【第64回臨床検査技師国家試験】AM35, 36, 37, 39, 40の問題をわかりやすく解説

MT国家試験

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国試かけこみ寺です!

平成30年2月21日(水)

に実施された

第64回臨床検査技師国家試験問題について

一部の分野をわかりやすく解説していきます!

問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています

※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html)で公開している問題を引用しています。

問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。

 

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MT64-AM35 :グリセロール非消去法の計算問題

遊離グリセロール濃度が5mg/dL の血清を試料として、グリセロール非消去法でトリグリセライドを測定したところ 200 mg/dL であった。この血清をグリセロール消去法で測定した場合のトリグリセライド値(mg/dL)に最も近いのはどれか。
ただし、オレイン酸とグリセロールの分子量をそれぞれ 282、92 とする。
1.149
2.182
3.185
4.195
5.198

グリセロール非消去法でのトリグリセリド(以下 TG)の計算です

TGは1分子グリセロール+3分子脂肪酸でできています

ここではオレイン酸が3分子としてOKです

グリセロールに3つの脂肪酸がエステル結合をする時に、脱水縮合が起きて水H2Oが3分子取れます

このことから、TGの分子量は92+(282×3)-(18×3)=884となります

次に本題に入ります

グリセリン=グリセロールです

TGが1mol 分解されると、グリセロールも1molできる

このグリセロールを測定することでトリグリセリドを求めている、というのがポイントです

ここで注意点があります

血中にはわずかにグリセロールも存在しています

これを消す方法がグリセロール消去法です

 

今回はグリセロール非消去法で測定しています

つまり、

  • TG由来のグリセロール
  • 血中遊離グリセロール

この2つが存在している状態です

例えば、TG由来グリセロール(分子量92)が1 mmol(92 mg)

存在していれば、TGに変換すると、TG 1 mmol(=884 mg)存在しているとわかります

この時のグリセロール→TGのグラム数の変換の計算は、92×(884/92)=884です

もし、ここに遊離グリセロールが5 mgあったとして、TGに換算すると5×(884/92)=48になります

これは遊離グリセロール5mg から、TGが48 mg偽高値になったということを意味します

 

今回の問題に当てはめてみます

・遊離グリセロール濃度が5mg/dL

・トリグリセライドを測定したところ 200 mg/dL

グリセロールをTGに換算すると、5×(884/92)=48 mg となるため

遊離グリセロールを除けば、TG由来のグリセロールは200-48=152

最も近い答えは1.となります

 

非常に丁寧に解説しましたが、苦手な人は計算問題は捨てても大丈夫です

国家試験の大半は知識を問う問題ですから、計算が苦手であれば、その分病気や検査の知識を詰め込んでいきましょう!

 

MT64-AM36 脂質異常症の WHO 分類と増加するリポ蛋白の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Ⅰ ーカイロミクロン
2.Ⅱa ーVLDL
3.Ⅲ ーIDL
4.Ⅳ ーLDL
5.Ⅴ ーHDL

脂質異常症のWHO分類は暗記するしかないのが現状です

いさぎよく語呂合わせを使って覚えましょう!

Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ!カLIV(カリブ)海でV(ブイ)

Ⅰ:カイロミクロン

Ⅱ:LDL

Ⅲ:IDL

Ⅳ:VLDL

Ⅴ:カイロミクロン+VLDL

※Ⅱ型にはⅡaとⅡbがあり、ⅡbはLDL+VLDLです

 

↓リポ蛋白について更に詳しく解説しています!

 

MT64-AM37 A/G 比が増加するのはどれか。

1.肝硬変
2.慢性感染症
3.多発性骨髄腫
4.原発性免疫不全症候群
5.全身性エリテマトーデス(SLE)

A/G比とは

A:アルブミンとG:グロブリン(アルブミン以外の血清蛋白をグロブリンという)の比のこと。大まかな血清蛋白質の状態を見ることに用いられる。通常ではA:G=2:1程度で存在しているので、A/G比は2.0程度ということになる。例えばグロブリンが増加して、A:G=2:2となれば、A/G比は1.0となりA/G比は低下したと言える。

A/G比が増加するパターンは以下が考えられます

・グロブリンが低下する

・アルブミンが増加する(ただし、実際にはアルブミンが増加する疾患はほぼない)

このことから、グロブリンが低下するのは4.原発性免疫不全症候群が正解です

  

逆にA/G比が低下するパターンは

・アルブミンの低下:ネフローゼや肝硬変

・グロブリンの増加:感染症による炎症性蛋白の増加、多発性骨髄腫によるM蛋白(=単クローン性のγグロブリン増加)、自己免疫性疾患によるγグロブリン増加、など

 

MT64-AM39 LD アイソザイムについて正しいのはどれか。

1.2量体である。
2.LD4 は0℃で安定である。
3.LD5 は溶血によって上昇する。
4.LD1 の半減期は約8時間である。
5.2種類のサブユニットからなる。

 

LD:乳酸脱水素酵素 はピルビン酸 ⇆ 乳酸 の相互変換をする酵素です

文字通り、乳酸から水素を取り、ピルビン酸にします

ピルビン酸に水素をつけて、乳酸にもできます

アイソザイムとは

同じ反応を触媒する酵素でも、作られる組織が違ったり、酵素の構造が異なるものをいう。その性質を利用し、臓器特異的な診断に用いられたりする。

LDについて絶対押さえるべき項目

・LDのアイソザイムは5種類(H4, H3M1,H2M2,H1M3, M4)

・H(Heart)とM(Muscle) という2つのサブユニット(パーツ)から成る4量体である

・LD1,2は赤血球や心臓に豊富(=溶血や心筋梗塞で上昇する)

・LD5は肝臓や骨格筋に豊富(=肝疾患や筋細胞破壊で上昇する)

これらのことから、答えは5になります

 

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MT64-AM40 日本臨床化学会JSCC勧告法の試薬中に N-アセチルシステインを含むのはどれか。

1.CK
2.LD
3.ALP
4.ALT
5.アミラーゼ

N-アセチルシステイン(NAC)は、含硫アミノ酸であるシステインの化合物ですが

重要なのは、SH基(チオール基)を含むというところです

CKはSH酵素であり、活性化にNACがあると安定します

ということで、問題の答えは1.CKになります

・CKはSH酵素である

・CKは活性化にNACがあると安定する

この2点は超定番項目なのでぜひ覚えましょう!

 

今回は以上になります

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