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国試かけこみ寺です!
令和4年2月16日(水)に実施された
第68回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説しています!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp220421-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
- MT68-PM81 検査まで検体を全血のまま冷蔵保存してもよいのはどれか。
- MT68-PM82 抗原抗体反応に関与しないのはどれか。
- MT68-PM83 乳癌の腫瘍マーカーはどれか。
- MT68-PM84 直接抗グロブリン試験について正しいのはどれか。
- MT68-PM85 血液型検査の結果を以下に示す。血液型を確定するために必要な検査はどれか。
- MT68-PM86 胎児・新生児溶血性疾患の原因となる不規則抗体はどれか。2つ選べ。
- MT68-PM87 貯血式自己血輸血について正しいのはどれか。2つ選べ。
- MT68-PM88 A 型患者の骨髄移植で、ドナー血液型と移植後1週間の輸血用血液製剤の血液型との組合せで正しいのはどれか。
- MT68-PM89 オモテ検査で B 型、ウラ検査で O 型と判定された。原因となるのはどれか。2つ選べ。
MT68-PM81 検査まで検体を全血のまま冷蔵保存してもよいのはどれか。
1.抗核抗体
2.寒冷凝集素測定
3.クリオグロブリン
4.直接抗グロブリン試験
5.Donath-Landsteiner 試験
各選択肢が「何を調べているのか、冷蔵の影響があるのか」を説明できるかどうかがポイントです
1.抗核抗体は蛍光染色をし顕微鏡観察を行い、自己抗体を検出する検査です。抗核抗体は冷蔵保存をして問題ありません。よって、正解は1になります
2.寒冷凝集素測定ー寒冷凝集素とは、低温になると活性化し赤血球に結合するIgMの自己抗体で、マイコプラズマや、ウイルス感染後に出現することもあります。
そのため、事前に全血を冷蔵保存してしまうと、活性化してしまい検査時に正しい測定ができません。
3.クリオグロブリンークリオグロブリンはM蛋白の一種で、低温で白濁凝固します。加温すれば、また溶解するとされますが、冷蔵保存では正しい結果が得られません。
4.直接抗グロブリン試験は、「赤血球に結合している抗体を調べる検査」です。一見、冷蔵の影響はないように思えますが、寒冷凝集素も調べるものの中に含まれます。もし全血で冷蔵保存した場合、寒冷凝集素が活性化し、補体も作用し溶血してしまうなどの影響が考えられます。
5.Donath-Landsteiner 試験
Donath-Landsteiner抗体とは、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)で出現する、冷式の自己抗体です。こちらも全血を冷蔵保存してしまうと、寒冷凝集素との区別がつかないなどの問題が出てきます。
低温で活性化してしまい正しく測定できない、という知識を問いている問題でした。
MT68-PM82 抗原抗体反応に関与しないのはどれか。
1.共有結合
2.水素結合
3.疎水結合
4.イオン結合
5.ファンデルワールス力
これは覚えているしかない問題で、正解は1です
共有結合は非常に強い結合であり、抗原抗体反応には見られません
抗原抗体反応は、非共有結合であり、選択肢2~5のすべての結合が関わっています
MT68-PM83 乳癌の腫瘍マーカーはどれか。
1.CA15-3
2.CA19-9
3.CYFRA21-1
4.NSE
5.SCC
腫瘍マーカーは暗記するしかありません
正解は1です
↓以下の記事で過去に出てきた腫瘍マーカーの過去問を見ることができます!ぜひ参考にしてみてください。(ちなみにCA15-3はあまり聞かれる頻度は高くないマーカーでしたが、今回は答えとなりました)
MT68-PM84 直接抗グロブリン試験について正しいのはどれか。
1.患者の血清を使用する。
2.反応増強剤に PEG が使用される。
3.交差適合試験の主試験に必要である。
4.不規則抗体スクリーニングに必要である。
5.溶血性輸血副反応が生じた際に必要である。
直接抗グロブリン試験は患者赤血球に既に結合している抗体を直接検出することが目的です。
目的は、溶血の原因抗体を探る、と言い換えても良いでしょう
溶血というキーワードを辿れば、5が正解であるといきつけます
ちなみに、1~4は間接抗グロブリン試験のことです
↓以下の記事で直接と間接の違いについても説明していますので、知識が曖昧な人は読んでみてください!
