医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
平成30年2月21日(水)
に実施された
第64回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT64-PM60 一次止血はどれか。
1.血小板の粘着
2.組織因子の発現
3.トロンビンの産生
4.フィブリンの分解
5.プラスミノゲンの活性化
一次止血とは血小板血栓ができるまで
二次止血はいわゆる凝固カスケードのスタートになります
よって答えは1になりますね
↓下記の記事で止血・凝固について更に詳しく解説しています!
MT64-PM61 凝固因子でないのはどれか。
1.組織因子
2.プロテイン C
3.フィブリノゲン
4.プロトロンビン
5.フィブリン安定化因子
凝固因子は通常ローマ数字で表されます
凝固因子の番号と、一般名でメジャーなものを以下に記します
Ⅰ:フィブリノーゲン→Ⅰa:フィブリン
Ⅱ:プロトロンビン→Ⅱa:トロンビン
Ⅲ:組織因子
Ⅳ:カルシウム
上記の4つはあまり、番号で呼ばれることがないので覚えておきましょう
5のフィブリン安定化因子はⅩⅢ(13)です
フィブリン(Ⅰa)ができたあとの安定化因子ですが、凝固因子の中で最後に見つかったため番号は13となっています
2.プロテインCは、ビタミンK依存性タンパクであり、抗凝固因子です
MT64-PM62 赤血球沈降速度を遅延させるのはどれか。2つ選べ。
1.赤血球増加症
2.寒冷凝集素症
3.高グロブリン血症
4.低アルブミン血症
5.低フィブリノゲン血症
赤血球沈降速度の原理の基本は、赤血球と血中タンパク質の荷電です
プラス(+)に荷電するもの
グロブリン(α1, γ)、フィブリノーゲン
マイナス(ー)に荷電するもの
赤血球、アルブミン
赤血球は基本的にマイナス荷電です
これがプラスの荷電で打ち消されると赤血球は凝集します
凝集すると赤血球が大きな塊になって沈降速度が早くなるというわけです
・マイナスとプラスで赤血球が凝集すると赤沈亢進
・マイナスとマイナスで赤血球が反発すると赤沈遅延
この原理を基本とします
1.赤血球増加症:赤血球が増加するため、マイナスマイナスで赤沈遅延
2.寒冷凝集素症:赤血球が凝集するため、赤沈亢進
3.高グロブリン血症:プラス荷電の増加で赤沈亢進
4.低アルブミン血症:マイナス荷電が減少、結果プラス荷電優位となり赤沈亢進
5.低フィブリノゲン血症:プラスが減少、結果マイナス荷電優位になり赤沈遅延
シンプルに覚えたい人は
赤沈亢進:赤血球減少、アルブミン減少、フィブリノーゲン増加、グロブリン増加
赤沈遅延:赤血球増加、フィブリノーゲン減少、グロブリン減少
を暗記してしまいましょう!
MT64-PM63 血小板凝集を惹起させるのはどれか。
1.一酸化窒素
2.アスピリン
3.エピネフリン
4.ワルファリン
5.フィブリノペプチド A (FPA)
血小板の凝集を惹起させる物質はたくさんありますが
エピネフリンもその一つです
※ エピネフリンとはアドレナリンのことです
他には、トロンボキサンA2, ADP, セロトニン、コラーゲンなどがあります
これらの血小板凝集惹起物質は血小板の持つ、濃染顆粒、α顆粒に含まれています
α顆粒には分子量の小さな、セロトニン・ATP/ADP・Caイオン
濃染顆粒には分子量の大きな、凝固因子などタンパク質系を多く含んでいます
↓類似問題はこちらです
MT64-PM65 骨髄異形成症候群に特徴的な所見として誤っているのはどれか。
1.染色体異常を伴う。
2.骨髄は低形成である。
3.環状鉄芽球がみられる。
4.好中球の顆粒が乏しい。
5.微小巨核球がみられる。
骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)とは
MDSとは、造血幹細胞に異常が見られる病気です。造血幹細胞は、あらゆる血球に分化することのできる未成熟な細胞です。そのため、MDSでは赤血球系、白血球系、血小板系などあらゆる細胞が未成熟な状態で異常が見られることがあります。原因は不明ですが、約半数の患者さんに染色体異常があると言われています。参考:国立がん研究センターがん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/cancer/MDS/index.html)より
この問題の誤りは2になります
骨髄が低形成というわけではなく、造血幹細胞に異常があるということですね
MT64-PM66 血小板減少をきたすのはどれか。
1.血友病 B
2.真性多血症
3.ビタミン K 欠乏症
4.アレルギー性紫斑病
5.溶血性尿毒症症候群
各選択肢の病態をしっかり確認していきましょう
1.血友病 B
血友病Bは第Ⅸ(9)因子の欠損による凝固異常
血友病Aは第Ⅷ(8)因子の欠損による凝固異常
2.真性多血症
真性多血症とは赤血球が過剰増殖する病気で、JAK2という遺伝子の異常と言われています
3.ビタミン K 欠乏症
ビタミンK依存性の凝固因子(Ⅱ、Ⅸ、Ⅶ、Ⅹ)の欠乏による凝固異常
4.アレルギー性紫斑病
IgA血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病とも呼ばれます
5.溶血性尿毒症症候群
溶血性尿毒症症候群(HUS)は腸管出血性大腸菌のVero毒素を原因とする、溶血性疾患です
溶血が起こる他、血小板も破壊され減少、急性の腎不全を伴う病気です
以上のことから答えは5になります
どの病態も国試レベルではメジャーなものなので、概要は把握しておくようにしましょう
MT64-PM67 後天性血友病 A の検査所見として誤っているのはどれか。
1.第Ⅷ因子活性は低下する。
2.第Ⅷ因子インヒビターが検出される。
3.プロトロンビン時間は基準範囲内である。
4.クロスミキシング試験は下に凸の曲線を示す。
5.活性化部分トロンボプラスチン時間は延長する。
血友病Aは第Ⅷ(8)因子を欠損する病気ですが
後天性血友病Aとは、遺伝的な欠損ではなく
後天的に免疫学的機序(自己抗体、インヒビター)により、第Ⅷ因子が阻害されることで起こる凝固異常です
第Ⅷ因子のインヒビターによって、第Ⅷ因子活性は低下し
APTT延長、PTは変化がありません
このことから、消去法で4が残ります
4のクロスミキシング試験とは
APTT延長の原因が、凝固因子の欠損にあるか、インヒビターによる阻害かを鑑別するための試験です
単純に覚えるのであれば、
・インヒビターが原因であれば上に凸
・凝固因子の欠損が原因であれば下に凸
と覚えればOKです
この問題でいうと、後天性血友病はインヒビターが原因のため、上に凸になります
以下、クロスミキシング試験の詳しい解説です
クロスミキシングとは、健常者血漿に対して、患者血漿を混ぜ合わせ、APTTの延長度合いがどうなるかを調べる試験です
こちらの図から分かる通り、患者血清中のインヒビターの存在の方が、凝固因子が欠損してる時よりもAPTT対する影響が大きくなります
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