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国試かけこみ寺です!
平成31年2月20日(水)に実施された
第65回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp190415-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT65-AM14:pH 7.32、PaCO2 27 Torr、HCO3- 13 mmol/L、Na+ 138 mmol/L、K+ 4.5 mmol/L、Cl- 102 mmol/L であった。考えられるのはどれか。
まずは基準値と一緒に照らし合わせていきましょう
血液ガスや電解質の基準値覚えてないという方は
↓以下の記事を読んでみてください!
pH: 7.32 基準値7.35~7.45
PaCO2: 27 Torr 基準値35~45
HCO3- :13 mmol/L 基準値22~26
Na+ :138 mmol/L 基準値135~145
K+ :4.5 mmol/L 基準値3.5~5.0
Cl- :102 mmol/L 基準値100前後
1.心不全
2.間質性肺炎
3.尿細管性アシドーシス
4.原発性アルドステロン症
5.糖尿病性ケトアシドーシス
国家試験問題では、選択肢がありますので
まず選択肢を確認しましょう
なぜなら、データを先に見てしまうと、
余分な情報を色々考えてしまうからです
選択肢は5つしかありませんから
その5つに、データを照らし合わせてばいいわけです
※これはテストのテクニックであり、臨床現場ではこうはいきませんね
1.心不全
2.間質性肺炎
3.尿細管性アシドーシス
4.原発性アルドステロン症
5.糖尿病性ケトアシドーシス
特に細かい事は考える必要はありません
なんとなく、アシドーシスが3,5にあって
2は呼吸器疾患
4はアルドステロンによる高Naがありそう
この程度の認識でOKです!
そして呼吸器疾患を血液データ・血ガスだけで想定するのは難しいので
選択肢の答えとしては後回しにするというのも、一つの手です
(代謝性を先に考えて、それが否定できれば、消去法で呼吸器疾患を選べば良いということ)
次にデータを見ますが、
まず一番最初にpHを確認しましょう
アシドーシスなのか
アルカローシスなのかをまずは確認です
pH: 7.32 なのでアシドーシスに傾いていますね
さて、この時点で3,5の選択肢に関わりが深そうだぞと
なんとなく予想できます
pH: 7.32 基準値7.35~7.45
PaCO2: 27 Torr 基準値35~45
HCO3- :13 mmol/L 基準値22~26
Na+ :138 mmol/L 基準値135~145
K+ :4.5 mmol/L 基準値3.5~5.0
Cl- :102 mmol/L 基準値100前後
青マーカーは基準値以下のデータです
HCO3-が低いことから、代謝性のアシドーシスが疑われます
やはり答えとしては3,5のどちらかになりそうですが
ここで使うのが、アニオンギャップ(AG)です
アニオンギャップは陽イオンー陰イオンで計算でき
(ただし、カリウムは無視する事が多い)
基準値は12±2
国家試験レベルではアニオンギャップは
変化がなければ尿細管性アシドーシス
増大していればそれ以外の代謝性アシドーシス
ざっくりこのような判断で良いでしょう
ここでは、
HCO3- :13
Na+ :138
Cl- :102
これらの数字から、138-(13+102)=23
アニオンギャップは増大しているといえますので
5.糖尿病性ケトアシドーシス
が答え、と言えそうです
↓アニオンギャップについては以下の記事で更に詳しく解説しています!
MT65-AM19:呼吸不全を呈する筋萎縮性側索硬化症(ALS)の肺機能検査で予想される結果はどれか。2つ選べ。ただし、他の呼吸器疾患の合併はないものとする。
1. 1秒率低下
2.残気量減少
3.肺活量減少
4.機能的残気量減少
5.肺拡散能(DLco)低下
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では
神経系の障害により、呼吸筋を動かすのが難しくなります
そのため、呼吸器系の拘束性肺疾患(のような状態)と考えられます
気道が塞がるわけではありませんから、閉塞性ではありません
閉塞性・拘束性の呼吸器検査のチェックポイントは
閉塞性:1秒率が70%未満
拘束性:%肺活量が80%未満
選択肢を見ると、
1. 1秒率低下 は該当しない
3.肺活量減少 該当します
2.残気量減少
4.機能的残気量減少
残気量が減る、ということは
肺に空気が残らないということです
呼吸筋に力が入らず、呼吸ができないということは
肺に空気は残ることになりますから
これら2つは増加すると考えられます
5.肺拡散能(DLco)低下
肺拡散能とは
肺拡散能は、肺の空気(酸素)を血液中に移行させる能力のことです
呼吸筋が上手く働かなければ、酸素が血中にいきづらくなる
ということはイメージできますよね
以上から、答えは3と5,になります
MT65-AM22:呼吸性アシドーシスはどれか。
1.pH 7.47 PaCO2 30 Torr HCO3- 23 mmol/L
2.pH 7.47 PaCO2 46 Torr HCO3- 32 mmol/L
3.pH 7.40 PaCO2 40 Torr HCO3- 24 mmol/L
4.pH 7.34 PaCO2 60 Torr HCO3- 30 mmol/L
5.pH 7.30 PaCO2 30 Torr HCO3- 16 mmol/L
疾患からデータを予想する問題ですね
実際の臨床ではこのようなことはありませんから
国家試験に特有な問題と言えます
(このような問題のほうがすごく解きやすいです)
まずはpHです(基準値7.35~7.45)
アシドーシスですから、
この時点で4,5の2択です
次に、呼吸性ですからPaCO2を見ます
呼吸性アシドーシスでは体内のCO2増加ですから
(PaCO2基準値は35~45 Torr)
答えは、4で確定ですね
ちなみにHCO3- 30 mmol/L(基準値24±2)
と増加していますが、これは呼吸性アシドーシスを
元に戻そうと、代謝はアルカリ側に傾いているということですね
そのため、pH自体は7.34とそれほど低値にはなっていないというわけです
呼吸性アシドーシスに伴って、腎臓が重炭酸イオンの排泄を抑えている結果、pHはそれほどの低値にはなっていません。これを腎性の代償といいます。逆に、代謝性の変化を、呼吸で戻そうとする場合もあり、呼吸性の代償といいます。(代謝性アシドーシスに対して、過呼吸でアルカリ性に戻そうとする場合など)
今回の問題解説は以上になります!
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