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国試かけこみ寺です!
臨床化学のデータの読み方と病態についてシリーズ化して記事を書いております!
臨床化学は多くの人が難しいと感じる科目ですが、丸暗記だけで対応することはかなり難しいです
そのため、なぜこの病気でこの項目が上がるのか・下がるのか、など一度は理由を知っておくと、いざ暗記するときも頭に残りやすくなります
今回は蛋白質関連についてです
蛋白質はあらゆる病態で非常に重要な指標になります!
一言で蛋白質といっても検査値で最も重要なのは、総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)です
グロブリンとは、アルブミン以外の蛋白質すべてを指します
グロブリンの中で、免疫グロブリン(γ-グロブリン)と呼ばれるのが抗体です
他に、血清の電気泳動分画で分けられるものとして、α1, α2, β, グロブリンもあります
また、炎症で増加する急性相反応蛋白についても解説します
今回は、これら血清蛋白質について、臨床検査技師国家試験ベースでわかりやすく解説していきたいと思いますのでぜひ御覧ください!
総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)
基準範囲 覚えやすいように丸めています、基準値は施設により異なる場合があります
- 血清総蛋白(TP):6.5~8.0g/dL
- アルブミン(Alb):4.0~5.0g/dL
血清の総蛋白のうち、6割はアルブミンです。ざっくり覚えるのであれば、TP 7.0、Albはその6割くらいと覚えておくとよいでしょう。
アルブミンの増加する疾患というのは、ほぼありません。そのため、重要なのは低アルブミン血症であり、最も代表的な疾患はネフローゼ症候群です。
ネフローゼ症候群とは、腎臓の機能低下による蛋白の漏出、それに伴う低蛋白血症を伴う症候群です。ネフローゼの判定基準は、血清アルブミン値3.0 g/dL以下、血清総蛋白量 6.0 g/dL 以下、蛋白尿:3.5 g/日以上が持続などがあります(ネフローゼ症候群診療ガイドライン 2017より)
チェックポイント ●重要度が高いものにマーカー
アルブミンの基本情報
・分子量約 66,000
・血中総蛋白の約60%を占める
・アルブミン濃度が高ければ膠質浸透圧も高くなる
(膠質浸透圧とは血管内に水を保持する力、つまり低アルブミンになると血管外に水が漏れ出し浮腫になる)
・等電点は約4.7(酸性寄り)、セア膜電気泳動では陽極側に泳動
・肝臓のタンパク合成を反映する、肝機能指標でもある
・急性炎症で低下する
運搬や結合に関して
・体内のカルシウムの半分はイオン型、約4割がアルブミンと結合している(タンパク結合型)
→そのため低アルブミン血症ではカルシウムの測定値が低値になる
・血中の甲状腺ホルモンも一部運搬する
・非抱合型(間接)ビリルビンも運搬する
・体内に長期滞留した抱合型(直接)ビリルビンとアルブミンが結合すると、δ-ビリルビンになる
・血中の遊離脂肪酸もアルブミンと結合して運ばれる
測定について
BCG(ブロムクレゾールグリーン)法 630 nmで測定(原理は蛋白誤差法)
※ BCG法は特異性は低い
これを改良したBCP(ブロムクレゾールパープル)改良法が現場では一般的
・臥位(寝ている状態)よりも、座位・立位の方が1割ほど高値になる(寝ている時よりも、水分が血管の外に出やすいので、血液が濃縮される)
低アルブミン:要因とそのメカニズム
・腎不全・ネフローゼ症候群:糸球体機能低下により蛋白が尿に出ていってしまう
・肝硬変:肝臓はアルブミンを始めとした蛋白質合成を行うため、合成機能が低下すると低蛋白血症になる
※肝機能低下=蛋白質合成低下になると、基本的にアルブミン以外の蛋白質も低値になります
グロブリン
グロブリンとはアルブミン以外の蛋白質を指す言葉です
血清電気泳動で(+)Alb, α1, α2, β, γ(-) の順に泳動されます
- α1グロブリン:α1アンチトリプシン、α1酸性糖蛋白(アシドグリコプロテイン)
- α2グロブリン:α2マクログロブリン、セルロプラスミン、ハプトグロビン
- βグロブリン:トランスフェリン、ヘモペキシン、(補体C3,C4、フィブリノゲン)
- γグロブリン:IgG、IgA, IgM、CRP
※ CRPは抗体ではありませんがγ分画に泳動されます
(グロブリンの中で量が多い順に並べるとγ>β>α2≧α1 となる)
国試で特によく出てくる知識、重要ポイントを絞って、以下にまとめます
α2分画:セルロプラスミン
セルロプラスミンは銅(Cu)の輸送蛋白です
重要なのはその役割で、鉄(Fe)の酸化反応(Fe2+ → Fe3+)に必要です
ヘモグロビンに含まれる鉄は2+、トランスフェリンやフェリチンに含まれる鉄は3+です
銅なのに、このような鉄代謝に関与する、ということを是非覚えておきましょう
銅の先天性代謝異常症であるウィルソン病は組織に銅が沈着してしまうため、セルロプラスミンは低下します
α2分画:ハプトグロビン
赤血球が溶血などで壊れた時に、遊離したヘモグロビンを運搬する役割を持ちます
重要ポイントは、溶血疾患で低下するということです
