【第69回臨床検査技師国家試験】PM79-89の問題をわかりやすく解説

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国試かけこみ寺です!

令和5年2月15日(水)に実施された

第69回臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説しています!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp230524-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

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MT69-PM79 抗原抗体反応で正しいのはどれか。

1. 温度に影響されない。
2. 非可逆的反応である。
3. 非特異反応は起こらない。
4. 地帯現象により偽陽性となる。
5. 酸性にすると抗体は解離しやすくなる。

抗原抗体の基本的知識です

1、2、3は明らかな誤りです。温度変化は当然、抗原抗体反応は可逆的です。非特異反応はあり得ます。

ちなみにこれらの選択肢のように、はっきりと断定している選択肢というのは正しくないことが多いです(あくまでことが多いです)。

4.誤り。地帯現象とは、プロゾーンとも呼ばれ、抗原もしくは抗体の過剰によって、逆に反応が見えにくくなり偽陰性になるという現象です

5が正しい答えになります

MT69-PM80 RPR カードテストについて正しいのはどれか。

1. 地帯現象は起こらない。
2. 生物学的偽陽性は起こらない。
3. 被検血清は不活化しなくてよい。
4. 梅毒トレポネーマに特異的な抗体を検出する。
5. 1分間に120回転の速さで5分間水平回転する。

RPRカードテストとは、梅毒の検査です

そして梅毒の検査には病原体であるトレポネーマに対する抗体と、リン脂質抗原(カルジオリピン)に対する抗体を検出する方法の2種があり、RPRは脂質抗原を検出する方法です

リン脂質抗原を検出する方法には、生物学的偽陽性が起こる可能性があります

生物学的偽陽性とは、リン脂質に対する抗体ができる疾患で、感染がなくても陽性になる可能性があることを指し、具体的には、全身性エリテマトーデス(SLE)や抗リン脂質抗体症候群などで起こる可能性があります

上記の基礎知識を踏まえて選択肢を見ていくと

1. 地帯現象は起こらない。→✕ 地帯現象=プロゾーンとは、抗原もしくは抗体が過剰になり偽陰性になる現象のことです。多くの免疫反応(特に凝集を検出する反応)で起こる可能性があります。

2. 生物学的偽陽性は起こらない。→✕ 先程の解説のとおりです。トレポネーマ抗体を検出する方法では生物学的偽陽性はありません。

3. 被検血清は不活化しなくてよい。→◯ 不活化とは補体の影響を抑えることですが、梅毒検査では不要になります。

4. 梅毒トレポネーマに特異的な抗体を検出する。→✕ 

5. 1分間に120回転の速さで5分間水平回転する。→✕ 100rpmで8分間と決まっており、これは覚えるしかないですが、他の選択肢のほうを優先して覚えましょう

MT69-PM81 フローサイトメトリで誤っているのはどれか。

1 蛍光標識抗体を使用する。
2.細胞質内抗原を測定できる。

3. 蛍光強度は細胞数を反映する。

4. リンパ球表面マーカーを解析できる。
5. 測定器の光源はレーザー光を使用する。

フローサイトメトリーに関する基本的な知識確認問題ですので、しっかりチェックしていきます

1 蛍光標識抗体を使用する。◯正しい →国試では蛍光色素としてFITC(フルオレセインイソチオシアネート)が定番でよく出てきます

2.細胞質内抗原を測定できる。◯正しい →細胞表面抗原の検出が一般的ではありますが、細胞内の染色手法もあります

3. 蛍光強度は細胞数を反映する。✕誤り →細胞数は蛍光の強さではありません。蛍光強度はひとつひとつの細胞毎に測定されます。あくまで一つの細胞あたりにどれだけ標識した蛍光があるかを調べています。

4. リンパ球表面マーカーを解析できる。◯正しい →フローサイトメトリーの定番の使用方法です。例えば見た目ではわからないCD4とCD8を見分けることなどができます。

5. 測定器の光源はレーザー光を使用する。◯正しい

MT69-PM 82 自然免疫に関与するのはどれか。 2つ選べ。

1.B 細胞
2.T細胞
3. 好中球 
4. 肥満細胞 
5. マクロファージ 

この問題は答えが3つあり、3,4,5が正解です。

まず自然免疫と獲得免疫の違いをかなり簡単にいうと貪食が自然免疫、抗体が獲得免疫です。
その観点からいうとB細胞とT細胞が獲得免疫に関与することは明らかです。

B細胞とT細胞は抗体産生に密接に関わりますから、獲得免疫です

肥満細胞は一般的に、1型アレルギーに関与し、1型アレルギーはIgEが関与するため、獲得免疫と考えます。それに加えて、肥満細胞は細菌感染などの際に自然免疫にも関与するとされています。(GalliS.J.,e[a)∴Curr.Opin.Immunol,11:53-59,1999.)

