医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和2年2月19日(水)に実施された
臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT66-PM1:RT-PCR 法が診断に有用なのはどれか。
1.Turner 症候群
2.DiGeorge 症候群
3.真性赤血球増加症
4.慢性骨髄性白血病
5.Prader-Willi 症候群
言ってしまえば知っているかどうかの問題ですが
こういった問題で重要なのは出てくる言葉を説明できることです
病気や検査法について説明をできること
それが知識の定着へと繋がり
多くの問題への対応力となります
ということで、出てくる用語の整理いってみましょう!
RT-PCRとは 逆転写PCRのことです
- PCRとRT-PCRの違い
PCRとは目的の配列の遺伝子(DNA)を増やして検出する方法です
RT-PCRはRT=逆転写を経て行うPCR
簡単にいうと、RNAを逆転写してDNAに戻してから行うPCRです
PCRは単純に抽出したDNAを増やす方法です
次に各選択肢の病気を見ていきます
1.Turner 症候群
Turner 症候群は性染色体のうちX染色体が1本になる
染色体異常の一つです
2.DiGeorge 症候群
DiGeorge 症候群は染色体22q11.2 の微細欠失による
胸腺低形成を引き起こす染色体異常疾患です
3.真性赤血球増加症
別名を真性多血症とも言いますが
JAK2という遺伝子の変異が原因であることが分かっています
4.慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病:CMLで覚えるべきは
フィラデルフィア染色体にあるBCR–ABL遺伝子が原因ということです
このBCR-ABL遺伝子は
9番と22番染色体の転座によって発生しますt(9;22)
これによって作られるBCR–ABLタンパク質が
CMLという病気の本体だと言えます
5.Prader-Willi 症候群
プラダー・ウィリー症候群といい、染色体異常疾患です
———————————
さて、結論から言うとこの中でRT-PCRが診断に有用なのは4になります
RT-PCRが有効なのは、実際に
異常なタンパク質を作り出している異常な遺伝子の存在が
はっきりしている場合に有効と言えます
3.真性多血症はJAK遺伝子の変異
かなり細かい話を言うと、
617番目のバリン(V)がフェニルアラニン(F)に変化するミスセンス変異です
このような、ピンポイントな変異を検出するためには
RT-PCRは不向きで、このような点変異などを検出するには
アレル特異的PCRが有用です
1,2,5は染色体を直接観察する染色体検査が有用です
4のCMLもフィラデルフィア染色体を観察できますから
当然、染色体検査も診断材料となります
ここまで長い解説を書いてしまっていうのもなんですが
本当に細かいことを知りたい人でなければ
この問題の解説を理解できなくても大丈夫です
BCR/ABL遺伝子は慢性骨髄性白血病!
RT-PCRで検出できる!
この問題は、こう覚えてしまっても問題ないように思います
上記解説中の赤線部分は重要度の高い知識ですので
そこだけでも知識として覚えておくと良いでしょう
MT66-PM5:トキソプラズマについて誤っているのはどれか。
1.ネコが終宿主である。
2.細胞外寄生原虫である。
3.大部分は不顕性感染である。
4.妊娠中の初感染により経胎盤感染が起こる。
5.トキソプラズマ IgM 抗体が高ければ初感染を疑う。
トキソプラズマについて重要な知識が詰まった問題です
この問題の答えは2
誤理を訂正すると、細胞内に寄生する原虫となります
正しい文章である他の選択肢の知識が大変重要です
- トキソプラズマとは
・ネコを終宿主とする、細胞内寄生原虫である
・ほとんどは不顕性感染であるが
・妊娠初期に感染した場合、胎盤を通じて胎児に感染しトキソプラズマ症を起こしうる
重要な情報をまとめるとこのようになります
選択肢5.トキソプラズマ IgM 抗体が高ければ初感染を疑う。
ですが、IgMというのは抗体の中で最も早く出現しますので
IgM抗体の増加は感染初期を疑う
という、どちらかというと免疫学の知識による部分ですね
医動物は苦手な人もいるかと思いますが
トキソプラズマは比較的出やすい部類ですので
基本知識は押さえておきましょう
MT66-PM10:糖尿病性腎症の早期発見に有用な尿検査項目はどれか。
1.ケトン体
2.アルブミン
3.ヘモグロビン
4.ウロビリノゲン
5.トランスフェリン
糖尿病性腎症の早期発見に有用な検査
といえば、尿中の微量アルブミンです
これは絶対に覚えておくべき知識です
では微量アルブミンとは具体的にどの程度かというと
通常の尿試験紙や尿蛋白定量で検出できないレベル
約30 mg ~299 mg / 日(Day)を指します
仮に1日の尿量を1L(=10 dL)とするならば
3 mg~29 mg/dLとなり
尿試験紙の感度が30 mg/dLであることを考えれば
試験紙での検出が困難であるとわかります
そのため尿中の微量アルブミンは
各種の高感度な検査が必要になります
このような理屈を抜きにしても
糖尿病性腎症の早期発見に有用な検査
といえば、尿中の微量アルブミン
これは覚えておくようにしましょう
MT66-PM11:細胞内液において最も多い陽イオンはどれか。
1.K+
2.Na+
3.Ca2+
4.Mg2+
5.Zn2+
細胞内に最も多いイオンといえばカリウムです
他には、マグネシウム(Mg 2+)とリン酸(HPO4 2-)
を押さえておきましょう
MT66-PM12:染色体検査の結果で診断が可能なのはどれか。
1.Alzheimer 型認知症
2.Gaucher 病
3.Huntington 病
4.Klinefelter 症候群
5.Lesch-Nyhan 症候群
再び染色体検査の問題ですが
各病気の説明をある程度できることが大事です
特に出現頻度の高い重要部分に赤線を引きますので
参考にしてみてください
1.Alzheimer 型認知症
アルツハイマー型認知症の原因は
アミロイドβというタンパク質の異常蓄積と言われています
これは病理学的に、脳の組織に老人斑として見られます
染色体検査は関係ありません
2.Gaucher 病
ゴーシェ病と読みます
ライソゾーム(リソソーム)病などとも呼ばれ
その実態はリソソーム酵素である
βグルコシダーゼの遺伝子変異です
染色体検査とは直接関係ありません
3.Huntington 病
ハンチントン病と読みます
かつてはハンチントン舞踏病とも呼ばれ
その実態は、大脳の神経細胞の変性による
不随意運動(意志に関係なく踊る、舞踏するように見える)を伴う
常染色体優性遺伝病です
染色体検査とは直接関係ありません
4.Klinefelter 症候群
クラインフェルター症候群と読みます
男性の性染色体が「2個以上のX染色体と少なくとも1つのY染色体の保有」
となるとこの症例になります、具体的には
XXY, XXYYなどです
これは性染色体の実際の観察でわかりますので
染色体検査で診断可能です
5.Lesch-Nyhan 症候群
レッシュ・ナイハン症候群と読みます
尿酸代謝に関与する酵素の遺伝子異常により
高尿酸血症となる病気です
こちらも染色体検査では診断できません
病気の解説がメインとなりましたが
染色体検査というのは基本的に
染色体の数が通常と異なる場合に
有用な診断となるケースが多いです
(例えば21番染色体トリソミーのダウン症などもそうです)
染色体の数が異常となる疾患は
最低限まとめておくとよいでしょう
今回の解説はここまでです!
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