一見ヘモグロビンと結合するのだから、溶血すると上がるように思えますが、
ハプトグロビンはヘモグロビンと結合し、脾臓で一緒に分解されます
そのため、溶血でハプトグロビンは低下します
β分画:トランスフェリン(Tf)
トランスフェリン(Tf)は鉄の輸送蛋白で、2分子のFe3+と結合します
血液中のTfのうち、3分の1が鉄と結合しています
残りの3分の2はフリーの状態です
そして、鉄と結合しているTfを血清鉄と言います
鉄と結合していないTfをUIBC(不飽和鉄結合能)と言います
これら2つを合わせたTfの総量をTIBC(総鉄結合能)と言います
以上をまとめると
TIBC(総鉄結合能)=血清鉄+UIBC(不飽和鉄結合能)
臨床血液学でも出てきますが、実はトランスフェリンの量を表している、というわけです
・鉄欠乏性貧血ではUIBCが上昇します
鉄が足りないと、体は鉄を集めるためにTfを合成します、しかし鉄は欠乏しているので、鉄と結合していないTf=UIBCが上昇します(結果的にTIBCも増えます)
逆に、再生不良性貧血ではUIBCが低下し、血清鉄が増加します
これは赤血球をうまく作れないために鉄が余ってしまい、Tfと鉄の結合(=血清鉄)が増え、その分、鉄と結合していないTf(=UIBC)が減るためです
β分画:ヘモペキシン
ヘモペキシンはハプトグロビンに次いで、ヘモグロビンを運ぶ蛋白質です
ハプトグロビンと同様に、溶血性貧血では低下します
β分画:フィブリノゲン
血液凝固の最終段階、フィブリンの元になる蛋白質です
通常、血清ではフィブリノゲンはほとんど存在しません
なぜなら、血清では凝固が起きているため、フィブリンになっているからです
そのため、フィブリノゲンの影響が出るのは、抗凝固剤を用いた場合(血漿)です
フィブリノゲンが含まれている分、血清よりも血漿の方がわずかに総蛋白が高値になると言えます
電気泳動をする場合には、フィブリノゲンのピークが分画の邪魔をするため、血漿を用いてはいけません
γ-グロブリン(免疫グロブリン)
免疫グロブリン=抗体も 蛋白質です
γ-グロブリンの基本については関連記事を御覧ください
γ-グロブリンの増加:要因とメカニズム
- 多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症
この2つの疾患のキーワードは、単クローン性=モノクローナルな抗体の増加です
多発性骨髄腫とは、癌化した形質細胞が異常なモノクローナル抗体を作り続ける病気です
癌化しているため、抗体としての防御性能がない異常なγ-グロブリンを作ってしまいます
マクログロブリン血症も、異常な単クローン性のγ-グロブリンが増える病気です
γ-グロブリンの低下:要因とメカニズム
- 無γ-グロブリン血症(Bruton型、 X連鎖無ガンマグロブリン血症ともいう)ー遺伝子変異によりB細胞が不全となって抗体が作れない
A/G比について
A/G比とは、A:アルブミンとG:グロブリンの割合です
アルブミンは総蛋白の約6割ですから通常はA/G比は2/1=2.0程度が目安です
A/G比は、アルブミンとグロブリンの割合を見ることによって、おおまかな病態を想定することができます
A/G比が高い場合
A/G比が高くなる、ということは、Aが増加またはGが低下ということになります
わかりにくければ具体的に数字を入れてみるとわかりやすくなります
例えば、A/Gは通常 2/1ですが3/1, 2/0.5 のようになった場合、A/G比は高くなると言えます
始めに述べたように、アルブミンの増加する疾患というのはほぼありませんから、
A/G比の増加は、グロブリンの低下を意味します
A/G比が低い場合
A/G比が小さくなるのは、アルブミンの低下もしくはグロブリンの増加です
病態としてはこちらの方が圧倒的に多いです
先に書いたように、アルブミンの低下は腎不全やネフローゼ症候群
グロブリンの増加は、多発性骨髄腫やマクログロブリン血症などがあります
急性相反応蛋白(APP)について
急性相反応蛋白(APP;acute phase protein)とは、炎症で上昇する蛋白質です
特に重要なものとしては
- ハプトグロビン:α2分画
- フィブリノゲン:β分画
- 補体:β分画
- C反応性蛋白(CRP):γ分画
- 血清アミロイドA蛋白(SAA)
が挙げられます
逆に、炎症で低下する蛋白質では
- アルブミン
- トランスフェリン
- トランスサイレチン
などが挙げられます
※トランスサイレチンは栄養指標蛋白で電気泳動ではアルブミンよりも陽極側に位置することからプレアルブミンとも呼ばれます
C反応性蛋白(CRP)
CRPは急性相反応蛋白の中で最も早くに上昇します
基準値は0.1mg/dL以下と非常に小さいですが、炎症が起きると一気に上昇します(一概には言えませんが、10を越えるとかなり炎症の度合いが大きいと言えます)
また、半減期が5,6時間程度と短いため、炎症が治まるとすぐに低下するため、炎症の状態の指標としてよく用いられています
血清アミロイドA蛋白(SAA)も似たような、急性相反応蛋白と思ってOKです
以上になります!何度も読み返して勉強に役立てば幸いです。
↓以下の関連記事もご参照ください
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