【臨床検査技師国家試験】遺伝子検査・PCRの過去問(61回~69回)を徹底解説!

MT国家試験

医療系国家試験の対策サイト 国試かけこみ寺です!

 

今回は臨床検査技師国家試験の「遺伝子分野」に焦点を当てます

COVID-19によって臨床検査技師が注目されることになった一番の要因は

「PCR検査」です

※ Polymerase Chain Reaction

 

実際に遺伝子検査はめざましい発展を遂げていますし

今後、問題が増える可能性は十分あり得ますので

遺伝子・PCRに関する過去問を確認していきたいと思います!

この記事では以下のことがわかります

・臨床検査技師国家試験 過去5年分の遺伝子検査

・PCR検査に関する問題・その問題に出てくる用語・検査法の解説

それではいってみましょう!

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MT国家試験 遺伝子検査に該当する過去問の解説 

MT61-PM10 PCR法の反応過程に含まれるのはどれか。2つ選べ

  1. アルキル化
  2. アニーリング
  3. トランスダクション
  4. ハイブリダイゼーション
  5. DNAポリメラーゼ伸長反応

知っているかいないか、という問題で答えは2,5です

卒業研究発表などでPCRを実際に行ったことがあれば、易しい問題ですね

 

PCRの反応過程をシンプルにまとめると以下のようになります

熱変性(デナチュレーション)96℃

アニーリング56℃~68℃ ※温度はプライマーによって異なる)

伸長反応(エクステンション)72℃

※ 伸長反応を行う酵素が DNAポリメラーゼ

この3ステップを1サイクルとして、目的の塩基配列を増幅させるのがPCRです

1サイクルで遺伝子は2倍になります、例えば30サイクル繰り返すと、2の30乗倍にも遺伝子は増幅されるわけですね

 

以下にPCR反応過程における重要なポイントを補足してまとめます

(特に重要な点はマーカーを引きます)

・一連のステップを行うPCR装置を、サーマルサイクラーと呼ぶ

熱変性の目的は、2本鎖のDNAを1本鎖にすること → 塩基同士の水素結合を切断する(可逆的=温度が下がればまた結合するから目的のDNAを増やすことができる)

・アニーリングの目的は、1本鎖になったDNAにプライマーを結合させること

・アニーリングの最適温度はプライマーのTm値に左右される

Tm値とは、プライマーと目的の塩基配列に結合する2本鎖の割合が50%となる温度のこと。重要なポイントは、「塩基配列のGC比が高いほどTm値は高くなる」理由は、GCの水素結合は3つ、ATの水素結合は2つなので、GCの方が結合が強いから。

Tm値より低い温度で増幅は起こりやすいが非特異反応も増える

Tm値より高い温度では増幅は起こりにくいが非特異反応も減る

・伸長反応は元のDNAの5’ →3′ 方向へ伸びていく

 

PCRの大事なポイントをいくつかまとめてみました!

PCRについて正しい文章はどれか?

といった設問で出てくる可能性が考えられますね

 

MT62-AM9 DNAのシークエンス解析に用いないのはどれか

  1. プライマー
  2. 逆転写酵素
  3. DNAポリメラーゼ
  4. デオキシヌクレオシド三リン酸
  5. 蛍光標識ジデオキシヌクレオシド三リン酸

 

DNAシークエンス解析とは、遺伝子の塩基配列を決定し解析する検査です

○○の全ゲノム配列が明らかに!みたいなニュースで聞いたことがあるかもしれません

方法をかなりざっくり言ってしまうと、

PCRのようにプライマーやDNAポリメラーゼを用いて、目的のDNAを増幅し、蛍光標識をした塩基を目印にして塩基配列を特定していく方法

となります

・PCRのように

・蛍光標識した塩基

というのがポイントです

 

デオキシヌクレオシド三リン酸とはdNTPと言われるもので、これはPCRでも用いられます

dNTPはプライマーを元に、伸長反応を起こす時に材料となるATGCの各塩基です(dATP, dTTP, dGTP, dCTPなどと表記します)

 

蛍光標識ジデオキシヌクレオシド三リン酸とは、蛍光標識ddNTP とも言われ、DNAシーケンス解析に特有の試薬です

  

正解は2の、逆転写酵素になるわけですが

逆転写酵素を用いるのはRT-PCR(reverse transcription PCRです

逆転写とはその名の通り、転写の逆、つまりRNAからDNAの配列を作り出します

(通常の転写は核で、DNAからmRNAを作りますね)

 

実は、今行われているコロナウイルスの検査もRT-PCRです(かつ、リアルタイムPCR)

なぜなら、コロナウイルスはRNAウイルスだからです

(↓DNAウイルスの方が少ないので、国試レベルでは下記のゴロにあるウイルス以外は基本RNAウイルスと思ってよいでしょう)

