医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和2年2月19日(水)に実施された
の臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT66-AM38: 過酸化水素・ペルオキシダーゼ系呈色反応で正しいのはどれか。
1.脱水素酵素を使用する。
2.測定波長は 340 nm である。
3.吸光度の減少量を測定する。
4.共存物質の影響を受けにくい。
5.分析感度を変化させることができる。
ひとつひとつ選択肢を噛み砕いていきましょう
1.脱水素酵素を使用する。✕
脱水素酵素=デヒドロゲナーゼです
ペルオキシダーゼは酸化酵素です(オキシ=oxygen: 酸素)
用語を知っていれば間違いだとわかりますね
2.測定波長は 340 nm である。✕
呈色反応である、と問題に書いてあります
呈色反応とは色の変化を捉える反応ですから
可視部の波長(=約400~800nm)で測定するはずです
このように用語をひとつひとつ丁寧に解釈すると
直接の知識を知らなくても判断できる場合もあるのです
3.吸光度の減少量を測定する。✕
呈色反応ではほぼ、吸光度の増加を測定します
吸光度の減少を測定するパターンというのは
紫外部の測定に多いです
例えばNADH(340nm)の減少を測定するAST・ALT などです
4.共存物質の影響を受けにくい。✕
ペルオキシダーゼは酸化反応ですから
酸化剤・還元剤の影響を受けやすいです
酸化剤であれば偽陽性、還元剤であれば偽陰性となりますね
代表的な酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムなど
代表的な還元剤はアスコルビン酸など、ですね
5.分析感度を変化させることができる。○
消去法でこれが正しいということになります
細かい原理の話なので、詳細は省略しますが
反応試薬を変えることで、測定項目の感度を変化できます
(通常はフェノール系ですが、アニリン系に変えるなど)
MT66-AM40: リポ蛋白について誤っているのはどれか。
1.HDL は LDL よりも蛋白質含量が高い。
2.IDL は LDL と VLDL の中間の比重をもつ。
3.カイロミクロンは VLDL よりも粒子サイズが大きい。
4.VLDL はカイロミクロンよりもトリグリセライド含量が低い。
5.LDL はアガロースゲル電気泳動法で VLDL よりも陽極側に移動する。
略語
HDL:高密度リポ蛋白
LDL:低密度リポ蛋白
IDL:中間密度リポ蛋白(LDLとVLDLの中間という意味)
VLDL:超低密度リポ蛋白
CM:カイロミクロン(キロミクロン)
リポ蛋白で覚えるポイントは以下の4つです
・蛋白と脂質の含有量
蛋白多 HDL>LDL>IDL>VLDL>CM 少
脂質多 CM>VLDL>IDL>LDL>HDL 少
(ここでいう脂質は特にトリグリセリドです)
・含有するアポ蛋白
HDL:アポA
LDL, IDL, VLDL:アポB-100
CM:アポB-48
※他にもありますが、最低限覚えるべきものを示します
・比重と粒子サイズ
比重高:HDL>LDL>IDL>VLDL>CM 低
粒子サイズ大 CM>VLDL>IDL>LDL>HDL 小
覚え方のコツは
HDLは野球ボール(小さいが密度は高く重い)
CMはビーチボール(大きいが密度が低く軽い)
・電気泳動の分画
- CM(原点)・LDL(β),IDL・VLDL(preβ)・HDL (α)+
電気泳動ではLDLよりもVLDLがプラス側に寄っていくので注意
原理的な話でいうと、それぞれの含有しているアポ蛋白によって
負に荷電しやすいものほど、+に寄っていきます
カイロミクロンはほとんど荷電しないため原点に留まります
以上を踏まえて選択肢を見ていきましょう
1.HDL は LDL よりも蛋白質含量が高い。○
HDLは蛋白が多く、脂質が少ないです
2.IDL は LDL と VLDL の中間の比重をもつ。○
比重は LDL>IDL>VLDL なので正しいですね
L:Low=低い
I:inter mediate=中間
VL:Very Low=超低い
3.カイロミクロンは VLDL よりも粒子サイズが大きい。○
正しいです
カイロミクロンはビーチボール!
粒子サイズは大きいですが、比重は軽い
4.VLDL はカイロミクロンよりもトリグリセライド含量が低い。○
カイロミクロンが最も脂質が多い、すなわち
トリグリセリド含有量も高い、となります
5.LDL はアガロースゲル電気泳動法で VLDL よりも陽極側に移動する。✕
電気泳動ではプラス側から+HDL・VLDL・LDL・CMーとなります
この点だけは、比重の大きさなどとは異なる並びになるので注意です
MT66-AM41: レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT) 反応の生成物はどれか。2つ選べ。
1.遊離脂肪酸
2.リゾレシチン
3.トリグリセライド
4.スフィンゴミエリン
5.エステル型コレステロール
まずはわからない用語を整理しましょう
レシチンとはリン脂質である、ホスファチジルコリンの別名です
LCATとは簡単に言うと
レシチンの脂肪酸を遊離型コレステロールに移し
エステル型コレステロールを作り出す酵素です
ここで書かれているリン脂質というのがレシチンです
脂肪酸を取られたレシチンは、リゾレシチンと呼ばれます
以上のことから、LCATが行っている反応をまとめると
レシチン+遊離型コレステロール → リゾレシチン+エステル型コレステロール
となり、答えは2,5になります
今回の解説は以上です!
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