医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成31年2月20日(水)に実施された
第65回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp190415-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT65-PM28 針筋電図検査の対象とならない病態はどれか。
1.筋萎縮
2.筋力低下
3.過剰筋収縮
4.高 CK 血症
5.ミオクローヌス
筋電図検査は針筋電図と表面筋電図の2種類があります
針筋電図検査は筋力低下などにおいて、その原因が神経の障害なのか、筋肉そのものの障害なのかを判断するために用いられる検査です。表面筋電図検査は不随意運動の補助診断に用いられます。
この問題の答えは5.ミオクローヌスとなるのですが、
ミオクローヌスとは
不随意運動の一つであり、正常でも起こりうるものです。
病的なものとの鑑別に表面筋電図検査を行うため、針筋電図検査はの対象ではありません
他に病的な不随意運動としては、
パーキンソン病による振戦(細かいふるえ)
ハンチントン病などがあります
MT65-PM29 血清遊離脂肪酸が低下するのはどれか。
1.夜 間
2.空腹時
3.ヘパリン静注
4.インスリン投与
5.ステロイド療法
血清遊離脂肪酸が低下する要因としては
中性脂肪の合成がまず挙げられます
中性脂肪はグリセロールに脂肪酸が3分子結合したものですが
例えば食後などは中性脂肪を合成するため、血中遊離脂肪酸は消費されて下がります
この食後の中性脂肪の合成はインスリンによっても促進されます
もちろん、主作用は血中グルコースを取り込み、グリコーゲン合成の促進です
以上から、4.インスリン投与によって遊離脂肪酸は低下するといえます
逆に、1.夜間、2.空腹時は中性脂肪の分解が亢進し、遊離脂肪酸は増加します
3.ヘパリンには副作用として血中遊離脂肪酸の増加があります
その原因は、LPL(リポ蛋白リパーゼ)活性亢進です
これによって、中性脂肪が分解され、遊離脂肪酸が増えることが知られています
5.ステロイド療法はコルチゾールを指していると思われます
副腎皮質ホルモンであるコルチゾールはストレス応答などで分泌が盛んになりますが
ホルモン感受性リパーゼの作用を高め、中性脂肪の分解を促進
結果、遊離脂肪酸は増加となります
遊離脂肪酸の増加については、イメージとして
グルコースと同様の動きをすると考えやすいかもしれません
MT65-PM30 グリセロリン脂質でないのはどれか。
1.レシチン
2.セファリン
3.リゾレシチン
4.スフィンゴミエリン
5.ホスファチジルセリン
リン脂質には大きく分けて2種類
・グリセロリン脂質ー構造中にグリセロールを含む
・スフィンゴリン脂質ー構造中にグリセロールを含まない
の2種類があります
スフィンゴリン脂質の代表格は、神経の髄鞘にも含まれるスフィンゴミエリンです
一方、グリセロリン脂質は、ホスファチジン酸を基本構造とし
ホスファチジン酸=リン酸+グリセロール+脂肪酸2分子 という構造をしている
ホスファチジン酸についているアルコールの種類によって呼び名が変わります
ホスファチジル○○となるため、ホスファチジルがついていればグリセロリン脂質と判断してよいのですが
レシチンやセファリンなど別名で呼ばれるものもあります
レシチンは別名:ホスファチジルコリン(ホスファチジン酸にコリンがついている)
といい、最も重要度の高いグリセロリン脂質と言っても良いでしょう
セファリンはホスファチジルエタノールアミンの別名です
MT65-PM33 血清総蛋白 5.0 g/dL、血清アルブミン 2.5 g/dL、尿蛋白 500 mg/dL であった。考えられるのはどれか。
1.肝硬変
2.慢性炎症
3.多発性骨髄腫
4.ネフローゼ症候群
5.無 γ-グロブリン血症
血清タンパクの基準値は必須事項ですね
※覚えやすいよう少し数値を簡略化しています
・血清総蛋白(TP):6.5~8.0 mg/dL
・血清アルブミン(ALB)4.0 mg/dL以上
これらから考えると明らかな低タンパク状態であるとわかります
低タンパク血症といえば、ネフローゼ症候群です
ネフローゼの定義としては、
・血清ALB:3.0 g/dL以下
・尿タンパク:3.5 g/Day
とされており、この問題では明らかにネフローゼを示唆していると考えられます
※ 尿蛋白 500 mg/dL というのは 1日1L尿が出るとすれば
5000 mg/ 10 dL = 5.0g/Dayとなりますので
尿蛋白もかなり出ているといえます
一応他の選択肢考えられることも挙げていきましょう
1.肝硬変
アルブミンは肝臓で作られていますから
たしかに肝硬変でも低アルブミンとなります
ただし、今回は尿の条件があるのでこの問題では✕
2.慢性炎症
慢性炎症ではグロブリンの増加などが考えられます
3.多発性骨髄腫
多発性骨髄腫は異常な形質細胞が単クローン性に増加する病気です
形質細胞は抗体=免疫グロブリンの産生に特化した細胞ですが
多発性骨髄腫では異常な形質細胞が、免疫機能のない無効な抗体を大量に作り出します
このグロブリンは、M蛋白とも呼ばれ、ベンスジョーンズ蛋白もその一つです
血液データではグロブリン増加によって、TPが高値となり
血清蛋白分画は、γ分画の単クローン性の増加を示します
5.無 γ-グロブリン血症
その名の通り、抗体の欠乏する病気で
原因は、免疫不全などを始めとして色々あります
他に、X連鎖性 無-γグロブリン血症は遺伝性の病気で
B細胞が抗体を産生できなくなってしまいます
MT65-PM34 酵素の国際単位の算出に必要ないのはどれか。
1.血清量
2.最終液量
3.測定波長
4.モル吸光係数
5.1分間の吸光度変化量
酵素の国際単位
酵素活性の国際単位 U/L :1L試料中に 1 μmol の基質を1分間に変化できる酵素活性
酵素活性の求め方は、
※モル吸光係数は酵素によって変わる
※光路長は通常 1 cm とすることが多い
※10の6乗を掛けているのは、U/L が 1μmolあたりであるため molをμmolに換算している
で計算ができます、問題の答えとしては3.測定波長が答えとなります
そもそも測定波長は、測定する物質によって決まっており
濃度などに左右もされないので、この式を知らなくとも
濃度計算や酵素活性に必要ないということが推測できます
今回は以上になります!
コメント