PCRというのはDNAポリメラーゼを使う技術ですので、RNAは増幅できないんです

そのため、RNAの増幅をしたいときは、RT:逆転写を行い、DNAに変換してからPCRを行うというわけです

 

MT63-AM10 遺伝子検査とその目的の組み合わせで誤っているのはどれか。

  1. ノザンブロット法ーDNA断片の解析
  2. FISH法ー欠失解析
  3. DNAマイクロアレイ法ー網羅的遺伝子解析
  4. シークエンス解析ー変異解析
  5. マイクロサテライトDNA解析法ーキメリズム解析

 

1.が誤りです

ノザンブロット法はRNA配列の解析法です

また、DNA配列の解析をサザンブロットといいます

そして、タンパク質の解析法がウェスタンブロットです

これらは全て、ゲル電気泳動を行い、膜にブロッティングして可視化するという方法です

※イースタンはありません

 

2.FISH法(fluorescence in situ hybridization

fluorescenceは蛍光

in situ とはその場でという意味ですが、その場というのは組織や細胞そのものを意味します

簡単にざっくりいうと、

細胞や組織の遺伝子配列(DNAやmRNA)に蛍光標識して顕微鏡などで観察できるようにする方法です

PCRなどが、抽出したDNAを増幅させるのに対し、FISH法では

組織や細胞そのもののDNAやmRNAを蛍光標識して、蛍光顕微鏡で直に観察することができます

 

選択肢にある欠失解析とは、ある組織の遺伝子の欠失解析、例えば癌病変などの変異した遺伝子を蛍光顕微鏡で観察できるようにできるパターンなどですね

3.DNAマイクロアレイ法ー網羅的遺伝子解析

まさに選択肢の通りで、マイクロアレイ=網羅的な解析と覚えておきましょう

遺伝子解析のスクリーニングのようなイメージです

 

4.シークエンス解析ー変異解析

一つ前の問題でも説明したとおり、塩基配列の解析、すなわち変異の解析も可能です

ちなみにとある塩基配列中の変異の頻度が全体に対して1%以上見られる場合、SNP(一塩基多型)と呼びます(まれに見られる突然変異とは異なり、塩基の多様性と表現します)

 

5.マイクロサテライトDNA解析法ーキメリズム解析

これは国試レベルでは難しいので覚えなくてもいいと思うのですが

マイクロサテライトDNA解析はSTR解析とも呼ばれます

具体的には、親子関係や犯人の特定などの個人識別に用いられたり

臨床では、骨髄移植後の生着率を調べることなどに用いられます

キメリズム(キメラ)とは、ドナーとレシピエントの細胞が混ざって存在するような状態ということです

 

MT63-PM8 傷害DNAの除去修復機構に関与する4種類の酵素、(A)エキソヌクレアーゼ、(B)エンドヌクレアーゼ、(C)DNAポリメラーゼおよび(D)DNAリガーゼが作用する順番として正しいのはどれか。

  1. A→B→C→D
  2. A→C→D→B
  3. B→A→D→C
  4. B→C→A→D
  5. C→B→D→A

傷害されたDNAの修復機構についての問題ですが、難問です

答えは4

エンドヌクレアーゼ→DNAポリメラーゼ→エキソヌクレアーゼ→DNAリガーゼ

まず用語の整理ですが

ヌクレアーゼとは核酸を分解する酵素の総称です

エンドヌクレアーゼとは配列の内部を切断する酵素です(制限酵素などがこれにあたります)

・エキソヌクレアーゼとは外側、5’や3’末端から切断する酵素です

・DNAポリメラーゼはPCRでも出てくる伸長反応をする酵素です

・DNAリガーゼはDNA同士を結合する酵素です

 

流れとしては、DNAの一部が傷害を受けたとすると

まずエンドヌクレアーゼでDNA内部の障害部分を切断(

DNAポリメラーゼで配列を合成、

エキソヌクレアーゼで障害部分の末端を切断

DNAリガーゼで結合

という流れになります

 

DNA複製時の校正などのパターンもあり、完全にDNA修復機構を理解していなければ理解が難しいです

各酵素の名前と役割は一致させられるようにしておきましょう

 

 

MT63-PM9 PCR法で使用しないのはどれか

  1. 制限酵素
  2. プライマー
  3. マグネシウムイオン
  4. 耐熱性DNAポリメラーゼ
  5. デオキシヌクレオチド三リン酸

 

PCRに必要な試薬の問題で、必要ないのは1.制限酵素です

制限酵素は決まった遺伝子配列を切断したい時に用いる酵素

特に、遺伝子組み換えなどで用いられます

 