MT68-PM85 血液型検査の結果を以下に示す。血液型を確定するために必要な検査はどれか。
1.吸着解離試験
2.抗体同定試験
3.糖転移酵素測定
4.D 陰性確認試験
5.直接抗グロブリン試験
まずは、ABOのオモテ検査とウラ検査に矛盾がないかを確認します
オモテ検査:抗A・抗Bが0
ウラ検査:A球・B球が4+、ということで
どちらもO型判定で問題ありません
残るはRhDですが、抗Dが0です、RhDはこの結果だけで陰性と判定してはいけません
抗Dの0は判定保留になります、よってこの後行うべきなのは4.D陰性確認試験です
D陰性確認試験で、凝集が見られればWeakDとなります
MT68-PM86 胎児・新生児溶血性疾患の原因となる不規則抗体はどれか。2つ選べ。
1.抗 Bga
2.抗 c
3.抗 E
4.抗 Lea
5.抗 N
新生児溶血性疾患に関して、最も問題になるのはRh式血液型です
特に重篤なものとして抗D、抗c、抗E を覚えておきましょう。
抗C、抗eは影響は軽度とされています
正解は2,3になります
MT68-PM87 貯血式自己血輸血について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.手術前日に貯血する。
2.待機手術患者が適応となる。
3.80 歳以上の高齢者は禁忌である。
4.体重 50 kg 未満の患者は禁忌である。
5.肝炎ウイルス感染症のリスクを回避できる。
まずは貯血式自己血輸血について理解しましょう。
患者さんが予め手術の数週間前から採血をし、自分自身の血液を保存して、手術時に自分自身の血液を戻すということです。状態が良好であれば貯血可能で、自分自身の血液なので、免疫の副作用が無く、感染症も心配ないです。年齢体重制限はありません。
選択肢を見ていくと
1.手術前日に貯血する。→前日では血を抜かれたばかりの手術になるので✕
2.待機手術患者が適応となる。→基本的に時間的余裕のある患者に適応◯
3.80 歳以上の高齢者は禁忌である。→年齢制限はないので✕
4.体重 50 kg 未満の患者は禁忌である。→体重制限はないので✕
5.肝炎ウイルス感染症のリスクを回避できる。→自分の血を戻すだけなのでリスクなし◯
ということになります
MT68-PM88 A 型患者の骨髄移植で、ドナー血液型と移植後1週間の輸血用血液製剤の血液型との組合せで正しいのはどれか。
1.ドナー O 型 ー赤血球輸血は A 型
2.ドナー O 型 ー血小板輸血は O 型
3.ドナー B 型 ー新鮮凍結血漿輸血は O 型
4.ドナー B 型 ー赤血球輸血は AB 型
5.ドナー B 型 ー新鮮凍結血漿輸血は AB 型
難しい問題ですが、こちらも問題の意図を理解していきます、骨髄移植ではドナー由来の血液型に変化します。ただし、ドナーの血液型が持つ抗体も持つことになると考えます。そして移植後1週間なのでまだもともとの患者血球も残っていると考えることになります。
もう少しわかりやすく箇条書きでまとめると
- 骨髄移植を受けた患者は、移植以降、血球(赤血球、白血球、血小板)がドナー由来のものが作られるようになる
- 移植直後では元々の自分の赤血球や抗体も残っている
- 移植後、ドナーの白血球が作られると、ドナーの血液型が持つ抗体も作られる(A型のドナーなら抗B抗体が作られる)
- 将来的には、完全にドナー由来の血液型の細胞に入れ替わる
この問題は
・赤血球を輸血する場合は、患者の抗体+ドナーの抗体の影響を考え
・血小板・血漿を輸血する場合は、患者血球+ドナー血球の影響
を配慮します
選択肢を見ていきます
