医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和5年2月15日(水)に実施された
第69回臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説しています!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp230524-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT69-PM 29 ステロイド骨格を持つのはどれか。
- アドレナリン
- アルドステロン
- インスリン
- オキシトシン
- ガストリン
これはステロイドホルモンはどれか、という問題と同義です。
そしてステロイドホルモンは以下の覚え方で覚えましょう!
- ○○オール
- ステロ
- 〇〇ゲン
ということで答えは2のアルドステロンです
この問題を機にホルモンの分類も覚えてしまうことをおすすめします!
以下の記事を参考にしてみてください♪
MT69-PM 30 BNP について誤っているのはどれか。
- 血清で測定する。
- 心室で合成される。
- 腎不全で増加する。
- 環状構造部分を持つ。
- Na+再吸収を抑制する。
BNPとは脳性ナトリウム利尿ペプチドというホルモンのことです。
そもそもナトリウム利尿ペプチドには
- ANP(Atrium:心房性)
- BNP(Brain:脳性→※ただし、分泌は心室)
- CNP(C型)
の3種類があります。
ナトリウム利尿とは尿へのNa排泄のことです。
うっ血性の心不全など、体内に水分が溜まっている状態では水を外に出す必要があるため、Naを尿中に排泄促進し、結果的に水分も尿に出ていき、体内の血圧を下げる働きがあります。
3種の中で国試的に最も重要なのはBNPで、その特徴を説明していきます。
まず、名前が非常にややこしく、Brain:脳性という名前がついているのは最初に豚の脳から見つかったためで、ヒトの場合は心室で分泌されるホルモンです。
BNPの分泌様式は、proBNPという前駆物質の一部が切断され、NT-proBNPとBNPに分解されます。NT-proBNPは生理活性がない不要物です。
この分泌様式はインスリンと似ており、インスリンもproインスリンが分泌されて、C-ペプチドとインスリンに分解されます。
ホルモンは非常に微量で不安定であり、分解されやすいという特徴もあります。
BNPは血中では分解酵素により分解されてしまいます。そのため血清では測定できません。分解酵素を抑えるためにEDTAを添加し、血漿で測定します。(ちなみにホルモンは非常に微量なので免疫測定が適します)
この問題を解決するために、NT-proBNPの測定が行われます。NT-proBNPは安定したペプチドであり、血清でも測定可能で、BNPの分泌量を反映します。
以上の基礎知識を踏まえて改めて問題を見ていくと、
MT69-PM 30 BNP について誤っているのはどれか。
- 血清で測定する。
- 心室で合成される。
- 腎不全で増加する。
- 環状構造部分を持つ。
- Na+再吸収を抑制する。
- 1が誤りであることがわかります。
この問題はBNPの重要知識である、血清では測定できないということを知っていれば解くことができます。
2~5は正しい選択肢となります
2は先ほど説明した通り
3は腎不全が起こると、血液が体内に貯留(うっ血)するのでBNPは増加
4は構造の話ですが、非常に細かい部分なので知らなくても良いと思います
5はNa再吸収を抑制≒Na排泄を促進 と言えるので、正しい文章となります
解説が長くなりましたが、重要知識については赤字やマーカー部分をチェックしてもらえればと思います!
MT69-PM 31 尿酸について誤っているのはどれか。
- 還元力がある。
- 基準範囲に性差がある。
- 尿塩酸は組織に沈着する。
- ヘモグロビンの最終代謝産物である。
- 血中の飽和溶解濃度は7mg/dL 程度である。
尿酸についての知識ですが、4が明らかに誤りです
尿酸は主にプリン塩基の代謝物です
1.尿酸には還元作用(=抗酸化作用)があります
2.男性のほうが高値で、痛風になりやすいです。ちなみに女性はエストロゲンの作用で尿酸の排泄が促進されやすいです
3.過剰な尿酸が結晶化して組織(特に指の関節など)に沈着し、激痛を引き起こすのが痛風です
5.高尿酸血症の基準は7mg/dLとされており、これは飽和溶解度が元になっています
MT69-PM 32 非抱合ビリルビンについて正しいのはどれか
- 腸肝循環する。
- 尿中に排泄される。
- ジアゾ試薬と直接反応する。
- 血中でアルブミンと結合する。
- グロブリンと結合しδビリルビンが生成される。
非抱合=間接ビリルビンについての最も基礎的といってもよい知識問題です
- 腸肝循環する。✕→直接ビリルビンが胆汁とともに分泌され、代謝されてウロビリノーゲンになり、ウロビリノーゲンがまた肝臓に戻っていくことを腸肝循環と言います。
- 尿中に排泄される。✕→尿中に出るのは、水に溶けやすい抱合型の方です
- ジアゾ試薬と直接反応する。✕→直接反応する(=水に溶けやすい)のは、抱合型ビリルビンです
- 血中でアルブミンと結合する。→正しい、間接ビリルビンは水に溶けにくいため血中ではアルブミンに運搬されます(ただし、下記の選択肢にある通り抱合型ビリルビンも体内に長期滞留するとアルブミンと結合しδビリルビンとなります)
- グロブリンと結合しδビリルビンが生成される。✕→δビリルビンはアルブミンと結合した直接ビリルビンのことです。
もし知らない知識があれば、以下の記事でビリルビンをしっかり学ぶことができるので御覧ください!