好中球やマクロファージは細菌を直接貪食する自然免疫です。

MT69-PM 83 自己免疫性膵炎で上昇するのはどれか。

1. IgA1
2. IgA2
3. IgD
4. IgG2
5. IgG4 

この問題は、抗体のサブクラスに触れており、難易度は高い問題です

ただ、国家試験でチェックするとしたらIgGのサブクラスであるIgG2とIgG4を知っておけば良いでしょう

まず存在量としては1,2,3、4の順番に多いです。IgG1は60~70%を占め、

20%程度を占めるIgG2は特に多糖体抗原(肺炎球菌やインフルエンザ桿菌)に対して優位に応答するとされます

IgG4の存在量は数%ですが、近年自己免疫性膵炎で高値を示すことが明らかになっています

ということで答えは5で、この知識を知っているかどうかです。 ちなみに、IgG4では血清電気泳動でβ-γブリッジングを示すことが知られています。β-γブリッジングとは、血清電気泳動でβとγ分画が融合するような泳動像で、最も典型的には肝硬変で現れるパターンになります。

MT69-PM 84 HLA について正しいのはどれか。

1. HLAクラスⅠは高度な多型性を示す。
2.HLAは第6染色体長腕上に存在する。
3.HLAクラスⅡは血小板に発現している。
4.HLAクラスIにDR、DQ領域が含まれる。
5.HLAクラスⅠは体液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導する。

HLAは覚えることが多くてとっつきにくいイメージはありますが、選択肢を見ながら簡単に整理していきましょう

1. HLAクラスⅠは高度な多型性を示す。◯正しい→HLAにはクラスⅠ、クラスⅡがありますが、クラスに限らず、多型性を示すといえます。骨髄移植など赤の他人で一致する確率が極めて低いことがそれを物語っています。

2.HLAは第6染色体腕上に存在する。✕

午前にも似たような選択肢がありましたが

免疫に出てくる染色体でメジャーなものは以下を覚えると良いでしょう

MHC=HLA抗原:第6染色体短腕
Rh抗原:第1染色体短腕
血液型A, B抗原を作る糖転移酵素:第9染色体長腕

血液型H抗原を作る糖転移酵素:第19染色体

3.HLAクラスⅡは血小板に発現している。✕ 

HLAクラスⅠは全ての有核細胞+血小板に発現しています。一方で

HLAクラスⅡは抗原提示細胞が発現しています、すなわちBcell、単球、マクロファージ、樹状細胞などに発現します

4.HLAクラスIにDR、DQ領域が含まれる。

HLAクラスⅠにはA, B, C の3種類があります、HLAクラスⅡにはDR, DQ, DPの3種類があります。さらに、それぞれが数十種類の異なるタイプ(=アリル)を持つため、その組み合わせが数万通りにもなり多型性を実現しています

5.HLAクラスは体液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導する。

体液性免疫とは抗体を産生すること、細胞性免疫は抗体を用いず、キラーT細胞やNK細胞が病原を直接攻撃することで、どちらも獲得免疫です

獲得免疫であるということは、抗原提示が行われ病原を認識します、すなわと抗原提示細胞に発現するクラスⅡを介して行われるということです

MT69-PM 85 不規則抗体同定検査の結果を以下に示す。可能性の高い抗体はどれか。2つ選べ。

1. 抗c
2. 抗C
3. 抗E
4. 抗Fyb
5. 抗M

この手の問題はまず消去法から入ります、すなわち生食法でも間接抗グロブリン法でも凝集していないパネルセル(表の4,5)の持っている抗原に対する抗体はないといえます

この時点で選択肢を見ると、3.抗Eと5.抗Mが正解となります

ちなみに抗Dは、6のパネルセルでD抗原が0(ない)にも関わらず、IATで凝集しているので、Dはないことがわかります

MT69-PM 86 多特異性抗グロブリン試薬に含まれるのはどれか。2つ選べ。

1. 抗C3
2. 抗C4
3. 抗IgD
4. 抗 IgE
5. 抗IgG

多特異性抗グロブリン試薬とは、直接抗グロブリン試験で用いる試薬で

IgGと補体C3の両方に対する抗体を含む試薬が、多特異性抗グロブリン試薬です

ということで答え自体は1と5になります

直接抗グロブリン試験は、赤血球に直接結合している抗体を検出します、また、補体が結合して溶血を引き起こすこともあるため、その両方をスクリーニングできる多特異性抗グロブリン試薬を使います

そして、直接抗グロブリン試験陽性の場合は、原因をはっきりさせるために、

単特異性抗グロブリン試薬としてIgG単体、補体単体に反応する単特異性試薬を使います

例えば、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)などでは、補体が主な原因となっているため、抗C3試薬のみに陽性となる可能性がある場合があります

MT69-PM 87 同一患者の試験管法とカラム凝集法の反応像 (別冊No.16) を別に示す。凝集反応の判定として正しいのはどれか。

1. 0
2. 1+
3. 2+
4. 4+
5. 部分凝集

(第69回臨床検査技師国家試験別冊より引用)

正解は、5.部分凝集です

試験管では凝集している部分と凝集していない(サラサラ)の部分があり、

カラム法では上下にはっきり分かれる特徴があります

カラム法の判定は以下を参考にしてみてください!

MT69-PM 88 末梢血幹細胞の採取時期の指標となるのはどれか。

1. 血小板数
2. 好中球数
3. 赤血球数
4. CD34 陽性細胞数
5. CD3 陽性リンパ球数

末梢血幹細胞の採取時期、とありますがこれは末梢血幹細胞移植による治療を前提とした言葉です

この問題では末梢血幹細胞を分別するためのマーカーはどれか、と言いたいのです

造血幹細胞のマーカーとしてCD34が知られていますので4が正解となります

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MT69-PM 89 間接抗グロブリン試験で使用される反応増強剤はどれか。 2つ選べ。

1. フィシン
2. パパイン
3. 低イオン強度溶液 〈LISS〉
4. ジチオスレイトール 〈DTT〉
5. ポリエチレングリコール溶液 〈PEG>

これは非常に基本的な知識ですが正解は3,5になります

フィシンとパパインは不規則抗体スクリーニングの酵素法で用いられる蛋白分解酵素の試薬です(ブロメリンというのもあります)

4のDTTはタンパク質のジスルフィド結合(S-S結合)を切断する場合に用いられる試薬です

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