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国試かけこみ寺です!
今回は、非蛋白性窒素についてです!
(非蛋白性窒素とは、体内の蛋白質以外で窒素:N を含む物質のことです、他に尿酸、アンモニアもありますが、今回は以下の2つに絞って解説します)
- クレアチンとクレアチニン
- 尿素と尿素窒素
名前がめちゃくちゃ似ていますが、これらの違いをきちんと説明できるでしょうか
いずれも主に腎機能を測るための重要な検査値になります
この記事では以下のことをわかりやすく解説します!
- クレアチンとクレアチニンの違いとは?
- 尿素と尿素窒素の違いとは?
- これらの検査値の読み方・臨床的意義・病態
国家試験の分野では、地味ですが意外と出現頻度も高いのでしっかり覚えていきましょう
クレアチンとクレアチニン
簡潔に説明すると、
クレアチンは筋肉に存在する有機酸です
クレアチンキナーゼ(CK)が、クレアチンにリン酸を付加してクレアチンリン酸となります
(逆反応もCKが行っています)
クレアチン+ATP ↔ クレアチンリン酸+ADP
クレアチンリン酸は筋肉のエネルギー源として使用されます
クレアチンリン酸が消費された後の、ゴミがクレアチニンです
クレアチニンは基本的にすべて腎臓で濾過され排泄されます
このことから、クレアチニンが血中で上昇しているということは、腎での排泄に何か問題がある可能性が高い、ということになります
また、尿中にどれだけクレアチニンが排泄されているかの指標がクレアチニンクリアランスです
クレアチニンクリアランスが低下するということは、腎機能の低下を意味します
チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー
・クレアチニンの基準値
基準範囲は国家試験での出題頻度は高くないですが、ざっくり覚えるならば
基準値1.0mg/dL以下、5.0以上は異常髙値(女性の方が基準値低い、後述します)
臨床的意義
クレアチニンから解説していきます
クレアチニンは筋肉でエネルギーを使った後のゴミ、尿中に排泄される
これをしっかり覚えておけば、病態と結びつけやすいです
・血中クレアチニンの増加する病態
・腎糸球体機能の低下(腎不全、腎炎など)ー濾過機能が低下し、血中に増える
・筋細胞の極端な肥大(先端巨大症など)ー筋肉量が異常に増え、エネルギー消費が激しい
・血中クレアチニンの低下する病態
・尿崩症ークレアチニンは全て濾過されるので大量に排泄される
・筋萎縮(筋ジストロフィーなど)ー筋細胞が萎縮し、エネルギーがほとんど使われない、すなわちクレアチンは増加する
次にクレアチンについてですが、筋肉でエネルギーが使われない場合、クレアチンリン酸が必要ないですから、クレアチンが増加します
血中クレアチンの増加する病態
・筋疾患(筋ジストロフィー、重症筋無力症、筋炎など)ー筋肉が使われないと、クレアチンは溜まる
(筋崩壊により、尿中にも溢れるため、尿中クレアチンも診断に有用)
クレアチニンは主に腎機能を調べるためですが、クレアチンは上記のような筋疾患を調べるために用いられます
クレアチンとクレアチニンの性差と加齢の影響
ここまで読んで分かる通り、筋肉量の影響を受けますから
・クレアチニンは男性の方が高値、女性低値
・クレアチンは逆で、女性の方が高くなる
では、加齢ではクレアチニンはどうなるでしょうか
加齢すると筋肉量が落ちるから低下?….ではありません
それ以上に、加齢による腎機能低下の影響を大きく受けるため
加齢(60歳以上)ではクレアチニンは上昇していきます
クレアチンとクレアチニンがよくわからなくなるのは、名前が似ているせいです
そのため、クレアチニンが筋肉使われた後のゴミなんだ、ということをしっかり頭に焼き付けておきましょう
尿素と尿素窒素(BUN)
さて、次に尿素と尿素窒素についてですが、この2つは同一のものです
尿素の化学式は CO(NH2)2 (分子量60)
尿素中に含まれる2分子のN これが尿素窒素(分子量28)です
尿素は英語でUrea、
BUN:Blood Urea Nitrogen =血中の尿素窒素 となります
検査値はBUNとして測定されているのです
そのため、実際の尿素量を数値化する時には、BUN(分子量28)を尿素(分子量60)に変換する必要があります
結論から言うと、BUN量に2.14(60/28)を掛けると尿素量に変換できます
尿素量=
尿素窒素量(BUN)×2.14
※国家試験ではこの変換の計算問題がよく出ますので、後に解説します
チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー
BUNの臨床的意義
そもそも尿素はなぜ体内で発生するのかというと、アンモニアを無毒化するためです
このアンモニアを無毒化する仕組みが、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)です
アンモニアの発生は主に蛋白質(アミノ酸)の代謝によります
すなわち、流れをまとめると
蛋白質(アミノ酸)→ アンモニア → 尿素 →腎臓で排泄
以上のことを知っていれば、血中尿素窒素が増加する原因をイメージしやすくなります
・尿素窒素(BUN)が上昇する病態
・高蛋白食ー現代では過剰なプロテイン摂取などが挙げられます
・消化管出血ー消化管の出血が起こると、破壊された血球の蛋白質が血中に吸収されBUNが増加します
・腎不全、腎炎などー尿素が排泄されにくくなり、血中BUNが増加します
※消化管出血と腎不全を見分けるには、尿素とクレアチニンを比較することが有効です。尿素のみ上昇、クレアチニンに変化がなければ消化管出血由来であるとわかります。腎機能が低下しているなら、クレアチニンも上昇するはずだからです。
尿素↔BUN の計算問題
国試の計算問題で尿素・BUNの変換がありますが、計算の中ではコツを覚えてしまえばかなり点を取りやすい部類です
以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください
ちなみに、臨床では通常BUNで測定しますので、国試用の知識と割り切ってしまえばOKです
まとめ
- クレアチニンは筋肉のエネルギー源であるクレアチンリン酸が消費されるとできるゴミである
- クレアチニンは尿に排泄されるので、腎機能が低下すると血中クレアチニンは上昇
- クレアチンは筋萎縮があると、エネルギーとして使われなくなり、増加する
- クレアチニンは筋肉量により男性髙値、女性低値
- 尿素窒素(BUN) とは、尿素中の窒素のことである
- 尿素窒素を尿素量に変換するには、2.14を掛ける
- 蛋白質(アミノ酸)→ アンモニア → 尿素 →腎臓で排泄
- 尿素(オルニチン)回路は肝臓で行われる
- BUN高値の病態は、蛋白質過剰摂取、消化管出血などがある
ここまで読んで頂きありがとうございます!
勉強お疲れさまでした。
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