国試かけこみ寺です!
臨床検査技師国家試験にも頻出の2つの疾患
・発作性寒冷血色素尿症(PCH)
・発作性夜間血色素尿症(PNH)
※血色素=ヘモグロビン のことです
名前が似ているからどんな病気だったか忘れがちですよね
そこで!これらについて今回は
・そもそもどんな病気なのか(病態の違い)
・検査にはどんな違いがあるのか
この2点をメインに解説していきたいと思います!
最後に、過去の国試問題も合わせて解説します!
※ 病名が長いため、寒冷(PCH)、夜間(PNH)と略称を使わせてもらいます
特徴・病態・原因の違い
特徴:症状と臨床所見
寒冷、夜間、どちらも赤血球の血管内溶血を引き起こし
・溶血性貧血となりやすい
・暗赤褐色(コーラ様)のヘモグロビン尿が出る
ではなぜ、溶血を引き起こすのか
その原因について違いを説明していきます!
発作性寒冷血色素尿症(PCH)のメカニズム
・赤血球に対する冷式の自己抗体が原因(ウイルス感染後の小児に多い)
・低温から37℃に戻すと、自己抗体が補体を活性化して溶血
・この冷式の自己抗体が、ドナート・ランドスタイナー抗体である
・ドナート・ランドスタイナー抗体はP血液型抗原に特異性がある
発作性夜間血色素尿症(PNH)のメカニズム
・後天性の遺伝子異常(赤血球表面のCD55,CD59の欠損)により
・赤血球の補体感受性が亢進し、溶血が起きる
・特に睡眠中に発作を起こしやすい
PNH:睡眠中の発作が起こりやすい理由
「補体は酸性下(アシドーシス)で活性が高まる」
すなわち、睡眠中は呼吸がゆっくりになり、低換気となり
体内の血液がアシドーシスになりやすいため
PNH患者の赤血球は、より補体の攻撃を受けやすくなってしまう
寒冷・夜間のどちらも、最終的には補体の攻撃を受けて
赤血球が溶血してしまうわけですが、
・寒冷は、自己抗体(=ドナート・ランドスタイナー抗体)が関与
・夜間は、CD55, 59欠損により、抗体とは関係なく補体の攻撃を受ける
簡単に違いをまとめると上記のようになります
PCHとPNHの検査の違い
発作性寒冷血色素尿症(PCH)の検査
ドナート・ランドスタイナー抗体を検出するために
ドナート・ランドスタイナー試験を行う
※ 方法も記載しますが、全て覚える必要はありません
37℃保温の患者血清、健常O型赤血球、 健常者血清 (補体が入っている) を混ぜ氷水中に30分置いた後、37℃に戻して30分、寒冷条件で ドナート・ランドスタイナー 抗体がO型赤血球に吸着、37℃に戻すと補体がドナートランドスタイナー抗体によって活性化し、溶血する。
発作性夜間血色素尿症(PNH)の検査
砂糖水試験(ショ糖溶血試験)を行い、陽性を確認後
等張のショ糖溶液に患者の赤血球と、健常者血清(補体が入っている)を添加すると、患者血球は補体に攻撃を受け溶血する。この試験自体の特異性は低いため、Ham試験へ移行する。
Ham試験を行い、陽性となればPNHと判定する
塩酸酸性化した患者赤血球と、健常者血清 (補体が入っている)を添加すると、患者血球は補体に攻撃を受け、溶血する。
※この試験は、夜間睡眠中の呼吸回数低下によって体内がアシドーシスに傾くことを再現している。夜間血色素尿症の患者は体内が酸性に傾くと、赤血球が補体の攻撃を受けやすくなり溶血する。
もう一つ、よく出る臨床所見として
・好中球アルカリホスファターゼ(NAP)活性の低下があります
実際の国試問題
※ MT54は第54回 臨床検査技師国家試験の意です
MT54-PM64: 発作性夜間ヘモグロビン尿症の検査所見で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.白血球数は増加する。
2.血清ハプトグロビンは増加する。
3.赤血球膜表面CD59は欠損している。
4.砂糖水(蔗糖溶血)試験は陽性である。
5.好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアは上昇する。
夜間:PNH の方を聞いていますね
1.はPNHとは特に関係ありません
2.のハプトグロビンは
溶血を起こすとヘモグロビンと結合するタンパク質です
結合してそのまま処理、代謝されるため溶血でハプトグロビンは低下します
選択肢3、4が正解です
5はNAP低下ですね
PNH患者が睡眠中に発作が起きやすいのは
低換気によるアシドーシスが原因です
Ham試験は、これを再現して酸性下で行う試験…
体の中が酸性に傾いているからアルカリホスファターゼの活性も低下…
(ALPは至適pHがアルカリ性です)
と繋げていけると覚えやすいかと思います!
MT62-PM64: 発作性夜間ヘモグロビン尿症の検査所見 で正しいのはどれか。
1.血清LDが低下する。
2.白血球数が増加する。
3.血清ハプトグロビンが増加する。
4.赤血球膜表面CD59が欠損している。
5.好中球アルカリホスファターゼ〈NAP〉スコア が上昇する。
1.は溶血が起こるのでLDは増加です
2.は先程と同じで特に関係なし
3.は低下
4.PNHの原因はCD59欠損で正しいです
5.NAPは、低下でしたね
まとめ
上記の問題を見てもわかるとおり、
発作性夜間ヘモグロビン尿症で大事なことをまとめると
・ショ糖試験&Ham試験陽性
・CD59の欠損
・補体感受性の亢進で溶血
・NAP(好中球アルホス)低下
以上のようになりそうですね!
一方、発作性寒冷ヘモグロビン尿症の方は
・ドナート・ランドスタイナー抗体が原因
・ドナート・ランドスタイナー抗体は赤血球に対する冷式の自己抗体である
・このことから、低温で引き起こされる自己免疫性溶血と言える
以上、名前は似てても結構違う2つの病気の解説でした!
血液と免疫にまたがる疾患なのでしっかり覚えていきましょう!
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