・プライマーは増やしたい目的遺伝子の目印となるもの

・Mg2+はDNAポリメラーゼの活性に必要です(ただし多すぎると非特異反応が増える)

・耐熱性DNAポリメラーゼ(PCRは高温なので、耐熱菌から発見された耐熱性ポリメラーゼを用います)

・デオキシヌクレオチド三リン酸=dNTPで、伸長反応の材料と成るATGC各塩基のことです

 

 

MT64-AM10 DNA抽出に用いられないのはどれか

1.エタノール
2.フェノール
3.クロロホルム
4.イソプロパノール
5.メルカプトエタノール

DNA抽出に用いないのは

5.メルカプトエタノールになります

これはタンパク質の抽出変性に用います

 

DNA抽出に使う試薬は

  • フェノール
  • クロロホルム
  • エタノール
  • イソプロパノール

加えて、超純水も使います

超純水とは抵抗値が18MΩ・cm以上の水で、電解質などの不純物をほとんど含まないので非常に電気抵抗が高くなっています

 

検体を溶解し、水とクロロホルム・フェノールと混合し遠心すると

上から水層・中間層・フェノール・クロロホルム層

の三層に別れます

この時、

上ー水層:核酸

中ー中間層:タンパク質

下ーフェノ・クロ層:脂質

と分離されるので

中間のタンパク質を吸い込まないよう

上層を慎重に採取するのがポイントです

 

ちなみに、抽出後に核酸の純度を確かめるために

OD比(260nm, 280nmの波長)を測定します

これは260nmに核酸の吸収波長

280nmにタンパク質の吸収波長があるためです

 

タンパク質がコンタミすると、260nm/280nmの値は小さくなります

すなわち、OD比(A260/A280)が大きいほど

抽出した核酸の純度は高いと覚えておきましょう!

  

MT65-AM9 プライマーとプローブの両方を用いるのはどれか。

  1. FISH法
  2. LAMP法
  3. ノザンブロット法
  4. Real-timePCR法
  5. シークエンス解析(ジデオキシ法)

 

プローブとは化学発光物質や蛍光色素を結合させたプライマーです

目的の配列に特異的に結合させ、光る目印になるものです

 

プライマー・プローブの両方が必要になるのは

Real-time PCRqPCR:定量的PCR ともいう)です

これがまさに新型コロナウイルスのPCR検査にも用いられています

 

定量的PCRとは、1サイクル毎の遺伝子の増幅を定量できるPCRのことで

プライマーで増幅したDNAに対し、蛍光標識プローブが結合する

その蛍光の度合を測定することで定量が可能、という仕組みになっています

 

通常のPCRというのは、サイクル数をいくつか検討し調整した上で、アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイドなどを用いてDNAを染色して可視化しなくてはなりません

 

他にプローブ、すなわち標識が必要なのは、FISH法とノザンブロット法、サザンブロット法です

これらはプライマーによる増幅は必要ありません(プローブで可視化できれば良い)

 

LAMP法はPCRと同様に遺伝子の増幅反応でプライマーを使います

違いとしては

  • 温度が一定である(65℃程度)
  • PCR法より早い

などが挙げられます、可視化は電気泳動後に行うためプローブは使いません

新型コロナウイルスでPCRよりも迅速であるとして注目されています

 

シークエンス解析ではプライマーは必要ですが、ddNTPに標識をしますので、プローブは必要ありません

MT65-PM9 PCR産物のアガロースゲル電気泳動で非特異的なバンドが見られた場合、対処法として試みるべきなのはどれか。

  1. サイクル数を増やす
  2. Mg2+の濃度を上げる
  3. サンプルの量を増やす
  4. プライマーの量を増やす
  5. アニーリング温度を上げる

実践的な問いで、卒業研究などでPCRを行ったことがある人にとっては経験済みですね

非特異的なバンドが見られるということは、

PCR反応が過剰すぎる、と言い換えられます

これを防ぐために有効なのは、アニーリング温度を上げることです

アニーリングの最適温度はプライマーのTm値に左右され、Tm値より高い温度では増幅は起こりにくいが非特異反応も減ります

 

1.サイクル数を増やすと目的のバンドも得られやすいですが非特異反応も増えます

2.Mg2+の濃度を上げるとポリメラーゼ活性が上がり、非特異反応も増えます

3.サンプルの量を増やすと非特異反応の元となる不純物も増えます

4.プライマーの量を増やすと、非特異反応も増えます

MT66-PM1 RT-PCR法が診断に有用なのはどれか。

  1. Turner症候群
  2. DiGeorge症候群
  3. 真性赤血球増加症
  4. 慢性骨髄性白血病
  5. Prader-Willi症候群

これはどちらかというと遺伝病の問題ですね

答えは4.慢性骨髄性白血病:CMLで、多くはBCR/ABLキメラ遺伝子が原因です

22番染色体と9番染色体間での転座によって起こります

BCR/ABLキメラ遺伝子によってできる異常タンパク質(abl-bcrチロシンキナーゼ)が白血病の原因とされています

特定の遺伝子による異常タンパク質が原因ということは、mRNAを調べることが有効、すなわち、RT-PCR(逆転写PCR)が有効と言えます(もちろん、染色体検査自体も有用です)

