッフが測定した。→このパターンは段々と低下するというよりは、上下のぶれ幅が大きくなるなど、不安定に値が変化するはずです
この問題は管理図そのものをあまり知らなくても、測定値が段々と低下していく ことをキーワードに推測することでも答えにたどり着くことができます
MT69-AM 7 コンパニオン検査の特徴について正しいのはどれか。 2つ選べ。
- 薬局で個人購入できる。
- 疾患の重症度を評価できる。
- 分子標的薬の有効性を予測できる。
- ベッドサイドで結果を評価できる。
- 医薬品の副作用リスクを評価できる。
コンパニオン検査とは
治療薬(主に抗がん剤)の効果や安全性を確かめるために行われる「遺伝子検査」のことです。
抗がん剤などでは遺伝子の変異によって、薬の有効性や副作用が変わるものがあります。国試レベルではそれを調べるための遺伝子検査がコンパニオン検査であるという認識でよいでしょう。
上記の解説から、選択肢を見ていくと
1.薬局で個人購入できる。→明らかに✕。ちなみに薬局で購入できる薬をOTC薬と言います
2.疾患の重症度を評価できる。→コンパニオン検査とは無関係です
3.分子標的薬の有効性を予測できる。→○ 分子標的薬は主に抗がん剤に使用され、特定の分子(レセプターやタンパク質など)をターゲットにする薬のことで、有効性の予測には遺伝子検査が有用です。
4.ベッドサイドで結果を評価できる。→ベッドサイドで行うことができる検査はPOCTといいます
5.医薬品の副作用リスクを評価できる。→○
コンパニオン検査のキーワードは事前に遺伝子検査を行い、薬の有効性と安全性を確かめることです
MT69-AM 9 培養検査で検出された細菌が起炎菌である可能性の最も高い検体はどれか。
- 便
- 喀痰
- 髄液
- 自然尿
- 鼻咽頭粘液
この問題は、問題文の意図を理解することが重要です。
起炎菌とは、「感染症を起こしている原因菌」のことです
検体によっては、起炎菌ではない、常在菌やコンタミした菌も検出する可能性があることをイメージしましょう
答えからいうと3.髄液が正解です
では他の検体、便・喀痰・自然尿・鼻咽頭粘液はどうでしょうか
これらは常在菌や、感染症の原因とは別の菌も検出する可能性が高いと言えます
外界と常に触れる可能性があるためです
一方で、髄液は基本的に血液と同じで常に無菌であり、感染が起きない限りは検出がされません
そのため、髄液からもし菌が検出された場合は、起炎菌の可能性が最も高いと言えるのです
MT69-AM 10 臥位に比べて座位で採血したときに高値となる血清成分はどれか。
- 尿酸
- 尿素窒素
- アルブミン
- ナトリウム
- クレアチニン
採血時の体位によって変化する成分の問題です。定番なのでしっかり覚えましょう!
なぜそうなるのかはおいておいて、まずは覚えてしまうことをおすすめします。
臥位(寝ながら採血)で低値、座位のほうが高値になる項目として、「TP・アルブミン・Ca」があります。寝ながら採血を行う入院患者さんなどでは低値になるということです。
Caはアルブミンと結合しているタンパク結合型があり、アルブミンが低値になると、見かけ上のCa測定値が低下します。その場合、Caには補正を掛ける必要があります。
MT69-AM13 汎血球減少症を呈するのはどれか。2つ選べ。
- 腎性貧血
- 鉄欠乏性貧血
- 巨赤芽球性貧血
- 再生不良性貧血
- 自己免疫性溶血性貧血
汎血球減少症とは赤血球・白血球・血小板のすべての血球系が減少することです
汎血球減少を起こす疾患を暗記してもよいのですが、今回は選択肢の病気がどのような病態かを理解しながら考えて、この問題を解いてみましょう
1.腎性貧血は腎臓から分泌される造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO) の不足による貧血であり、影響があるのは赤血球のみです
2.鉄欠乏性貧血は鉄の不足による貧血であり、影響があるのは赤血球のみです
3.巨赤芽球性貧血はビタミンB12の欠乏による貧血ですが、DNA合成に障害を及ぼすため、白血球など他の血球にも影響が及びます。→汎血球減少
4.再生不良性貧血は、骨髄の造血異常が起こる疾患で、造血幹細胞そのものが異常になります。すなわち、造血幹細胞から作られる様々な細胞が減少するのです。→汎血球減少
5.自己免疫性溶血性貧血は、自己抗体により赤血球が溶血してしまうことによる貧血で、影響は赤血球のみです
以上のことから、赤血球のみに影響する貧血である1,2,5が判定できれば、消去法で3,4という答えにたどり着くこともできます
MT69-AM 14 末期慢性腎不全で認められるのはどれか。2つ選べ。
- 低リン血症
- 低カリウム血症
- 低カルシウム血症
- 低ナトリウム血症
- 低マグネシウム血症
腎不全は大変重要な病態なので、仕組みからしっかり理解しましょう。
腎臓では電解質がどのように動いているのかを理解することが大切で、覚えるべきポイントは2点です。
腎臓の尿細管では、
・Na, Caは再吸収している。
・K, P, Mgは排泄している。
つまり、腎臓が悪くなると、
・Na, Caの再吸収ができなくなり、血中から流れていって低値
・K, P, Mgは排泄ができなくなり、血中に溜まるので高値
また、基本的にはNaとK、CaとPは逆の動きをします。(どちらかが上がればどちらかが下がる天秤のような関係)
よって、腎不全の状態では
低Na, 低Ca, 高K, 高P, 高Mg ということで、答えは3,4になります
MT69-AM 15 メタボリックシンドロームの診断基準に含まれるのはどれか。 2つ選べ。
- 総コレステロール 220mg/dL以上
- トリグリセライド150mg/dL以上
- HDLコレステロール 40mg/dL 未満
- LDLコレステロール 140mg/dL以上
- Non-HDLコレステロール 170mg/dL以上
答えは2,3です
メタボといえばTG(中性脂肪)は当然として、
コレステロールはHDLが低い場合を基準にしていると覚えておきましょう
第69回の解説がスタートしました!ここから国試合格を目指して、ともに頑張りましょう!
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