【第63回臨床検査技師国家試験】PM71, 77-81の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

平成29年2月22日(水)に実施された

臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp170425-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT63-PM71 プラスミドで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.RNA である。
2.一本鎖である。
3.細胞質内に存在する。
4.ウイルスの構成成分である。
5.抗菌薬耐性の情報を伝達する。

プラスミドとは、原核生物(細菌)が持つ、染色体以外の環状DNAのことで、核ではなく細胞質に存在しています(そもそも原核生物には明確な核がありません)

耐性遺伝子などが組み込まれており、他の菌へ接合伝達することで耐性菌増加の原因ともなります

関連問題:MT67-AM78 プラスミドについて誤っているのはどれか。

MT65-PM75 プラスミドによる耐性遺伝子の伝播に該当するのはどれか。

MT63-PM77 ワクチン接種で予防可能な髄膜炎の原因菌はどれか。2つ選べ。

1.Escherichia coli
2.Haemophilus influenzae
3.Neisseria meningitidis
4.Streptococcus agalactiae
5.Streptococcus pneumoniae

選択肢にあるのは全て、髄膜炎の原因菌です

この中でワクチンで予防可能なのは

2.Haemophilus influenzae:インフルエンザ菌
3.Neisseria meningitidis:髄膜炎菌
5.Streptococcus pneumoniae
:肺炎球菌

の3つです(2つ選べとありますが、答えが3つある問題でした)

特に日本では小児で、Hib(ヒブ)ワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されます

※Hibとは Haemophilus influenzae b の頭文字です

MT63-PM78 イムノクロマト法による抗原検査が行われているのはどれか。2つ選べ。

1.RS ウイルス
2.EB ウイルス
3.麻疹ウイルス
4.ムンプスウイルス
5.インフルエンザウイルス

これも覚えるしかない問題です。正解は1,5です

イムノクロマト法とは毛細管現象を利用した、免疫測定法です。サンプルを滴下するとメンブレン(膜)状を移動し、メンブレンに固定された抗原や抗体に、検体中の目的成分がくっつくと線が浮き出ます。非常に簡便であることから、POCT(ベッドサイドでできる検査)としてよく用いられます。

一般的には妊娠検査薬がイメージしやすいかと思います。

妊娠検査薬のイラスト(陽性)
↑イムノクロマトによる妊娠検査薬のイメージ。灰色の枠はコントロール、赤枠が陽性、2本の線が出れば妊娠の可能性が高いと考えられる。

1.RSウイルスは風邪症状を引き起こし、乳児では肺炎や気管支炎を起こす場合があります

5.インフルエンザは言わずもがなですが、イムノクロマトによるA型, B型の判定が行われています。

どちらも風邪様症状を伴います、覚えておくようにしましょう!

MT63-PM79 細胞傷害性 T 細胞の T 細胞レセプターで正しいのはどれか。

1.遺伝子の再構成は起きない。
2.MHC クラスⅡ拘束性を持つ。
3.CD4 分子と共同して機能する。
4.抗原提示細胞からの刺激を受ける。
5.α 鎖、β 鎖、γ 鎖および δ 鎖からなる四量体である。

免疫細胞の細かい知識についてですが、少し噛み砕いて説明します

細胞傷害性 T細胞はCD8陽性のキラーT細胞のことであり、抗原提示細胞からの刺激を受けることで、感染源を攻撃できるようになります

この刺激を受けるのがT細胞レセプター(TCR:T cell receptor)の役割です

答えは4になります

他の選択肢の解説は説明が煩雑になるため省略します

 

免疫は勉強が進むと面白い反面、深みにハマりやすくもあります

詳しく勉強したい人は詳細を調べるのは良いことなのですが、苦手な人はすなおにそういうものなんだなと、とりあえず問題を解き進めることをおすすめします。

MT63-PM80 免疫グロブリンで正しいのはどれか。

1.IgA は胎盤通過性がある。
2.IgD は T 細胞に存在する。
3.IgE は肥満細胞に結合する。
4.IgG は補体活性化能がない。
5.IgM は分泌成分と結合している。

各抗体の最低限覚えるべき特徴、まとめは以下のとおりです

IgG

胎盤通過性がある
免疫グロブリンの中では最も多い

IgM

5量体である(5本の抗体が1セット)
5量体なので分子量は最も大きい
感染後に最も早く産生される

IgA

分泌型も存在する(唾液や母乳にもある)
分泌時は2量体である

IgE

I型(=即時型、アナフィラキシー型)アレルギーに関与

1.IgA Gは胎盤通過性がある。→胎盤通過といえばIgGです。生まれたばかりの赤ちゃんは胎盤を通じてもらったお母さんのIgGで免疫を補っています。

2.IgD は T B細胞に存在する。→IgDはほとんど不明な点が多いので選択肢に出てきてもあまり気にしなくていいと思います。

3.IgE は肥満細胞に結合する。正しいIgEが肥満細胞に結合することで、ヒスタミンなどを放出します。ヒスタミンの主作用は血管透過性亢進です。花粉症で鼻水や涙が止まらないのはこのためです。

4.IgG は補体活性化能がない。ある補体経路の中で抗体が関与するのは古典経路です

5.IgM Aは分泌成分と結合している。 →分泌と言えばIgAです。唾液や母乳に含まれています。


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MT63-PM81 地帯現象がみられるのはどれか。2つ選べ。


1.蛍光抗体法
2.免疫比ろう法
3.酵素免疫測定法
4.化学発光免疫測定法
5.ラテックス凝集比濁法

地帯現象(プロゾーン)

抗原抗体反応で、抗原 or 抗体が過剰な時に、反応が抑制される(=偽低値)となる現象のことです。特に、測定に抗原抗体複合体が関与する比濁法・比ろう法・凝集・沈降反応などで起こります。抗原と抗体が上手く複合体を作るためには、互いに適度な濃度が必要で、どちらかが過剰な検体だと複合体が上手く作れず偽低値になってしまうのです。

これらのことから、答えは、 2.免疫比ろう法 、5.ラテックス凝集比濁法 になります

 

1.蛍光抗体法、 3.酵素免疫測定法=EIA、4.化学発光免疫測定法=CLIA

これらは抗体に標識をして行う測定方法です。標識抗体が目的の抗原に結合するわけですが、抗原が過剰だと抗原同士で邪魔をしあって、抗体と結合しにくくなる、その結果偽低値を示すことがあります。これをフック効果(フック現象)といい、どちらも偽低値を示すものですが、プロゾーンと区別されます。

まとめると

プロゾーン: 比濁法・比ろう法・凝集・沈降反応 (全て非標識免疫測定)

・フック現象:EIA, ELISA, CLIAなど、標識抗体を測定する反応(標識免疫測定)

 

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コメント

  1. 匿名 より:

    こんにちは。
    質問なのですが、57回の午後80の問題では
    「EIAにおけるプロゾーン現象は起こらない」という問いに対して
    誤りとなっていました。
    今回の問題とは問われていることがちがうのですか?

    • ご質問、ありがとうございます。恐らくプロゾーンとフック現象のはっきりとした区別がなされていない問題が存在しているのだと思います。57回のPM80は明らかに5が正解です。1のプロゾーン現象はフック現象も含む意味合いに捉えているのかもしれません。地帯現象とはプロゾーン現象とフック現象の両方を含んでいるという記述も見受けられたりと、中々微妙な解釈が多いようです。この問題にあまり囚われ過ぎなくてもよいかと思われます。曖昧な解答で申し訳ございません。

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