医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和3年2月17日(水)に実施された
臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp210416-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT67-PM66 巨大血小板がみられるのはどれか。2つ選べ。
1.von Willebrand 病
2.May-Hegglin 異常症
3.Bernard-Soulier 症候群
4.Wiskott-Aldrich 症候群
5.Chédiak-Higashi 症候群
これら選択肢の疾患は、どれも血液分野で頻出なので、どのような疾患か説明できる事が重要です
1.von Willebrand 病
名前の通りvon Willebrand因子(VWF)が極端に少ない、もしくは機能低下する疾患です
VWFは第Ⅷ(8)因子のキャリア蛋白です、そのためVWFが無ければ第Ⅷ因子も働かず、VW病ではAPTTが延長します。さらに、VWFは血小板の接着剤として一次止血にも重要ですから、出血時間も延長します
2.May-Hegglin 異常症
メイヘグリン異常症は血小板減少と巨大血小板の出現を特徴とする遺伝性疾患です。ちなみにMYH9という遺伝子の異常が原因です。
3.Bernard-Soulier 症候群
ベルナール・スーリエ症候群は、先天性巨大血小板症であり、血小板減少と重篤な出血症状を呈します
ということで、答えは2,3になります。巨大血小板(+血小板減少)というキーワードでMay-HegglinとBernard-Soulierは覚えておきましょう
4.Wiskott-Aldrich 症候群
ウィスコット・アルドリッチ症候群はX染色体連鎖性の原発性免疫不全症です、免疫不全による易感染性に加えて、血小板減少を特徴とします
5.Chédiak-Higashi 症候群
チェディアック・東症候群は重篤な易感染性などを引き起こす先天性疾患ですが、国家試験レベルでは顆粒球細胞質の巨大顆粒の出現が重要です
MT67-PM67 播種性血管内凝固DICの所見で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.血小板数増加
2.D-ダイマー上昇
3.フィブリノゲン上昇
4.アンチプラスミン上昇
5.プロトロンビン時間延長
正解は2,5です
ポイントは凝固でどうなるか、線溶でどうなるかをしっかり判定することです
・DIC(播種性血管内凝固症候群)とは
出血がないのに全身の血管で凝固反応が起きる病気。結果的に、血小板や凝固因子が勝手に消費されて無くなってしまい出血が起こりやすくなる。さらに、凝固反応を終わらせるために、線溶も亢進する
※ただし、敗血症を原因とする場合、線溶系は抑制される(凝固は促進し、線溶が起こらないので非常に危険な状態である)
・凝固亢進の指標(マーカー)
・PT, APTT延長→凝固因子が消費されて足りなくなるため
・フィブリノゲン減少→凝固でフィブリンになり消費されるため
・トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT増加)→凝固が進んでトロンビンが消費されるとアンチトロンビンと結合していくため
・アンチトロンビン減少→凝固しすぎないようにトロンビンを阻害する。上記によりアンチトロンビンが消費される。ちなみにヘパリンの抗凝固作用はアンチトロンビンの活性化である
・可溶性フィブリンモノマー複合体増加→フィブリンのようなものと解釈して良い
・フィブリノペプチド増加→フィブリンができるということなので凝固亢進
・プロトロンビンフラグメント 1+2の増加→プロトロンビンの分解物、すなわちトロンビン産生亢進を表しているため凝固マーカー
・線溶亢進の指標(マーカー)
・FDPおよびDダイマー高値→凝固でできたフィブリンが線溶で分解されるため
※FDPとは、フィブリン・フィブリノゲンの分解産物
※Dダイマーとは、FDPの一種
・プラスミン-プラスミンインヒビター複合体の増加→線溶が進んでプラスミンが消費されるとプラスミンインヒビターと結合していくから
・プラスミンインヒビター(アンチプラスミン)減少→線溶が終わったプラスミンを阻害する。上記により消費されるため
血液の凝固に使われる物質と線溶に使われる物質をしっかり区別できるかどうかがポイントです。
↓以下の記事で図解込みでしっかり解説しています!
MT67-PM68 血液媒介感染を起こすのはどれか。2つ選べ。
1.RS ウイルス
2.アデノウイルス
3.B 型肝炎ウイルス
4.インフルエンザウイルス
5.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
正解は、3,5
他には、HCV、HTLV-1、梅毒など
血液感染 ≒ 性感染症(STD)でもあります
MT67-PM78 イムノクロマト法による抗原検査が行われているのはどれか。2つ選べ。
1.風疹ウイルス
2.麻疹ウイルス
3.アデノウイルス
4.ムンプスウイルス
5.インフルエンザウイルス
イムノクロマト法とは毛細管現象を利用した、免疫測定法です
サンプルを滴下するとメンブレン(膜)状を移動し、メンブレンに固定された抗原や抗体に、検体中の目的成分がくっつくと線が浮き出ます
一般的には妊娠検査薬がイメージしやすいかと思います
非常に簡便であることから、POCT(ベッドサイドでできる検査)であり、身近な例ではインフルエンザの抗原検査もイムノクロマト法です
問題の正解としては、3.アデノウイルスと5.インフルエンザウイルスになります
アデノウイルスはいわゆる風邪症状を引き起こすウイルスです
MT67-PM79 体重 70 kg の成人に赤血球液4単位を輸血した際の予測上昇 Hb 値に最も近い値(g/dL)はどれか。
なお、循環血液量(mL)は体重(kg)×70 であり、2単位の赤血球液は 60 g のHb を含むこととする。
1.2.0
2.2.4
3.2.8
4.3.2
5.3.6
予測上昇Hb値(g/dL)=投与Hb量(g)/循環血液量(dL)
問題文をしっかり読んで計算します
赤血球液4単位ということで、120gのHbが含まれています
問題文に示してくれていますが、輸血における循環血液量は1kgあたり70mLで計算します、70kgであれば、4.9Lあると考えます
あとは式に入れていくと、
120g/4.9L
=120g/49dL
=2.45
答えは2となります
一般的に言われる、血液量は体重の8%程度、としてしまうと計算が合わなくなってしまいます
MT67-PM80 輸血副反応のうち最も遅く発症するのはどれか。
1.細菌感染症
2.輸血後 GVHD
3.アレルギー反応
4.輸血関連急性肺障害
5.輸血関連循環過負荷
答えは2のGVHDです
GVHD;graft versus host diseaseとは
移植片 対 宿主 病つまり、移植片(ドナー組織) が 患者を攻撃する病気です。いわゆる移植拒絶反応とは逆の反応です(移植拒絶は患者の免疫が移植片を攻撃する)
輸血後GVHDは3ヶ月~2年以内に発症とされており、移植後しばらく時間が経って発症するのが特徴です
患者側の急性拒絶反応(キラーTが原因)は3ヶ月以内に起こるとされています
4.輸血関連急性肺障害 (TRALI)とは
製剤中に含まれる抗白血球抗体(HLA抗体、好中球抗体)と、患者の白血球や肺の毛細血管内皮細胞が反応して好中球が活性化され、肺の毛細血管に損傷を与えることでTRALIが発症すると推測されています(AABB Press,Bethesda, 2012, pp191-215.より)
5.輸血関連循環過負荷(TACO)とは
輸血中~輸血後6時間以内に発症する急性の呼吸困難を伴う合併症です。原因は、輸血による循環血液量の増加による過負荷。体液量が急激に増え、心肺に負担がかかり起こる症状です。単純な体液量の増加であり、免疫は関係ありません。
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