【第63回臨床検査技師国家試験】PM82-89の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

平成29年2月22日(水)に実施された

臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp170425-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT63-PM82 B 型肝炎ウイルスワクチンの効果を判定する検査はどれか。

1.HBc 抗体
2.HBe 抗原
3.HBe 抗体
4.HBs 抗原
5.HBs 抗体

B型肝炎には、HBs, HBc, HBeの3つの抗原・抗体が関与します

国家試験的に重要な部分だけをまとめると

  • HBs抗原(+)-現在、感染中(感染初期)
  • HBe抗原(+) -感染の強い時期
  • HBs抗体(+) -感染の治癒、ワクチンで抗体獲得
  • HBe抗体(+) -感染の落ち着いた回復期

すなわち問題にある、ワクチンの効果を判定するのは5.HBs抗体になります

HBs抗体は中和抗体なので、ウイルス感染を防ぐ効果があるというわけです

※ C型肝炎に関しては、ワクチンはありません。感染した際にできるHCV抗体はC型肝炎ウイルスの感染を表しており中和抗体ではありません。

↓更に詳しい解説記事はこちら!

MT63-PM83 肝細胞癌の腫瘍マーカーはどれか。2つ選べ。

1.PSA
2.CEA
3.AFP
4.CA19-9
5.PIVKA-Ⅱ

腫瘍マーカーは覚えたもの勝ち、覚えていれば絶対点が取れるものです

特にこの問題に出ている、肝細胞癌マーカー、3.AFP、5.PIVKA-Ⅱは絶対に覚えましょう

 

他選択肢についても解説します

1.PSAは前立腺癌

2.CEAは胃癌、大腸癌、胆癌、膵癌など種類が多いため、他のものをまず優先的に覚えればOKです

4.CA19-9は膵癌

赤字は出現頻度が高いので必ず覚えましょう!

MT63-PM84 ヒト免疫不全ウイルスHIVの標的分子はどれか。

1.CD1
2.CD4
3.CD8
4.CD20
5.CD34

ヒト免疫不全ウイルスは後天性免疫不全症候群などを引き起こすウイルスですが

その実態は、ヘルパーT細胞に感染し増殖後、破壊することです(ヘルパーT細胞は獲得免疫の司令官なので、極度に免疫が低下します)

すなわち、ヘルパーT細胞のマーカーであるCD4を標的とします、答えは2です

(キラーT細胞はCD8です)

MT63-PM85 橋本病でみられる自己抗体はどれか。

1.抗 CCP 抗体
2.抗基底膜抗体
3.抗リン脂質抗体
4.抗ミトコンドリア抗体
5.抗サイログロブリン抗体

橋本病は慢性甲状腺炎、甲状腺機能低下症を引き起こす自己免疫疾患です

正解は5.抗サイログロブリン抗体です、ただし、バセドウ病でも出現します

バセドウ病で特異的に出現する自己抗体は抗TSHレセプター抗体です

 

他の自己抗体も見ていきましょう

1.抗 CCP 抗体ー関節リウマチ
2.抗基底膜抗体ーGoodpasture 症候群
3.抗リン脂質抗体ー全身性エリテマトーデス、習慣性流産など
4.抗ミトコンドリア抗体ー原発性胆汁性肝硬変

自己抗体と疾患の組み合わせはノートにまとめるなどで対策をしたほうがよいでしょう

MT63-PM86 血清補体価CH50の測定で用いられる反応はどれか。

1.中和反応
2.沈降反応
3.溶解反応
4.赤血球凝集抑制反応
5.ラテックス凝集反応

血清補体価:CH50 Mayer(マイヤー)法

抗体を感作させたヒツジ赤血球に検体血清を加えると、検体血清中の補体が古典経路を通じて活性化する。(反応にはカルシウムが必要、古典経路は抗体で活性化)。ヒツジ赤血球の溶血が50%となる時の補体活性を1単位としてCH50で表す。現在はやや原理の異なる自動分析法が主流。

つまり、CH50は赤血球の溶血度合いで補体活性を測定する検査ということです。

このことから、原理は3.溶解反応になります(菌や赤血球の細胞膜を壊すことを溶解と言います)

ちなみに、CH50の臨床的意義は低下することにあり、CH50の低下は

  • 補体が活性化されて消費された
  • 補体の量が低下→肝機能、腎機能低下
  • 補体欠損症

これらの理由が重要です

MT63-PM87 タイプ・アンド・スクリーンで正しいのはどれか。

1.術前に検査は行わず検体のみ採取しておく。
2.患者の血液型検査だけを術前に済ませておく。
3.患者の血液型と不規則抗体の検査を術前に済ませておく。
4.患者に使用予定の在庫血液との交差適合試験を術前に済ませておく。
5.すべての在庫血液との交差適合試験を術前に済ませておく

T&S(タイプ・アンド・スクリーン)

(緊急などではない)待機手術で、出血量が少なく輸血の実施可能性が低い場合に、予め患者のABOとRhを判定(T:タイピング)、同時に不規則抗体を調べ(S:スクリーニング)、RhD陽性、不規則抗体が陰性であった場合に、術前の交差適合試験を省略する方法です。

もし輸血が必要な事態になれば、在庫製剤のオモテ試験か生食法でABO適合のみを確認して輸血します。T&Sの目的は、製剤を無駄にしないこと、最大限の安全に配慮した業務の省略化です。

ということでこの問題はT&Sについて知っているかどうかの問題です

答えは3.患者の血液型と不規則抗体の検査を術前に済ませておく。です

MT63-PM88 カラム法による血液型検査の結果 別冊No. 15を別に示す。判定として正しいのはどれか。

1.オモテ検査 AB 型、ウラ検査 AB 型、Rh 陽性
2.オモテ検査 AB 型、ウラ検査 O 型、Rh 陰性
3.オモテ検査 O 型、ウラ検査 AB 型、Rh 陰性
4.オモテ検査 O 型、ウラ検査 O 型、Rh 陰性
5.オモテ検査 O 型、ウラ検査 O 型、Rh 陽性

第63回臨床検査技師国家試験 別冊より引用

カラム法の判定法は必ず覚えましょう。

下が陰性上が陽性(凝集です

つまり、写真の項目は全て陰性です

正解は、3.オモテ検査 O 型、ウラ検査 AB 型、Rh 陰性 になります

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MT63-PM89 貯血式自己血輸血で正しいのはどれか。

1.同種免疫を防止できる。
2.緊急手術時で適応となる。
3.取り違え輸血を防止できる。
4.保管管理体制が不要である。
5.家族血を代用することができる

こちらも輸血に関する用語を知っているか、という問題

貯血式自己血輸血は、その名のとおり、予め採血をして患者自身の血液を貯めて、手術時などに使用するものです

そもそも自分の血液ですから、 答えは1.同種免疫を防止できる。です

2.緊急手術時で適応となる。✕→事前に余裕を持って貯血する必要があります
3.取り違え輸血を防止できる。✕→取り違えは人為的ミスなので完全には無くせません
4.保管管理体制が不要である。✕→保管管理のいらない輸血などありません
5.家族血を代用することができる。✕→家族とはいえ他人です

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