1.ドナーO型なので、抗A、抗Bを持ちます。そのためA型の赤血球輸血は✕
2.ドナーO型ですが、元々の患者血球A型もある状態。O型の血小板製剤に抗A、抗Bが含まれており、元々の患者赤血球(A)が溶血するので、✕
3.ドナーB型なので、抗Aを持ちます。さらにO型の血漿にも抗A、抗Bが含まれているので、元々の患者赤血球(A)、およびドナー血球(B)への反応を助長する為、✕
4.ドナーB型なので、抗Aを持ちます。(元々A型なので抗Bもあります。)そのため、AB型の赤血球輸血は✕
5.ドナーB型の赤血球と、元々のA型の赤血球が混在している状態です。AB型血漿には抗A、抗Bが存在しませんので影響がなく輸血可◯正解
以上を見ると、大変ややこしい問題に思えますが
この問題に関しては、シンプルに
・O型赤血球は抗原を持たないので万能に輸血可能
・AB型血小板・血漿は抗体を持たないので万能に輸血可能
と考えてもよいかもしれません。そう考えれば、
1.ドナー O 型 ー赤血球輸血は A 型
2.ドナー O 型 ー血小板輸血は O 型
3.ドナー B 型 ー新鮮凍結血漿輸血は O 型
4.ドナー B 型 ー赤血球輸血は AB 型
5.ドナー B 型 ー新鮮凍結血漿輸血は AB 型
実は選択肢の右側を見ると、万能に使えるのは5のAB血漿製剤であるとわかります
※もちろんこの考え方が通用しないパターンもあります
MT68-PM89 オモテ検査で B 型、ウラ検査で O 型と判定された。原因となるのはどれか。2つ選べ。
1.後天性 B
2.寒冷凝集素
3.不規則抗体
4.無ガンマグロブリン血症
5.直接抗グロブリン試験陽性
このような問題は凝集判定をまず実際に書き出しておきましょう
オモテ:抗A-, 抗B+
ウラ:A球+, B球+
オモテとウラの不一致を見分けるポイントは、選択肢が赤血球の原因であるのか、抗体の原因であるのかを見分けることです
1.後天性 B→赤血球がAからBになる
2.寒冷凝集素→冷式抗体
3.不規則抗体→抗体
4.無ガンマグロブリン血症→抗体が無い
5.直接抗グロブリン試験陽性→赤血球に何らかの抗体がついている
次に、オモテ真・ウラ偽の場合、ウラ真・オモテ偽の場合、それぞれを考えます
【オモテ真B・ウラ偽Oの場合】
ウラがOということは、A球もB球も凝集したということで、これは患者血清中の抗体のせいで凝集したといえます。(本来はB型なのでA球のみ凝集、抗Aをもつ)
これに該当するのは、2.寒冷凝集素と3.不規則抗体になります。これが答えです。
一応、【オモテ偽B・ウラ真O】もみていきます
O型が真であるとするなら、オモテ検査は抗B血清で誤って凝集した、ということになります。
これは選択肢の中では考えられません。抗B血清の試薬にコンタミがあった、などくらいです。(国試には試薬のコンタミなどということは普通出ません)
以上から、2.3の正解が導き出されます
他の選択肢のパターンを詳しく解説すると
1.後天性Bは元々A型の人が、細菌感染などをきっかけに、B型になることで
これはA型血球の糖鎖構造の変化が根本の原因です。
後天性Bは、オモテがB、ウラがA型となります。
4.無ガンマグロブリン血症は、生まれつき抗体が作れない(極めて少ない)病気です
そのため、ウラ検査で両方凝集しないので、AB型と判定されます
5.直接抗グロブリン試験陽性、ということは赤血球に既に抗体が結合しているということです
つまり、オモテ検査は両方凝集するはずで、AB型と判定されます
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