MT69-PM 33 酵素反応で過酸化水素を発生しないのはどれか。
- グルコースオキシダーゼ
- サルコシンオキシダーゼ
- アシルCoA オキシダーゼ
- グリセロールオキシダーゼ
- アスコルビン酸オキシダーゼ
これは難問です。各酵素の反応を知らなければ中々解けません、
正解から言うと5.アスコルビン酸オキシダーゼになります
アスコルビン酸は還元物質であるため、酸化還元反応を邪魔する干渉物質として検査に影響を与えます。アスコルビン酸オキシダーゼはアスコルビン酸を除去する場合に用いられることがあります。
一方で、選択肢にある他のオキシダーゼは過酸化水素を発生し、ペルオキシダーゼ(POD)と組み合わせて発色させるという原理で検査に用いられるものです。
MT69-PM 34 カルシウムについて正しいのはどれか。 2つ選べ。
- EDTA 加血漿では高値となる。
- 生理活性があるのはイオン型である。
- アシドーシスではイオン型の割合が増加する。
- 血清中ではトランスフェリンと結合している。
- 細胞内液に最も多く含まれる陽イオンである。
カルシウムの基礎知識的な問題です
正解は2,3になります
- EDTA 加血漿では高値となる。→当然ながらEDTAのキレート作用で除去されるので低値です
- 生理活性があるのはイオン型である。→血中カルシウムは主にイオン型とタンパク結合型がありますが、生理活性があるのはイオン型で、心臓や筋肉を動かす際の役割などを担っています
- アシドーシスではイオン型の割合が増加する。→正しい。
・アシドーシスではイオン型増加、タンパク型減少
・アルカローシスではイオン型減少、タンパク型が増加します
これはアルブミンの荷電が変化することによりますが、上記どちらかを覚えてしまうのが良いと思います - 血清中ではトランスフェリンと結合している。→アルブミンと結合(Caの40%がアルブミンと結合、50%はイオン型)
- 細胞内液に最も多く含まれる陽イオンである。→細胞内液に最も多いのはKです。Caは細胞外液に多いですが、細胞外に最も多い陽イオンはNaです。
MT69-PM 35 ポルフィリン環を含むのはどれか。 2つ選べ。
- ヘム
- ビタミンB12
- アラキドン酸
- クレアチニン
- ヒドロキシ酪酸
これは物質の構造の問題で、知らなければどうしようもないものです。
ポルフィリンはヘモグロビンの前駆物質ですから、まずは1.ヘムが正解となります
もう一つは、ビタミンB12になります。(厳密にはポルフィリン様構造と言われる事が多いようです)
ビタミンB12の別名は、シアノコバラミンです
MT69-PM 36 Michaelis-Menten の式に従う酵素反応で、反応速度がVmaxの75%となる基質濃度はKm 値の何倍か。
ただし、Vmax は最大反応速度、Km は Michaelis 定数とする。
- 0.5
- 1
- 2
- 3
- 5
この問題はMichaelis-Menten 式の計算問題で最も定番のパターンです
上記の式を覚えていることが大前提です
反応速度がv、基質がSです、最終的には基質濃度S=◯Kmという形に整理するのが目標です
そして、反応速度vがVmaxの75%という指示があるので、
v=0.75Vmax(75/100)を代入して、後は整理していきます
0.75Vmax=Vmax・S/Km+S
両辺にVmaxがあるので、Vmaxは消すことができます
0.75=S/Km+S
両辺に(Km+S)をかけると
0.75(Km+S)=S
0.75Km+0.75S=S
0.75Km=S-0.75S=0.25S
S=0.75/0.25 Km=3Km
答えは、SはKmの3倍ということで、選択肢4になります
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