 

1.2.5は染色体異常の病気なので、染色体検査が必要です

Turner症候群は 性染色体がXの一つだけとなります

DiGeorge症候群は、染色体の一部欠失による原発性免疫不全症

Prader-Willi症候群は染色体異常による疾患

 

真性赤血球増加症は患者の多くがJAK2という遺伝子の異常が原因とされています

これもPCRが有効ですが、JAK2遺伝子の変異を調べるため、逆転写PCRは必要ではありません

MT66-PM2 核酸の純度を判定する際に用いられる吸光度の波長(nm)はどれか。2つ選べ。

  1. 240
  2. 250
  3. 260
  4. 270
  5. 280

先の問題でも説明済みですが

核酸の純度を判定するには、OD比(260nm, 280nmの波長)を測定します

これは260nmに核酸の吸収波長

280nmにタンパク質の吸収波長があるためです

 

タンパク質がコンタミすると、260nm/280nmの値は小さくなります

すなわち、OD比(A260/A280)が大きいほど核酸の純度は高くなります

MT68-PM10 PCR 法において核酸増幅産物の特異性を高める方法として正しいのはどれか。

1.サイクル数を増やす。
2.プライマー濃度を下げる。
3.アニーリング温度を下げる。
4.マグネシウム濃度を上げる。
5.DNA ポリメラーゼ濃度を上げる。

特異性を高める=非特異反応を減らす と言い換える事ができます

これはPCRに関する一連の用語を理解する必要がありますので、整理していきましょう

1.サイクル数を増やす。✕→サイクル数を増やせば、余計なものも増えます、よって特異性は低くなる

2.プライマー濃度を下げる。○→プライマー濃度を下げると、余計な物を増やさなくなります、よって特異度は上がります(ただし感度が下がるので目的のバンドは得るのが難しい)

3.アニーリング温度を下げる。✕→アニーリングの温度は低いと非特異反応が増えます、よって特異性は低くなる

4.マグネシウム濃度を上げる。✕→Mg濃度を増やせば、余計なものも増えやすくなる、よって特異性は低くなる

5.DNA ポリメラーゼ濃度を上げる。✕→DNAポリメラーゼ濃度を増やせば、余計なものも増えやすくなる、よって特異性は低くなる

基本的には、試薬やサイクルの量を増やして、遺伝子を増えやすくする(感度が高くなる)と、特異性は低下します。アニーリング温度に関しては、高い方が特異性が高くなります。

 

MT69-PM3 PCR 法の原理で正しいのはどれか。

1.熱変性は 60 ℃前後で行う。
2. 2 種類のプライマーを用いる。
3.増幅反応は 50 サイクル前後で行う。
4.伸長反応は 3’→5′ 方向に相補鎖を合成する。
5.定量 PCR 法では標的 DNA 量が多いほど Ct 値が大きい。

1.熱変性は 60 ℃前後で行う。✕→熱変性は96℃です
2. 2 種類のプライマーを用いる。◯→基本的にプライマーはForwardとReverseの2種類を用います。目的の増やしたい部分を両側から挟み込むように増幅させるためです。
3.増幅反応は 50 サイクル前後で行う。✕→50は多すぎます。これでは非特異反応が増えるため、30~40程度が適切と言われます。
4.伸長反応は 3’→5′ 方向に相補鎖を合成する。✕→相補鎖の合成は5’→3′ です。
5.定量 PCR 法では標的 DNA 量が多いほど Ct 値が大きい。✕→定量PCR法とは、Real Time qPCRのことです。Ct値は元の遺伝子量が多いほど、小さくなります。

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まとめ

特にPCR関連の問題で重要と考えられるポイントをまとめます

  • PCR反応を説明できる(熱変性96℃→アニーリング56~68→伸長反応72℃)
  • PCRに用いる試薬を説明できる(プライマー、Mg、DNAポリメラーゼ、dNTP)
  • PCR, RT-PCR, Real-TimePCRの違いについて説明できる
  • DNAの抽出について説明できる

このあたりが大事なポイントかと思います

 

これまでの傾向から平均2問が出ると考えられます

実際に働き始めてからも、行われることの多い検査ですから

しっかりチェックしておきましょう!

↓ウイルス関連の知識についてはこちらの記事で触れています!

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