医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成30年2月21日(水)
に実施された
第64回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT64-AM30 電気泳動法を用いる検査と健常成人の血清中に最も多く含まれる分画の組合せで正しいのはどれか。
1.蛋白分画 ー γ-グロブリン
2.リポ蛋白分画 ー VLDL
3.LD アイソザイムー LD3
4.CK アイソザイムー CK-MM
5.ALP アイソザイムー ALP5
蛋白分画やアイソザイムで最も多いものはどれかという問題です
それぞれ正しいものに直していきます
1.蛋白分画 ー アルブミン
2.リポ蛋白分画 ー LDL
3.LD アイソザイムー LD2
4.CK アイソザイムー CK-MM
5.ALP アイソザイムー ALP2,3
血中総タンパク質(TP)の60%以上を占めるのがアルブミンです
また、その次に多いのがγ-グロブリン(=免疫グロブリン=抗体)です
※ 抗体の中で最も多いのはIgGです
リポ蛋白で最も多いのはLDL、その次がHDLです
各酵素の答えは赤字で直した通りです
各酵素のアイソザイムで特に重要なのは臨床的意義ですが、それはまた別に記事を書きたいと思います
MT64-AM31 2ポイントエンド法の反応タイムコース別冊No. 4を別に示す。患者血清のタイムコースから考えられるのはどれか。
ただし、測光ポイントは5分と 10 分のポイントとする。
1.測定値はマイナス値になる。
2.攪拌機構の不具合が疑われる。
3.光源ランプの劣化が疑われる。
4.第2試薬の分注量が少なかった。
5.第1試薬と内因性物質との反応が生じた。
2ポイントエンド法とは酵素反応開始から、2点間の吸光度を測定する方法です
図を考察していきます
○標準液は5分まで吸光度0を示しており、そこから反応が起きて吸光度が上昇しています
これはすなわち、5分後に第2試薬を添加し、反応がスタートしたということです
※ 第1試薬のみでは反応はスタートしません
一方で、●患者血清を見てみると、第1試薬しか加えていない5分の間に吸光度が上昇しています
これは、患者血清成分と第1試薬の間で、非特異反応が生じたと考えられます
このことから、5.第1試薬と内因性物質との反応が生じた
が正解となります
撹拌機構・光源ランプなど、機械側に問題がある場合は
検体も標準液もおかしな値がでるはずです
MT64-AM32 血中イオン化カルシウムが低下するのはどれか。
1.クレンチング
2.全血室温放置
3.長時間の駆血
4.立位での採血
5.ヘパリンの混入
採血時の影響の問題です
まず有名なのは、1.クレンチングや3.長時間の駆血、締めすぎなどによるK+上昇です
これらはカルシウムへの影響はありません
4.立位による採血は血液が下肢に溜まることで、水分などが血管外に漏れ出し、血管外に出ない成分は濃縮されることで上昇すると言われています
上昇する項目は分子量が大きく、血管を通過できないTP,Alb,ChE,LD,HDL-C
また、タンパク質と結合している成分であるFe,T-Cho,TGなども上昇が見られるようです
(Feはトランスフェリン、ChoやTGはリポタンパク質として存在しているため)
※ 参考文献 医学検査 Vol.64 No.2 2015
小分子である電解質は原則体位の影響は受けにくいということですね
2.全血室温放置では、赤血球からのアンモニアの遊離・発生などにより
pHが上昇し、結果的にタンパク結合型Caが上昇、イオン化Caは低下します
詳しい機序として、pHが上昇するとアルブミンの荷電が通常よりもマイナス側に傾きます
タンパク質は溶媒のpHが酸性に傾くほどプラスに荷電、アルカリ性に傾くほどマイナスに荷電します。この原理を利用しているのがSDS-PAGEで、タンパク質を強制的に負に荷電させることで、荷電の影響を排除し、分子量でタンパク質を分離できます。
アルブミンがマイナス荷電に偏ることによって、Ca2+のプラス荷電と引き合う力が増加し
結果的にタンパク結合型カルシウムが増えるという流れになります
最後に、5.ヘパリンの混入についてですが
ヘパリンが陽イオンと結合する性質を持つことはよく知られており
これによって、イオン化カルシウムが減少すると考えられます
※ 参考文献 医学検査 Vol.65 No.5 2016
少し解説が長くなってしまいましたが、以上のことより
答えは2,5となります(厚労省発表の正解は2のみになっていますが)
MT64-AM33 血糖測定用採血管に入っている NaF が阻害する酵素はどれか。
1.エノラーゼ
2.ヘキソキナーゼ
3.ピルビン酸キナーゼ
4.乳酸デヒドロゲナーゼ
5.グルコース-6-ホスファターゼ
NaF(フッ化ナトリウム)といえば
阻害する解糖系酵素はエノラーゼです
超定番問題なので暗記してしまいましょう
赤血球は採血後も代謝をしているため、解糖系が働いています
すなわち、血糖が使われてしまい、全血放置ではグルコースが低下します
これを防ぐためNaFを用いますが、エノラーゼは解糖系の後半の酵素であるため
すぐに血糖低下を停止できるわけではない、という点に注意が必要ですね
MT64-AM34 血糖コントロールの指標で正しいのはどれか。
1.HbA1c は貧血の影響を受けない。
2.HbA1c は2週間の平均血糖値を反映する。
3.グリコアルブミンは肝硬変の影響を受けない。
4.アルブミンはヘモグロビンより糖化速度が速い。
5.1, 5-アンヒドログルシトールは高血糖で高値になる。
選択肢に重要な知識が詰まっている問題です
各選択肢を赤字で正しく訂正します
1.HbA1c は貧血の影響を受ける
HbA1cは溶血などでHbの総量が増えると、相対的に低下します
また、鉄欠乏性貧血などHbが低下すると、相対的に増加します
これは、HbA1cというのは 糖化Hb/全Hb となっており
血糖に変化がなければ糖化Hbも変化がないため、全Hbの総量によって糖化Hbの割合が決まってくるためです
2.HbA1c は1~2ヶ月間の平均血糖値を反映する。
HbA1cはHbの代謝速度を反映します、すなわち赤血球の寿命である120日
その半減期である60日程度の平均血糖値を反映すると言えるのです
3.グリコアルブミンは肝硬変の影響を受ける
グリコアルブミンは、糖化したアルブミンですから、当然肝臓でのアルブミン合成を反映します
肝硬変ではタンパク合成低下によりアルブミン産生は低下しますから
相対的にグリコアルブミンの割合は増加します
一方、ネフローゼ症候群ではアルブミンが外に流れ出てしまいます
そうなると、アルブミンが糖化する前に流れ出てしまい、
糖化するアルブミンが減ってしまうため、グリコアルブミンは低下します
4.アルブミンはヘモグロビンより糖化速度が速い。○
HbA1cの基準値は6.5%未満
グリコアルブミンの基準値は16.5%未満ですから
アルブミンの方が糖化する速度は早いと言えます
これは単純にアルブミンの方が半減期が短いから、ということでもあります
5.1, 5-アンヒドログルシトールは高血糖で低値になる。
1,5-AGはあらゆる食品に含まれる糖質です。特に代謝されることもなく、血中に一定量存在し、腎で再吸収・排泄されます。糖尿病で高血糖となると、1,5AGの再吸収が阻害され、尿中の排泄量が増えます。そのため、糖尿病では血中1,5-AGは低下します。超定番知識です!
今回は化学中心でした!
いつも読んで頂きありがとうございます!
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