医療系国家試験の解説サイト
国試かけこみ寺です!
令和2年2月19日(水)に実施された
の臨床検査技師国家試験問題について
一部の分野をわかりやすく解説していきます!
問題(+別冊)と解答は厚生労働省のHPで公開されています
※以下の問題の出典は全て、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-07.html)で公開している問題を引用しています。
問題に対する解説は国試かけこみ寺のオリジナルとなります。
MT66-AM79:血液型について正しいのはどれか。
1.ABO 血液型は 1950 年に発見された。
2.ABO 血液型抗原は蛋白抗原系である。
3.RhD 陰性の頻度は日本人では約 0.5%である。
4.Rh 血液型では Landsteiner の法則が成り立つ。
5.Rh 系抗原の中で E 抗原が最も強い免疫原性をもつ。
ABOとRh 血液型のシンプルな問題です
この2つの血液型は最もメジャーな知識なので
絶対に覚えるべきでしょう
ひとまずは選択肢を見ていきましょう
1.ABO 血液型は 1950 年に発見された。✕
ABO血液型の発見は1900年ですがこれは覚えなくてもよいでしょう
2.ABO 血液型抗原は蛋白抗原系である。✕
これは明らかに誤りです
ABO血液型を決定しているのは糖鎖です
ABOの違いは、糖鎖の末端についている糖の種類の違いです
A型:N-アセチルガラクトサミン
B型:ガラクトース
O型:なし
(AB型はA,B両方の糖をもつ)
これは最低限絶対に覚えるべき知識と言えます
3.RhD 陰性の頻度は日本人では約 0.5%である。○
これは正しいです(200人に1人ともいいます)
Rh血液型は、C, c, D, E, eという5つの抗原をいいます
いわゆるRh+はD抗原をもっている ことを意味します
Rh-はD抗原をもっていない 、この割合が日本人では約0.5%となります
4.Rh 血液型では Landsteiner の法則が成り立つ。✕
・Landsteiner の法則とは
A型の人は生まれつき抗B抗体を持っている
B型の人は生まれつき抗A抗体を持っている
という法則です
この生まれつき持っている抗体を自然抗体といいます
さて、ここではRhについてこれが成り立つかどうかということです
結論としては、成り立ちません
Rh-(D抗原を持たない)の人は
Rh+(D抗原)の血液を仮に輸血された場合
ここで初めて抗D抗体を作るのです
5.Rh 系抗原の中で E 抗原が最も強い免疫原性をもつ。
Rh抗原の中で最も強いのはD抗原ですね
単純にRh±というときは、D抗原の有無を意味します
MT66-AM80:RhD 陰性の妊産婦への抗D免疫グロブリンの投与時期として正しいのはどれか
1.妊娠.8週
2.妊娠 16 週
3.妊娠 24 週
4.妊娠 32 週
5.分娩後 72 時間以内
続けてRh関連の問題ですが、
Rh- のお母さんが Rh+の子を妊娠した場合
妊娠中は基本的に問題はありませんが
出産時(流産や中絶も含む)に赤ちゃんの赤血球が
母体に流入し、母親が抗D抗体を作ることになります
この抗D抗体が問題となるのは2回目の妊娠時です
2人目の赤ちゃんがRh+の場合、
母親の抗D抗体が赤ちゃんに流入し、
赤ちゃんの赤血球が溶血してしまいます
これを防ぐために、Rh- のお母さんが Rh+の子を出産した際
抗D免疫グロブリンを投与し、
赤ちゃんのRh+の血液から流入した
抗D抗原を打ち消す必要があるわけです
これによって確実ではありませんが高い確率で
お母さんの抗D抗体の産生を防ぐことができるのです
ということで
RhD 陰性の妊産婦への抗D免疫グロブリンの投与は
分娩後が正解となります
(近年は妊娠28週前後と、分娩後の2度の投与が推奨されています
※28週から検査や処置で胎児から母親への赤血球流入はありえるため)
MT66-AM81 血液型検査の結果を以下に示す。最も考えられるのはどれか。
1.A 亜型
2.キメラ
3.後天性 B
4.A 型新生児
5.汎血球凝集反応
オモテ試験は患者赤血球の抗原検査
ウラ試験は患者血漿の抗体検査
これが基本事項ですね
問題を見てみると、
オモテ試験ではA型
ウラ試験ではA, B抗体を持っていない
つまりAB型と判定されています
オモテ試験で抗A:4+ となっていることから
A型であることは間違いなさそうです
ということは
本来であれば抗B抗体を持っており
B血球を凝集するはずですが、結果は凝集なしです
このことから
1.A亜型
4.A型新生児
の可能性があげられます
1.A亜型の場合
Aの亜型とは赤血球抗原の
数が極端に少ない もしくは 形が少し異なる
このような場合で、具体的にはA1, A2, A3, Ax, Am などがあります
(Bの亜型もほぼ同じようなものと考えてOKです)
ポイントは抗原が通常と異なるため、
抗A血清との反応が本来と異なるということです
今回は、抗A血清で4+としっかり凝集していることから
A型赤血球の抗原には問題なさそうです
一方でウラの結果ですが、Aの亜型だったとしても
Bの抗体は自然抗体としてもっているはずですので
ウラ検査のB血球が0、というのは考えにくいです
つまり、亜型の可能性は低そう、となります
4.A型新生児
新生児の血液型で考えるポイントは2つ
- 血球の抗原が(亜型でなくとも)弱い場合がある
- 抗体を作る力が非常に弱い
このことから、オモテ検査で凝集が弱くなる
ということは普通にありえます(今回は違いますが)
抗体を作る力が弱い、というのはほとんどの新生児に起こりうることで
ウラ検査で反応するほどの抗体をもっておらず
今回のような結果になることは起こりえます
このことから今回の答えは4となります
ちなみに他の選択肢も解説すると
2.キメラ
血液型のキメラとはどういう状態かというと
体内の赤血球のうち、例えば
20%がO型赤血球、80%がA型赤血球
このように混ざった状態です(あくまで一例です)
これは双子などでまれに起こりうるようです
3.後天性B
これは特に骨髄移植で
移植された造血幹細胞がドナーの血液型の赤血球を作ることで起こり得ます
5.汎血球凝集反応
汎血球凝集とは細菌の酵素や血液疾患等により
通常は潜在化(隠れている)抗原が出現し凝集を起こすことです
今回のオモテウラ検査よりも
輸血における交差適合試験などで触れられる話となります
今回は血液型メインの話となりました
血液型の話は身近で
興味深く感じられることも多いのではないでしょうか
おもしろい!と思えたなら、勢いで教科書を読んだり
問題を解いてみたり、興味のあるうちに覚えてしまうと
勉強の効率もよくなりますよ!
今日はここまで。
見て頂きありがとうございます!
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